『ROCKIN'ON JAPAN』がお届けする最新邦楽プレイリストはこちら
ディスコにブギーにテクノポップに歌謡曲にとジャンルの越境が基本姿勢となったごった煮サウンド。未だ尽きぬスケベ心やロックンロールへの憧憬をちりばめたかと思えば、気候変動や無秩序な都市開発へのさりげなくも冴えわたった視座を忍ばせる、今日の桑田佳祐にこそ綴り得た多角的で瑞々しいリリック。まさしくサザンオールスターズど真ん中のアルバムだ。ただ、たとえば後に活動休止へと繋がった2005年の『キラーストリート』が自らの音楽性を総括すべく力の入りまくった作品であったのに対し、本作からは一貫してリラックスした印象を受ける。だからこそ、それでいて徹頭徹尾ウェルメイドかつ1曲の例外なくポップであることが、殊更に凄まじく感じられるのだ。もはやあるがままの姿を落とし込めば、それがこの国のポップの正解の形となってしまう境地。そして、そんな在り様を誇示するより、長年を寄り添いそこへ導いた聴き手への感謝を題する心持ち。サザンだけが到達し得た大衆音楽の答えが、本作には詰まっている。(長瀬昇)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年5月号より)
『ROCKIN'ON JAPAN』5月号のご購入はこちら
*書店にてお取り寄せいただくことも可能です。
ネット書店に在庫がない場合は、お近くの書店までお問い合わせください。