waterweed、逆境を乗り越え手に入れた強さと充実の日々。今だからこそできた渾身のアルバム『Diffuse』、その全てを訊いた!


3人の期間はレコーディングもライブもしんどくて、自分たちの求めているものができなくて、だから余計に今がめちゃめちゃいいです。精神的にも強くなりました(Ohga)


――今回のアルバムは『Diffuse』=拡散するという意味のタイトルじゃないですか。そんなタイミングで取材できることを嬉しく思うんですが、このタイトルを付けた意図を教えていただけますか?

Tomohiro Ohga(B・Vo) 今までも拡散するつもりではいたんですけど(笑)、タイトルを考えている時に、自分の中でいろんな案が出て、どれがいいかな?っていうこともメンバーと共有していて。でも、なかなかしっくりこないっていうことで、全然関係ない人に相談したら、ポンってこの単語を出されて、めちゃめちゃしっくりきて、付けました。

――メンバー以外の方からのアイディアだったんですね! 確かに『Brightest』からは、バンドにとって「拡散」の時期でした。ただ、『Brightest』は、キャリア初の3ピースとしてリリースされたじゃないですか。逆境とも思える状況を乗り越えて、こうした流れをつかんだことも素晴らしいですよね。

Ohga めちゃめちゃ逆境でしたよ。突然前のギターがいなくなったんで。まずは決まっているライブを3人でどうやるかっていうところで、ひたすら練習してアレンジして。そのすぐ後に『Landscapes』をリリースすることが決まっていたので、3人でやるのか、サポート入れるのか、いったん止めるのか、いろいろメンバーで話していて……個人的にはこれを越えたらタフになれるかなって思ってたし、止めたくなかったので、これはこれで面白そうだなって、無理矢理3人でやっていきましたね。3人の期間はレコーディングもライブもしんどくて、自分たちの求めているものができなくて、だから余計に今がめちゃめちゃいいです。精神的にも強くなりました。

――なるほど。歴史を振り返ると、その時期以外も、メンバーチェンジや休止など、いろいろな試練を乗り越えてきたバンドじゃないですか。周りのバンドが解散や休止をする様子も見てきたと思うんです。そんな中で、waterweedを支えてきた信念、続けてきた理由ってどんなものなんでしょうか。

Ohga 最初からやっているのは僕だけで、いっぱいメンバー……サッカーチーム作れるくらい抜けたんですけど。この(Shigeo)Matsubara(Dr)と、今日来ていない(Hiroshi)Sakamoto(G・Cho)は2009年から一緒にやっていて。こいつ(Ono)は今年入ったんですけど、ずっと前から知っていますし。以前は考え方もやりたいことも全然違って、メンバーが抜けることもたいしたことじゃなかったんです。一回活動が止まった時があったんですけど、その時は意地しかなくって。僕一人になって、ここで辞めるのはカッコ悪いから、とにかくこのバンドを続けることだけを考えて。今は、そういう意地はないんですけど。楽しいからやってるだけで(笑)、生きがいみたいなものです。バンドを長く、みんながいい状況で続けていくのが一番大事っていうか。そんな無理してやることでもないし。そのために頑張らなあかんところは頑張るし、楽しむところは楽しむし、でも、自分たちが一番カッコいいっていう気持ちはもちろんあってっていう。どうですか?

Matsubara 大丈夫でしょう(笑)!

――OK出ました(笑)。Matsubaraさんは、今バンドを楽しめている感覚はありますか?

Matsubara そうですね。楽しいのが一番で。あとは、周りの人……協力してくれる人たちともいい関係になれるように。僕らが頑張れば状況も変わると思うし、仲のいい外国のバンドも呼べると思うし、そういうものも目的になってきました。今回ヨーロッパとか行ったので、もっと周りに返せるようになりたい気持ちもありますね。

waterweedみたいにいっぱいツアーをまわる生活に昔から憧れていて、人生の中でやってみたいという気持ちがあった(Ono)


――素晴らしいですね。では、やっとOnoさんの登場です(笑)。今年、加入した経緯を教えていただけますか?

Ohga まず3人になったタイミングで、誰か入れたいとは思ったんです。ただ、新しく若いギターを入れるのも違うなと思って……昔からShotaroは知っていたんで、バンドにいたらいいのになっていう話はしていて。その時Shotaroは東京にいて別のバンドもしていたから、現実的な話ではなかったんですけど。そこから3人で2年間頑張って、これからもやっていくだろうと思っていたんですけど、(Onoが)まず仕事で大阪に来たんですね。そこでうちのスタジオにしょっちゅう遊びに来るようになって、気が付いたらギターも持っていたっていう(笑)。ただ、Shotaroはちゃんとした仕事をしていたので、俺たちは海外に2週間行くようなバンドだから、今の仕事だとできないよって言ったら(仕事を)辞めてきちゃったんで、じゃあ、やりますか?っていう流れです。

Ono もともと好きなバンドだったんで。個人的には、waterweedみたいにいっぱいツアーをまわる生活に昔から憧れていて、人生の中でやってみたいという気持ちがあって、入らせていただきました。

――waterweedのどういうところが好きだったんでしょうか。

Ono 本人たちを目の前にして言うのも恥ずかしい(笑)。そもそも、初期からのメンバーはOhgaさんしかいませんけど、僕は初期の音源、もっと言うとデモ音源から好きで。Ohgaさんとひとつしか年齢は変わらないんですけど、すごい人って思っているから、今でも「Ohgaさん」なんです。昔から不器用で泥臭くて、でもまっすぐで。ライブもそうですし。男から見ててカッコいいんですよね。他の二人も……waterweedは、みんな真面目なんですよ。だから、機材車でも真面目な話をするのかな?って思っていたら、全然そんなことなくて。Matsubaraくんはすぐにラーメン屋の情報を調べ出して、そこに向かっているのに、途中で「ここのほうがいいかも!」って他のラーメン屋を見つけたり(笑)。なのでストイックすぎることなく、かわいらしいって言ったら変ですけど(笑)。

Ohga 曲作りと練習とライブに関しては真面目にやっていて、それ以外は、ね、みんな仲良くやれたらいいなって(笑)。

――だからこそ楽しくやれているわけですもんね。いよいよ新作『Diffuse』の話を伺いたいんですが、曲作りは3人の時からはじめていたんですか?

Ohga 3人の時からちょっとずつはじめてはいたんです。ヨーロッパから帰ってきてから。でも、そのタイミングでこの人(Ono)が入るか入らないかみたいな感じになったので、ツインギターになるし、一旦バラして一から作ろうかと。で、そっから3ヶ月くらいで作っていった感じですね。

――曲作りの方法そのものも変化したということですか?

Ohga でも、もともとは4人編成だったので。3人になってシンプルにしたり音を変えたりしていたんですけど、そこに(Onoが)入ってきたので、わりとすんなり、これこれっていう感じで。

――今作のテーマとか方針って、事前にありましたか?

Matsubara 1曲目から2曲目の流れとか、細かいところにはなりますけど、そういうのはありました。

Ohga 僕が曲を作るんですけど、ざっくりドラムやギターも作るんですね。それをいい環境で録ってみんなに聴いてもらって、その時に顔色を窺いながら、これはいけるっぽいな? これはダメっぽいな? みたいに感じて。じゃあ、この曲を作りましょうってなると、(Matsubaraが)「1曲目どないすんの?」「リードトラックはどれなんですか?」みたいに言ってきて(笑)。アルバムのバランスを考えてくれるっていう。

Matsubara (笑)。ドラムなので、速いビートの曲ばかり続くと、ここらでちょっと落とした曲がいるんじゃないですかOhgaはん?みたいな感じでは言いますね。あと、今回の1曲目、2曲目は、ライブの最初に使える感じで入れたかったっていう。

Ohga 僕ら、音源の曲順はライブも想定しているので。ライブのセットリストを組む感じです。


難しいことをカッコつけて言うのはやめようって。自分のわかる言葉で、自分のわかる単語で、背伸びせずにやるのが一番自分らしいと思ったんです(Ohga)


――出だしはライブでもすぐに火を点けられそうですよね。また、2曲目の“Music is Music”は、《長い間、深くまで潜っていた》(和訳)という歌詞もありますが、今作の歌詞は総じてとても素直ですよね。

Ohga 難しいことをカッコつけて言うのはやめようって。自分のわかる言葉で、自分のわかる単語で、背伸びせずにやるのが一番自分らしいと思ったんです。それよりも英語にした時の言葉のニュアンスや、メロディののせ方を優先しました。ケツで韻を踏んだり。

――言葉がわかりやすいから、1曲1曲のテーマもわかりやすくて。“Dreaming dead”は今まで出会った……バンド仲間も含めて、そういう人たちに向けた曲なんじゃないですか?

Ohga そうですね。バンドを辞めていったり、ライブハウスがなくなったり、関わってくれていた人たちがどうしようもない事情で辞めなきゃいけなかったりっていうことが、15年の間でさんざんあったので。仕方ないことではあるんですけど、時間がたったから仕方ないやんって言うのは寂しいし、俺たちがもっといいバンドになって、世間からも評価されるようになれば、そういうバンドをフックアップできるし、関係者も楽にできるし。みんなが描いていた夢を、僕たちが繋いであげられたらなあっていう。その一心ですね。それができるのは俺たちしかいないっていうことばっかり考えてやっています。

――そういう気持ちがあるバンドだからこそ、waterweedの楽曲は熱いんでしょうね。あと、個人的な今作の一押しが……。

Ohga あ、僕の一押しもあって。

――それ、聞かせてくださいよ!

Ohga “Too late”です。僕の中で完璧な、最高にいい曲です。

――11曲目ですし、クライマックスに向けて上げていく重要な曲ですよね。また私の一押しは違うんですけど(笑)、“Counterfeit”です。

Ohga それはレコーディングがはじまってから、Matsubaraに「こういう曲が足りないんじゃないでっか?」って言われて作ったです。

Matsubara いいと聞いたのでMV録りたいです(笑)!

サウンド的なものはどうでもよくて(笑)。ただ、わかりやすく言うと、ハードコアのマインドを持ってメロディックなことをやっているっていう(Ohga)


――期待しています(笑)。オールドスクールなメロディック・ハードコアのファンもグッとくる曲だと思います。そして、ラストの“Grateful song”は、ミドルテンポの曲調も深い歌詞も、特別な思いがこもっている気がしたんですが。

Ohga はい……あります。あの、親父の曲なんです。ずっと体調が悪くて、なるべく一緒に過ごしていて、昔の話も思い出していたんですけど、ちょうど亡くなったんです。MVも撮ったんですけど、通夜から帰ってきたら仕上がったものが送られてきて、何とも言えない感じで。でも、僕はずっと覚悟していたので大丈夫なんですけど、インタビューでどう答えたらいいんだろう、難しいな(苦笑)。

――そうなんですね。でも……今、曲というかたちになって、よかったんだと思います。

Ohga そうですね。MVにしたいってレーベルにも言われて、あの曲がいいとも言ってもらえているんで、よかったなって。

――この曲でも顕著なんですけど、美しさと激しさ、強さと儚さが共存しているイメージがwaterweedの曲にはあって。そういう自覚ってありますか?

Ohga んー、難しいですね(笑)。こういう曲を作ろうという打ち合わせもしないし、これがカッコいいっていうものを作って、この4人で鳴らせばwaterweedになるなっていうのがわかったので、そのへんは考えずに。

――こうじゃなきゃwaterweedじゃないというところに縛られずに、この4人でやればwaterweedになるっていう。

Ohga はい。“Grateful song”も、今までクリーンの声でミドルテンポで、そこまでキーが高くない曲って作ったことなかったんですけど、結構いろんな人に、落ち着いた曲も聴いてみたいって言われていたので、それで作ってみたら、案外すんなりできて、それが評価されているので、また新たな自分たちらしい部分も見られたと思いました。

――メロディック・ハードコアというジャンルについては、どう思いますか?

Ohga サウンド的なものはどうでもよくて(笑)。ただ、わかりやすく言うと、ハードコアのマインドを持ってメロディックなことをやっているっていう。さんざん今までやってきて、ただ別に俺たちが売れたらいいやとは思わないし、もっとデカい規模で、日本とか、海外とかで、こういう音楽が盛り上がればいいと思う。そういうことはハードコアの先輩から学んだし、でも、俺たちらしい音楽はメロディックなものだったりする。そういう意味で、メロディック・ハードコアが一番正しいのかなって思います。

――多様化しているメロディック・ハードコアの中で一本筋を通しているバンドだと思うので、これからも期待しています。では最後にOnoさん、これからのwaterweedについて、これから自分がwaterweedでやりたいことについて、語っていただけますか?

Ono せっかく3人でやっているところに「やりたい!」って入ったし、今まで関わった人たちに恩も返したいし、Ohgaさんが言ったように、4人でやったらwaterweedで、マインドはハードコアで、音楽はメロディックっていう部分も含めて、一生懸命頑張りたいっていうのと(笑)。waterweedは今まで日本全国、海外も行っていますけど、自分は今回(リリース)ツアーをまわる中で、「waterweedに入りました、よろしくお願いします」って行くんじゃなく、4人のwaterweedということで、怖気づくことなく行きたいと思います。


“Music is Music”

“Grateful song”

リリース情報

NEWアルバム『Diffuse』発売中

CTCM-65123 2,700円 (税込)
<収録曲>
1. Reflection
2. Music is Music
3. Endless trip
4. Dreaming dead
5. The last goodbye
6. Day after day
7. For you, For me, and For us
8. Counterfeit
9. In my veins
10. Your story is end
11. Too late
12. Face the reality
13. Grateful song

ライブ情報

RELEASE TOUR『waterweed “Diffuse” Release Show』
6月20日(木) 大阪・新神楽
開場18:30/開演 19:00
出演:waterweed/LEXT/HAIR MONEY KIDS/裸体

6月21日(金) 名古屋・HUCK FINN
開場18:30/開演 19:00
出演:waterweed/LEXT/DRADNATS/ONIONRING

6月23日(日) 初台・WALL
開場 18:00/開演 18:30
出演:waterweed/LEXT/ENDZWECK/MEXICAN AGE

提供:エイベックス・エンタテインメント 株式会社
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部