正面を向いたジャックの歌

ジャック・ジョンソン『フロム・ヒア・トゥ・ナウ・トゥ・ユー』
2013年09月18日発売
ALBUM
前作からは3年強というインターヴァルで、彼のキャリアの中では最長の期間となる。これに次ぐものとなると3作目から4作目の3年弱だが、この期間中にはサントラ作品のリリースがあった。今作はかなり慎重に念入りに、制作されたはずだ。まず気が付くのは、4作目、5作目で推し進められたエレクトリック路線が後退し、1作目、2作目の素朴なアコースティック・サウンドに回帰していること。その点では懐かしい手応えがある。エレクトリック路線の頃にはバンドのアレンジやグルーヴを追求しているところもあったが、今回はとにかくメロディのフックが粒揃いで、その点ではキャリアの最高レヴェルに達している。

ジャック作品のテーマは概ね一貫していて、それは自然への畏怖と敬意であり、その裏返しとしての人生の喜びであり、儚さである。今回はそれを、磨き上げたメロディで、届けるべき対象を真っすぐに見据えながら瑞々しく歌う。皿洗いの仕事のブルースを歌い、ウクレレを奏でてバンドマンの憂いをコミカルに歌い、携帯端末への依存を皮肉って歌う。最高だ。次回来日の機会には、屋外ライヴを強く熱望。 (小池宏和)