しかしソロになり、震災後の自室で独りこの10曲を書き上げた坂本には、どうやらゆら帝時代とは違う一面が生まれてきているらしい。個を尊重し、人は突き詰めると空っぽだと歌った男が、相変わらず《幽霊の 気分で》ぼんやりしながらも、《自分の心が 自分でもわからない/他人の心が他人と思えない》と境界に混乱するほど他者に共感し、さらにリアルを感じないはずだった “かすかな希望”を求める。震災を機に幻世界を離れ、現実と対峙した彼の人間らしい変化だ。
「このバンドではもうやれることがないから解散する」、確かに、これは独りだからこそできた作品だ。自室で作られた曲たちがライヴで他者と共有された時、また訪れるであろう新たな変化が楽しみ。ジャケの彼を見て、ステージに立つ姿を妄想せずにはいられない。(藤田華子)