この10年の音楽産業は、正直デジタルの持つ大きな力とどう向き合うかという格闘の10年だった。それは商業的な面ももちろんだが、こと音楽的な面やシーンの側面から見てもそんな印象がある。グーグルで検索をかけると、すぐさま検索結果が表示されるように、様々なキーワードが現れては、消費され、消えていった。その非常にスピードの速い、便利なネットワークを前にして、ミュージシャン自身も困惑していたところがある。だから、レディオヘッドは音源の価格をあなたに委ねたし、海賊ダウンロードを巡ってはミュージシャン同士が対立するような状況になってしまった。けれど、このマンチェスターの3人の若者は、伝統的な反骨精神と直感を頼りに、口にしてみせるのだ。そんなに大騒ぎするほどのことでもないだろ、と。
90年代の「テクノ」を彷彿とさせる彼らのスタイルは目新しいものではない。けれど、そうした文法をすべて自らの情念を表出させるために注ぎ込んでいる。どの曲も魅力的な旋律を持つのはだからだろう。半導体経由の人間回帰。テクノロジーは変わっても人の求めるものは変わらない。そう告げている。(古川琢也)