掴み取った二度目の勝利

ロストプロフェッツ『ザ・ビトレイド ~裏切られし者たち』
2010年01月13日発売
ALBUM
前作『リベレイション・トランスミッション』は確かにロスプロ史上最もポップに寄ったアルバムで、ラウド&パンクとして彼らを聴いていた人にとっては違和感を感じる一枚だったかもしれない。しかしもともと彼らのルーツはデュラン・デュランやポリスだったりするわけで、ポップであることはこのバンドの遺伝子レベルに組み込まれた必須の一要素である。彼らの一側面を極めたという意味で前作は筋の通った作品であり、対する本作はそんな前作でもって評価も人気も安定した踊り場に来た彼らが再びブレイクスルーを目指す転機の一枚だ。高名なプロデューサーに支払った高額なギャランティをどぶに捨てる覚悟でアルバムを一枚おしゃかにした後、挫折とリスクをバネとして再び奮起した、第二章の幕開けのアルバムである。

渾身の力で叩きつけるドラム・イントロで幕開けるM1からM3の流れは、本作誕生前夜の苦闘と苦悩を活写したダーク&ヘヴィな序章だ。その陰影が正直に刻まれているからこそ、続くM4“ウェア・ウィー・ビロング”が飛翔のカタルシスとして滅茶苦茶効いてくるのだ。インターミッションのM6を挟んだ後半戦は「もう怖いものは何もない」という彼らのこれまた正直な気持ちが直反映された圧巻の展開で、ポップ、ラウド、メタルが入り乱れるロスプロの「全て」が爆発している。ラストは20分近い超大作。最終曲のタイトルを超意訳するなら「二倍の輝き」といった感じか。ハイリスク・ハイリターンで勝利した彼らの充実を伝えるエンディングだと思う。(粉川しの)