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「◯(マル)」は美しく、完璧と完成のイメージを私たちにもたらす。たとえば、永遠を誓って捧げられた指輪。陰と陽が絶対的な均衡を保っている陰陽玉。無限の循環を象徴するウロボロスの輪。自然と生命の円環。空に輝いている太陽と満月。子どもの頃、必死になって解いたテスト用紙に、先生が赤いマーカーで記してくれた「正解」の印。あらゆる可能性を記入し得る空白としての「◯」……。「◯」は美しい。しかし、それ故に手に入れるのが難しいものでもある。いざ紙とペンを渡されて「その手で完璧な◯を描け」と言われたとしても、それが不可能に思えるように。僕たちはバラバラになった。僕たちは僕たちが本来持っていた「◯」を、いろいろな形に切り取らなければ生きていけなかった。それでも、ねぐせ。は歌う。《この◯い世界に用がある》と。この世界はなかなか居心地よくはならないが、だからこそ君と音楽とロックバンドが必要なのだと。リアルと理想が乱反射する完璧な約2分30秒。大名曲。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年6月号より)
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