【インタビュー】原点にして混沌。-真天地開闢集団-ジグザグがEP『Gran ∞ Grace』に詰め込んだ「らしさ」をひもとく

昨年、4th アルバム『慈愚挫愚 四 -最高-』を完成させ、初の全国ホールツアーを敢行した-真天地開闢集団-ジグザグ。そして2024年、「最高」のその先を見た彼らが、ニューEP『Gran ∞ Grace』を作り上げた。ヘヴィさも、ポップさも、壮大さも、プレイヤビリティも全方位にパワーアップ。ひと言では到底言い表せないけれど、3人口を揃えて「ジグザグらしい」という1枚はどのように生まれたのか。昨年を振り返りながらじっくり語ってもらった。
2024年10月30日発売の『ROCKIN’ON JAPAN』12月号には、このインタビューの完全版を掲載。3人の和気藹々としたムードがより伝わるインタビューになっているので、そちらもぜひ読んでほしい。

インタビュー=後藤寛子 撮影=アミタマリ


『最高』であれだけはっちゃけておいて良かった(命)

──改めて、『最高』というアルバムと初ホールツアーの手応えは、今どういうふうに残っていますか?

命(唄) 『最高』という言葉を引っさげて、まさに最高なツアーが始まって、ほんとに最高だったんですよ。ただ、途中から僕の喉の雲行きが怪しくなってきて、ファイナルの東京ガーデンシアターは喉としては最悪な状態だったんですよね。すごくいいツアーだったのに、僕ひとり藻掻いてて。最後に現実の厳しさを突きつけられました。でも、逆にそれがよかったと思います。一瞬ファーッと浮いてた足が地に戻ってきたというか、いろいろ新たに考える機会にもなったので。

影丸(太鼓) 僕も、ツアー初日から浮かれ気分で、演奏も道中も楽しんでいたんですけど。ファイナル当日に雲行きが怪しくなって、実は禊(=ライブ)中顔面蒼白で(笑)。ドラムだからやれましたけど、同じような状態で最後まで歌い切った命様を見て『かっけぇ!』って思いましたね。僕も気が引き締まりました。

──では、終わったあとはちょっと反省モードに?

 悔しい気持ちはありましたね。最初の頃は特に調子がよくて、そこから全国回ってブラッシュアップしていちばんよくなるはずのファイナルに自分の喉がヘタリ倒してたのが本当に悔しくて。絶対によいファイナルにしたいという気持ちと、うまくできない自分との隔たりに苛立ってました。

──龍矢さんはいかがですか。

龍矢(低音弦) 今言った通り大変な部分もあったんですけど、各地の禊としては、アルバムの世界観をセットや照明でしっかり表現できて。今まででいちばんアルバムツアーらしいステージだったんじゃないかなと思います。ジグザグの禊の幅が広がった実感があります。

──あらゆる意味で得るものが多いホールツアーだったわけですね。そこからの新曲作りに関しては、『最高』の時から意識の変化もありましたか?

 ある意味原点に戻ったと言いますか……ジグザグ的な最新にして最初の感じがあります。

──確かに、今回のEPを聴いて、いい意味で情緒不安定なジグザグが戻ってきたなって思いました。

 そうなんです(笑)。これこそっていう感じですよね。だから、逆に『最高』であれだけはっちゃけておいてよかったんだなと思います。『最高』のモードでやり切れたので。


(“Schmerz”は、)ジグザグ史上いちばん重い音を出している(龍矢)


──1曲目の“Schmerz”は、待っていた人も多いんじゃないかというヘヴィナンバーで。インパクト強いですね。

 ヘヴィな曲は、ほかにも進めているものが何曲かあります。やっぱりメタルは大好きなんでね。

──前回のインタビューでは、『最高』モードだとヘヴィな曲が出てこないと仰ってましたけど。

 曲というより歌詞ですね。満たされているとラウドな曲に合う歌詞が書けないというか、それっぽいだけだと嘘ばかり書いてるじゃん、となってしまうので。ただ、個人的にはラウドもポップスも好きな中で、全体的にポップな印象が表に出ちゃってるかな、という感覚があったんですよ。

龍矢 僕もヘヴィな曲は大好きなので。デモの段階で「かっこいい!」って思いました。そこから最終レコーディングでキーがひとつ下がって。最低音がA♯で、ジグザグ史上いちばん重い音を出しているんです。よりロー感を意識した歪みをこの曲用に作りました。

──ヘヴィな曲だからって昔っぽいわけではなく、ちゃんと最新型になってますよね。影丸さんのドラムも暴れまくっていて。

影丸 そうですね! レコーディングの最後にこの曲を録ったんですけど、前に“バリネギ -sexy green onion-”を録ったりしてたんで、頭がおかしくなりそうでした(笑)。「ああ、これがジグザグや!」って。

──“バリネギ~”はクラシカルなロックンロールですもんね。

影丸 なんでも叩けないとダメなんですよ、このバンドは。スタジオミュージシャンかなと思うくらい(笑)。“Schmerz”は『最高』の楽曲よりも段違いに激しい曲で、久しぶりに楽しくもあり、難しくもありました。 “バリネギ~”のほうは、根底にビートルズがある僕としてはいちばん得意とするジャンルで、一発で終わりましたね!

──リズムパターンにしても、メロディにしても、歌い方にしても、本当に全曲バラバラですよね。

 同じ人が作ってるとは思えない。

──“JAPPARAPAN ~Japanese Party~”のようなパーティソングも、ジグザグの武器のひとつですし。

 そうですね。“きちゅね(のよめいり)”が有名になっちゃったんで、それで終わらせるわけにはいかないなっていう使命感と言いますか。

──“きちゅね”を超える曲を、と考えたりするわけですか。

 超えようとは思ってないかもしれない。ただ、ラウドで激しい曲をやりながら、こういう可愛いEDM系の曲もやる、というジグザグらしいノリは繋いでいきたいので。更新していくイメージですね。音楽好きな人に対してちゃんとかっこいい印象を残しつつ、ふざけてて面白いのがいいなと思ったんです。今まで、かっこいいか、ふざけてるか、どっちかだったんで。両方は意外となかったなあと。

『どれか1曲を放送します』みたいな時に、選ぶのが難しい(影丸)

──“JAPPARAPAN~”は、実は歌詞に平和を願うメッセージが込められていて。

 平和ソングです。最終的によくわかんないですけど(笑)。

──明るい中にグッとくるポイントがあるというバランス感は、『最高』で掴んだものという気がします。続く“天(ama)”は戦争を憂う曲なわけで、同じように社会に訴えかけながらこの振れ幅はなかなか出せないですよ。

 確かに。テーマは同じですからね。

──“天(ama)”は命様の歌唱力を存分に浴びるバラードで。

 キーの高さがなんとも言えない高さで。高すぎても低すぎてもパンチがないし、この高さじゃないとこの雄叫び感が出ないんですけど、難しい!

龍矢 ロックバラードというくくりでいうと他にもありますけど、歌唱力がここまでドンとくる曲はなかったので。もう禊でやっていて、特にフェスとか広い屋外の会場だと、より響きが感じられる曲ですね。

影丸 この曲はエモーショナルかつ、わりと冷静に叩かないといけないんですよ。演奏的にも、曲の意味合い的にも気が引き締まります。

龍矢 一音一音がより大事という。

影丸 そう。そこに命様の声が乗ると、ジグザグの世界ができあがる。

 まあ、僕らの見た目に合ってるというか、見た目の印象を裏切らない曲ですよね。こういう曲を歌ってそうじゃないですか。

──言われてみるとそうですね。

 お客さんの中には、こういう見た目の世界観だったり、真面目な曲が好きっていう人ももちろんいるし。逆にこんな見た目なのに“JAPPARAPAN~”とか“バリネギ~”とかやっちゃうのが好きな人も、その両方やっちゃうのが好きっていう人もいて、それぞれなんですよ。

──そのすべてがこのEPに入っていると。

 そう。これを聴けばジグザグがわかる1枚になってます。

影丸 でも、「どれか1曲放送します」みたいな時に、選ぶのが難しいんです。

 ああ、それがジグザグのいちばんの悩みです(笑)。永遠に決められない。

──全部聴いてくださいとしか言いようがないですけど、あえてバラバラにしたというより、結果的にこういう5曲になったわけですよね。

 全然狙ってないです。バラバラモードになってるのか、同じような曲が続くと「どっちかだけでよくない?」ってなっちゃうんですよ。パン屋さんに来て、アンパンしかなかったらつまらんくね?って。いろんなバージョンのアンパン食べるくらいなら、カレーパン食いてえんだけどって。そういう心境ですね。困ることはあるけど、それがらしさだろうなと思います。

龍矢 今までの音源も、毎回聴いたら衝撃を受ける作品を作ってきて、今回もまさにそうで。それがジグザグの武器なんですよね。今回の5曲で「ジグザグってこんなバンド」ということがわかるし、今までのジグザグを好きで聴いてくれている人たちも、衝撃を受けながら楽しんでもらえる音源になったんじゃないかなと思います。

影丸 今時、曲順通りに聴く人は少ないかもしれないですけど、今回のEPこそ、1枚のCDとしての聴き方をしてほしいなと思います。「まずこの曲を聴いて」っていう曲が本当にないので、全部聴いてほしいです。

──幅が広いのは昔からなんですけど、それだけじゃなく、ジグザグはちゃんとすべてのジャンルに尖っていることをより実感したんですよね。丸くなってねえぞっていう。

 すごく尖ってますね。どの曲も、精神的な意味でのパンクな要素が入っていると思います。

ライブで壁を作ってはいけないっていうのが、ずっと僕らの中のポリシー(命)

──今作をひっさげて再び全国ホールツアーが始まります。ファイナルは横浜アリーナですが、横浜アリーナが決まった時はどうでした?

 素晴らしいことですし、嬉しいんですけど……僕の中ではもう武道館で完結しちゃってるんで、その上は特に目指してないというか。大きいところでやることを目標にするんじゃなく、いい楽曲といいパフォーマンスを更新していきたい。自分でも「ジグザグ、こんなとこまで行くん!?」って思うし、正直今でもリアリティがないんですよ。どこまで行くんだろう、これでいいんだろうか、みたいな不安もなくはない。でも、せっかくならこの規模の会場でしかできないことを思いっきりやりたいですよね。

──昨年のツアーは悔しい思いもしたということでしたが、ホールライブ自体のコツは掴みました?

 そう思ってたんですけど、ホールクラスとアリーナクラスでまたちょっと違うということに最近気づきました。僕のMCは、フォークスタイルというか、漫談みたいに喋る感じなんですよ。お客さんもそれを楽しんでくれていたと思うんですけど、アリーナでそういうスピードで喋ると反響で聞こえにくいらしくて。改めて、アリーナクラスでやっている他のバンドのライブを観た時、トークじゃなくてスピーチをしてるんだなと思ったんです。僕はこの期に及んでトークのキャッチボールをしようとしてたから(笑)。

──確かに(笑)。

 怖いのは、MCが聞き取れてる人と聞き取れていない人の間に温度差が生まれて、壁ができちゃうことなんですよね。壁を作ってはいけないっていうのがずっと僕らの中のポリシーだったのに、まさかMCで壁ができちゃうとはって。横浜アリーナをやる前に気づけてよかったです。だから、次のホールツアーと横浜アリーナでは、すっごい聞きやすいボーカリストになってるはずです。誰も聞き逃さないMCをします!

影丸 僕も演説します!

龍矢 ……僕らが足を引っ張るかもしれない。

 わははは!

ヘア&メイク=福田佳緒理 スタイリング=高見佳明

このインタビューの完全版は、発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』12月号に掲載!

【JAPAN最新号】-真天地開闢集団-ジグザグ、『最高』の先にあったものとは? ニューEP『Gran ∞ Grace』で改めて向き合うカオスの原点
ある意味原点に戻ったと言いますか……ジグザグ的な最新にして最初の感じがあります -真天地開闢集団-ジグザグのインタビューは約1年ぶり。1年前は、4thアルバム『慈愚挫愚 四 -最高-』を完成させ、名実ともに「最高」でポジティブな心境を語ってくれた。その後、初のホールツアーを開催し、フ…


●リリース情報

音源集(EP)『Gran ∞ Grace』

2024年11月6日発売

[収録曲]
壱 Schmerz
弐 JAPPARAPAN ~Japanese Party~
参 天(ama)
四 バリネギ -sexy green onion-
五 E.v.e

[初回限定盤収録]
Bonus Track
“Gran ∞ Grace” 座談会

14Pブックレット:命-mikoto- SELF LINER NOTESページあり
『全国開闢禊 -最高- 紀行』Blu-ray同時購入特典 スペシャル映像視聴用 シリアルナンバー封入
【視聴期限:2024年11月5日(火) 12:00 〜 2025年2月28日(金) 23:59まで】

[通常盤収録]
8Pブックレット
『全国開闢禊 -最高- 紀行』Blu-ray同時購入特典 スペシャル映像視聴用 シリアルナンバー封入
【視聴期限:2024年11月5日(火) 12:00 〜 2025年2月28日(金) 23:59まで】

●ツアー情報
全国開闢禊 -天ト地-
2024.11.20 【神奈川】 相模女子大学グリーンホール 大ホール
2024.11.22 【宮城】 仙台サンプラザホール
2024.11.25 【兵庫】 神戸国際会館 こくさいホール
2024.11.27 【広島】広島 JMS アステールプラザ 大ホール
2024.11.30 【北海道】 札幌文化芸術劇場 hitaru
2024.12.06 【静岡】 静岡市民文化会館 大ホール
2024.12.08 【石川】 本多の森 北電ホール
2024.12.10 【大阪】 大阪国際会議場 メインホール(グランキューブ大阪)
2024.12.12 【福岡】 福岡サンパレス
2024.12.18 【香川】 レクザムホール ( 香川県県民ホール ) 大ホール
2024.12.20 【愛知】 名古屋国際会議場 センチュリーホール
2024.12.24 【神奈川】 横浜アリーナ


提供:CRIMZON
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部