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人は軽々しく呪いをかける。他人のみならず、自分にも。呪われていると自覚した人は、多くの場合なんとしても祓おうとするだろう。呪いをなかったものにするために。でもanoは、過去の苦しみも間違いも「なかったもの」になんてしてやんない。傷や痛みを全部引き連れて、さらに強力な呪いで上書きする。そして「だいじょばない自分じゃないとダメ」というまぼろしすらといてしまう。人生に降りかかるすべてを引き受ける生き様のなんと誠実なことか。日本武道館ワンマンのタイトル「呪いをかけて、まぼろしをといて。」をテーマに作られた“ミッドナイト全部大丈夫”を聴いていると、そう思わずにいられない。どんなときでも自分に嘘をつかず、絶対的な存在であり続けた彼女だからこそ届けられる、信じるに値する《大丈夫》がある。さらに“KILL LOVE”では《KILL KILL LOVE me baby》と叫び、「破壊も愛もanoだ」と鮮明に刻むのだ。たとえ日常が移ろっていっても、彼女の音楽だけは絶対聖域であり続けてくれると信じられる。(坂井彩花)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年11月号より)
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