インタビュー=ヤコウリュウジ
──再始動後、新曲のリリースにしろ、ライブにしろ、とにかく駆け抜けてきた印象があります。めちゃくちゃライブもしてましたよね。タイトル通り、嘘がなくて、今まで積み重ねてきたモノが詰まってるフルアルバムだなと思うし。これから先、こうなっていきたいと示唆するようなモノも入ってますね
そうですね。月に少なくて10本ぐらいで、昨年の後半はツアーも回ってたから100本ぐらいはやってたと思います。ただ、その1本1本が本当に違って。向き合ってる課題が少しわかって馴染んできたなと思ったらまた違う角度から、それ?みたいなのがやってきたり。同じ日は一瞬もなかったな、って。
──新曲も増えて、スキルも身につけていって、RPGゲームでステージをクリアしていくような。
ホントにそうで。1面でボスを倒したと思ったら、2面は水の中!?みたいな(笑)。
──グループ時代から引き継いだ“Catch my life”や“FUCK FOREVER”といった代表曲も新たな息吹が吹き込まれていく感覚があったのかな、と。
引き継いだ曲が変わっていくというより、新しい特別なモノをまた作ってるみたいな感覚があって。大事なモノをJamie(※ファンの総称)とチームで一緒に作ってますね。
──そして、フルアルバム『THIS is NONFICTION』が完成しました。「TOKYO RELEASE TOUR "THIS is NONFICTION"」と銘打った昨年末のツアー最終日の終演後、ゲリラリリースされましたね。リリースしてないのにリリースツアーだったので、結局どうなるのかな、と思ってたんですよ(笑)。
あくびも同じ気持ちでした(笑)。でも、チーム全員がこだわり抜いて、(曲によっては)サブスクとCDで音が違ったりとか。
──完成した今、手応えはどう感じていますか?
タイトル通り、嘘がなくて、今まで積み重ねてきたモノが詰まってるフルアルバムだなと思うし。これから先、こうなっていきたいと示唆するようなモノも入ってますね。
──内容としては、新体制として発表してきた曲、グループ時代から引き継いで鳴らしている代表曲に加え、書き下ろされた新曲も収録。おっしゃったようにこれまでと今とこれからが詰まってます。数々のライブを経て、印象が変わった曲はありますか?潰れたペンやノートに書き殴ったモノを見て、そのときのモヤモヤした気持ちを思い出したりもするけど、ふと潰れたペン先を見て、それが自分の武器や強さになったりするのかな、って
それで言うと“愛があふれて殺したいくらいだ”は以前やっていた頃だとザ・歌モノみたいな感覚があって、聴かせる色が強かったんです。でも、今は進化してライブ感というか、Jamieとフロアに向けてより語りかけるような距離感で歌えるような曲になっている印象があります。
──フルアルバムに目を向けると、1曲目の“FXXK YOU VERY MUCH”はいわゆるアンチさえも巻き込んでもっと進むというメッセージがあり、軽快に蹴飛ばすようなニュアンスも含め、MAD JAMIEらしい幕開けだなと思いました。
嬉しいです。ちょっと嫌なことがあっても「こんにちは、MAD JAMIEです!」って気にせず握手しにいく、みたいな。
──勝手な印象かもしれませんが、あくびさんってお話ししてると無視すればいいようなこともちゃんと受け止めて考え込むようなタイプかなと思ってて。
あぁ、ありますね(笑)。
──そういう意味では、こういう強い自分でありたい、という気持ちもあるのかな、と。
言っていただいた通り、見逃したくないという気持ちもあってそうしてる部分もあるんですけど……もったいないというか、それすらも大事にしたいし。ただ、そうすると余計なことを受け止めることもあるから、“FXXK YOU VERY MUCH”はそういう自分にもなれのかな、って気持ちで歌ってる部分はありますね。
──今回、新たな魅力が引き出されてる曲が多いなとも感じてまして。適度に重みのあるポップチューン“Blue Orange”、ミドルテンポで切ない願いを歌い上げる“baby star”とあくびさんの歌心が前に出てますよね。
自分の中でも新しいというか、これまで向き合ってきたモノとはまた違うアプローチを考えて歌った曲になってて。切ないとか繊細な気持ちを心の中から出すのは好きなことではあるので違和感みたいなのはないんですけど、いつもとは引っ張る場所が違うからレコーディングや初めてライブでやるときは戸惑いみたいなのもあったり。無意識に強く出しちゃう、みたいな。
──スイッチを入れすぎてしまうような。
自分の満足感だけじゃなくて、(気持ちを)歌に乗せて届けるまでが大切にしたいことだから、やっていくうちに学んでいった部分もあって。どうやったら相手に伝わるんだろう、ってすごく考えながら歌ってますね。
──“Blue Orange”の《潰れたペンだって 気づけば/誰にも負けない理由になった》というフレーズ、すごくいいですよね。
そういう経験ってあるし、潰れたペンやノートに書き殴ったモノを見て、そのときのモヤモヤした気持ちを思い出したりもするけど、ふと潰れたペン先を見て、それが自分の武器や強さになったりするのかな、って。
──ニルヴァーナを連想させるフレーズもあるのが“baby star”です。満たされて何か作ったりするモノに影響が出るほうが怖いから、幸せなんかにならないほうがいいんだろうな、とか考えることもあって
スターになりたい、って言ってるあくびの気持ちを汲み取ってもらってて。なかなかうまくいかないなって思うときもあるけど、それを空から見守ってくれてるような感じもあって。特にサビとかは、今日も落ち込んでるの?って。
──あぁ、見守ってくれてるような。
あと、もうすでに輝いてるんだよ、ってことがわからなくなるときもいっぱいあるんですけど、それに気づけたらいいなと思いながら歌ってますね。
──目指す先へ突き進んでる途中だとしても、実は自分自身もすでにそういう憧れられる存在になっていたりもするんですよね。
ホントにそうだったらいいなという気持ちもあるし。わかんなくなってるとき、ふとJamieの些細な言葉で気づいたり、大丈夫なんだって思えたり。間違ってなかったなって感じるときがいっぱいあるから、そういうことを歌に乗せて、みんなのパワーになったらいいな、って。
──終盤の《ツライよな 痛いよな/この手をつかんでよ》は気持ちを全開放して歌ってますね。
ホントにそこにすべてを込めるつもりで全部を溢れさせて歌ってます。
──そういった歌の部分がよりフォーカスされているのがバラードの“幸せになるほど僕は不安になっていく”です。チャレンジ的な意味合いもあったのかなと想像しました。
壮大な世界観のバラードは今まで歌ったことがなくて。レコーディングのときも、ライブで初めて歌うときも、落とし込むことに苦戦しました。伝えたいことは自分と重ね合わせられたんですけど、それを曲の世界観とリンクさせるのが難しくて。
──MAD JAMIEって勝ち気なところがあるじゃないですか。
気合い入ってます(笑)。
──でも、“幸せになるほど僕は不安になっていく”というタイトルはそういうこともあるだろうなと思いつつ、胸が締めつけられる切ない言葉だったりしますよね。これはあくびさんご自身も頷けることですか?
曲を作ってもらう前に話したことはなかったんですけど、あくびの中にもある気持ちのひとつなんです。常に心のどこかに、自分って幸せになっていいのかな、っていうのがずっとあって。あくびはずっと満足したことがなくて、そうだからこそ生まれるモノ、出せるモノがあると思ってるから、満たされて何か作ったりするモノに影響が出るほうが怖いから、幸せなんかにならないほうがいいんだろうな、とか考えることもあって。そういう意図の曲なのかはわからないんですけど、自分としてはそこと重ねてますね。
──“baby star”のときの話でも少し感じたんですけど、周囲の印象以上にあくびさんって自己肯定感が低いタイプなんですかね?
でも、そうなのかもしれない。周りからどう見えてるのかわからないんですけど。
──ステージ上ではキラキラしてて、私を見て、みたいな感じですけど、普段はそうじゃないというか。
自信があるタイプではない、と自分では思ってて。ただ、こういう活動を始めて、自信っていうのは自分を信じる力なんだよ、って教えてもらったんですよ。だから、それで言うとすごく自分を信じてはいるんですけど、できるかわからないし、みたいな弱い自分もいて、ずっと戦ってるみたいな。
──また、CDを手に取ってくれた人だけのお楽しみもありますよね。駆け抜けてきた日々の中で、やるぞっていう気持ちはあるけど実際にどうなるか、不安もいっぱいだったんですけど、今のMAD JAMIEの最高を作っていけた実感があります
結構、サブスクで誰でも簡単に聴けるようになって、それはいいことだし、助けられてる部分もいっぱいあるんですけど、実際にCDとして手に入れた人だけが受け取れるモノは入れたいと思ってたんですよね。
──そして、MAD JAMIEが次なる目標として掲げたのが10月に開催するZepp Shinjukuでのワンマン。ライブに関して、今のMAD JAMIEとして形作れてきたんじゃないかなと思います。
駆け抜けてきた日々の中で、やるぞっていう気持ちはあるけど実際にどうなるか、不安もいっぱいだったんですけど、今のMAD JAMIEの最高を作っていけた実感があります。それはきっと、勝手にだけどJamieのみんなもそう思ってくれてるんだろうな、と。その場その場で(エネルギーを)受け取って、それを自然に出せてるし。
──昨年はスウェーデンで開催された「NärCon Sommar 2023」でライブもされてました。
海外に行くこと自体も初めてだったんですけど、ライブでは「KAWAII IS FXXK」って言おうと決めてて。もし怒られたら謝ろうね、みたいなところもあったんですけど(笑)。
──FXXKはきれいな言葉ではないですからね(笑)。
でも、自信満々に言ってみたら、みんな楽しそうに一緒にやってくれて。これは世界共通だ、と(笑)。何か掴めた感じがあったかもしれないです。聴いてくれてる人がいるのはネットの中で見えてたりしたけど、飛行機で16時間とか離れた場所だし、それはすごく驚きというか、感動して。届いてるのがわかって嬉しかったです。
──ライブ自体がエネルギーをもらえる場所というお話もありましたけど、リフレッシュってどうされてますか?
何をしてるかな……でも、ホントにあくびはラジオがすごく好きで。ラジオを聴くことでリフレッシュされてるのかもしれないです。
──よく聴かれてるというオードリーは東京ドームのステージに立ちましたね。
そうなんですよ。そこも背中を追っていきたいし。
──リフレッシュといえばお風呂とかサウナを挙げる人もいますけど。
あくびはお風呂に長く入れなくて。入った瞬間の熱々のときは好きなんですけど、一瞬だけ幸せで、あとはすぐに出たい、っていう(笑)。何をしてるんだろう、いつも?
──たぶん、ライブをしてるんだろうなとは思います(笑)。
ホントにそう(笑)。それが生きがいなんですよね。
──フルアルバムも完成した今、いろんなお楽しみを仕掛けながらZepp Shinjukuへ向かっていくんでしょうね。
きっと、Zepp Shinjukuまであっという間だと思うんですけど、その当時、その場にいるJamie、チームやステージ上のみんな、いろんな関係各所の方々、すべての人が心の底から最高だ、FXXKって言えるような1日にしたいし。全身全霊でそこへ向かっていきます。
●リリース情報
『THIS is NONFICTION 』
Label : LED GROUND
品番:LEDG-00001
価格:3,000円
●ライブ情報
「All you need is Fxxk!!!」
日時:2024年10月7日(月)場所:Zepp Shinjuku
開場:17時30分 開演:18時30分
前売り ¥1,000- (1D) / 当日 ¥2,000- (1D)
提供:LOHIVE inc.
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部