職人のアート・ピース

ザ・レディオ・デパートメント『クリンギング・トゥ・ア・スキーム』
2010年03月31日発売
ALBUM
独立独歩だなあ、としみじみ思う。もちろんポジティブな意味だ。いかにもスウェディッシュなのが “ヘヴンズ・オン・ファイア”。ロックンロール・バンドの搾取、ユース・カルチャーの利用、資本主義に毒舌を吐くサーストン・ムーアのナレーションをサンプルしたイントロは、まるで、実在しない“ニューゲイザー”シーン及び00sの担い手として持ち上げられたことへの自虐ユーモアのように聴こえる。そして、もはやレディオ・デパートメントとしか言いようのないあの声、あのメロディ、あのピアノの音が現れる瞬間に、流れる時はぴたりと止まってしまうのだ。

以前に比べると少し、楽曲によって傾向が分かれるつくりになっている。ダブ、ギタポ、ポスト・パンク、ヒップホップ、テクノetc、サウンドタイプを挙げることも可能ではある。しかし、そんなフレームにわざわざ当てはめて語るのは無意味だし、レディオ・デパートメントとしての強力さが、そうすることを不可能にするのだ。そう、これまで同様、「シューゲイザー」という言葉が彼らのことを説明しなかったように。電子音がゆっくり息をして、あたたかなまどろみへ連れて行く。(羽鳥麻美)