【インタビュー】04 Limited Sazabys、2年半ぶりの新作EP『MOON』が示すロック理想郷をGENが語る!

改めて今回の4曲入りEP『MOON』で思ったのだが、04 Limited Sazabysはずるい。いろんなバンドがいろんな理想郷を持って活動していて、その形は様々だと思うけれど、フォーリミのロックの理想郷には今の時代におけるベストバランスを感じる。そのベストバランスの証明が、この『MOON』に収録されている4曲に詰まったロックの気持ち良さ、かっこ良さ、エモさ、楽しさが今を生きる僕らに刺さりまくるということだ。しかも、それが改めて04 Limited Sazabysの強みがなんであるかに大胆に、緻密に、ストレートに、そして戦略的に向き合った結果であるのがまた理想的。以下は、1月30日発売となる『ROCKIN'ON JAPAN』2025年3月号での、GEN(B・Vo)への対マンインタビューの中から最新EP『MOON』の話題を抜粋したもの。04 Limited Sazabysの芯にある、パンクロックバンドとしての揺るぎない強さとオリジナリティを彼が語る言葉から感じてほしい。

インタビュー=古河晋 撮影=フジイセイヤ(W)


ライブをずっとやり続けてるライフワークの中でしれっとつくれたのもよかった

──約2年半ぶりの新作となるEP『MOON』ですが、まずオリジナル曲が3つとも名曲!

ありがとうございます。

──それぞれ違う方向に名曲ですよね。『Harvest』『Re-Birth』を経て自分たちの何がかっこいいのか自覚し直して、そこをピュアに研ぎ澄まして出したEPって感じがする。

そうですね。しかも、それをライブをずっとやり続けてる隙間で、わりと普通につくれたんですよ。ライブっていうライフワークの中でしれっとつくれたので、そこもよかったですね。

──だから今までにない引き出しを無理に開けてないし、3曲とも純度がすごく高い。しかもバリエーションとして3曲とも違うのが面白いなと思った。さらには“mottö”のカバーも含めて04 Limited Sazabysのバリエーションが表現されてると思うんだけど、最初からこういう4通りの強みを表現したいというイメージがあった?

最初からそのイメージはありました。4曲とかだと、バランスがわかりやすいので。ある程度の統一感とバランス感が表現できる。これは僕ら得意なところだと思います。もう1曲、新曲を入れて4曲っていう説もあったんですけど、俺ん中で今回ちょっと足らないキャッチーでかわいい部分が“mottö”を入れることによってピースがハマると思ったし、これも1個の話題性になるだろうってのもあった。


──じゃあ、その4曲の役割と成り立ちを聞いていきたいんだけど、“magnet”に関してはフォーリミのどういう部分が出た感じ?

これは僕らにとっていちばんの切れ味の鋭い2ビートで。言ったら“monolith”に近いコード進行なんですけど。そして切ないメロディで疾走していくっていう。いちばんの僕らの武器をまっすぐ投げてる感じですね。なんか昔より、この音がかっこいいとかが明確にあるので、同じことやったとしてもあの頃とは純度と切れ味と説得力が違うだろうみたいな気持ちがあるから潔くこういうことをできた感じですね。

──『YON FES』でやった反応もよかったですよね。

うん。自分の中でも、こういう切ない旋律をあのスピード感で歌うっていうのが、僕らのほんとにいちばんいいところかなってずっと思ってます。

──ちょっと話がそれるけど、結束バンドに“UNITE”って曲を提供したじゃないですか。あの曲でもストレートにそこを出したよね。

ありがとうございます。実は“UNITE”と並行してつくったのがこれで。あれはありがたかったですね。求められる僕ららしい楽曲をつくってく中で、“UNITE”とこれをつくっていて、“magnet”を自分たちのものにしたって感じです。

──ちなみに結束バンドのライブで“UNITE”、めちゃめちゃ盛り上がってますよ。

あ、ほんとですか。嬉しい~。サビの2ビートでノれるんですか? アニメのファンの皆さんは」

──サビの爆発力すごい。それはもう曲の力だよ。

あ、ほんとですか。嬉しいですね、それは。

小中学生から自分というキャラクターをプレーしてる感覚はあります。そこがたぶん俺のずるさだと思います

──続いて“GATE”はどうですか?

“GATE”、実は『Harvest』の時からあったんですよ。

──めちゃくちゃいい曲だけどね。

いや、これは取っとこうってなったんです。『Harvest』の中にこの曲があっても、なんか埋もれるかなと思ったんですよね。太さがある分、ちょっと渋めの立ち位置になってしまいそうな気がして。だから別にボツにしたわけでもなく、次のタイミングでたぶんこいつが役立つ時があるからっていう感じで取っときました。

──この曲には、フォーリミのRPG感みたいなのが歌詞も含めて詰まってますよね。

そこは意識しました。この戦ってる感じ、冒険をし続けてる感じからジャケットのイメージも来てて。フィジカル盤だと、4人をドラクエっぽくデフォルメしたキャラがついてるんですよ。そういうRPGのパーティ感みたいなのはまさに最近ちょうど考えてましたね。

──人生をゲームみたいに俯瞰する感覚ってGENちゃんは昔からあるよね。

それめちゃくちゃあります。ほんと小学生、中学生からあると思いますね。自分というキャラクターをプレーしてる自分がいる感じはあります。そこがたぶん俺のずるさだと思います。

──それがバンドを引っ張る才能でもあると思うけどね。“GATE”は、そういう今までの04 Limited Sazabysの歩みとか、今の戦い方をちょっとデフォルメした歌詞でもあるよね。

はい、そうです。何げに友だちに渡すとこれがいちばん人気かもしれないです。これは、ど頭からバンドサウンドが生々しく全部聴こえてくるんで、ちょっと楽器かじってる人からすると弾きたい感じがすごくすると思うんですよね。それに対して結構フロウがわりと飄々としてるので、そこのバランス感が面白いのかなっていう。

──バンドサウンドの面白さが詰まってて、なおかつそれが今のポップミュージックの濃さにもなってるよね。

オケだけでいうとエモ系のKOTORIみたいなバンドが全ガロングできそうな曲だと思うんですけど。しかも、すごいポップに飛び跳ねてるっていうのが特徴かなって思います。

“Kick it”は自分がいちばん青かった時の影響が残っているものを詰め込んで、これからの子たちを鼓舞してる感覚かもしれない

──そして“Kick it”。これめちゃくちゃ個人的に好きだな。

ありがとうございます。これは浮遊感もあって、バンドサウンドがドシッとしてる。最初つくってる時は、もうちょっとハーコーっぽい分厚い曲になる予定だったんですけど。僕が歌って歌詞をつけると、こんなにポップな感じになるんだなっていう。

──今の04 Limited Sazabysの年齢感も自然に出てる曲だよね。

うん、かもしれないです。歌詞の書き方とかは、10年前みたいに語呂とかノリで書いてるけど今しか言えないような人生観も入ってて。当時、たぶんここまで歌えないだろうなっていう気がします。今、歌詞を見てても大人になったなと思います。自分たちがどう未来に影響を与えられるかみたいなところは『Harvest』の時から歌ってはいるんですけど、より周りが見えてる感じがします。

──包容力を持つ大人になった先で、より背中を見せながら前に進む感じになってる気がしますよね。『Harvest』ってまさに収穫のアルバムだったと思うんだけど、今回の『MOON』には始まりを感じる。“Kick it”は大人な曲なんだけど、大きな始まりを感じるところが好きかな。

でも歌詞に関してはほんとに自然に書けましたね。《life goes on》とか言ってるけど、これはDragon Ashを意識してます。

──あ、そうなんだ。

《kick it!》も、僕が好きだったア・トライブ・コールド・クエストの“Can I Kick It?”を使いたいっていう。最初、樹木希林って言ってたんですけど(笑)。樹木希林をおしゃれに言おうってことでこれになって。

──樹木希林もリスペクト?

樹木希林は僕の中のロックスターなので。

──(笑)リスペクトが詰まってる。

はい。この《ひたむき注ぎ根伸ばす》とか《(涙で)また花咲かすよう》とか、これもめちゃくちゃDragon Ashっぽい感じで言ってるんです。あと《金輪際漂流ばっか ええて》とか、これもホルモンの“上原~FUTOSHI~”って曲で《チョッパーばっか もうええてー!!》みたいなフレーズがあって、そこを意識してたりとか(笑)。そういう僕の中での10代の頃のアイドルたちは、今やもう隣にいる、一緒に遊んでるお兄さんたちなんで。だから全然使っていいかなみたいな。

──先人たちへのリスペクトを結集しつつ、それが下の世代への包容力のあるメッセージになってる感じがします。

そうかもしれないですね。自分たちが中間なので、自分がいちばん青かった時の影響っていうか残っているものを詰め込んで、これからの子たちを『大丈夫だ』って鼓舞してる感覚かもしれないです。

“mottö”のカバーは自分がこれを書けないんでYUKIちゃんの言葉を借りて歌わせてもらった感じ

──だからフォーリミのストレートな魅力も、音楽的な充実もシーンにおける役割も新曲だけで詰まってて、これでもう十分じゃんってなりそうなところだけど、そこでなぜ“mottö”のカバーが必要だったのか。

いやらしい言い方すると、まず話題性ですね。俺がジュディマリを歌うって言ったらみんな聴きたいでしょうっていう。あとカバーは、トリビュートへの参加という形でいろいろやってきたんだけど、自分らのリリースとしてカバーってかたちのものを出したい気持ちもあって。

──自分たちで主体的に責任を持つカバーということですね。

うん。その中でジュディマリをやりたいというのがあって。僕、この“mottö”という曲がすごい好きだし、この曲を2ビートにしたいってずっと思ってたので。

──この時期のジュディマリのカバーっていう発想も珍しい感じがする。

僕としてはすごい直撃で聴いてた頃なので。しかもバンドが終わりに向かっていってたので、この頃は。

──そうなんだよね。

そこの儚さも、小学生ぐらいの時に感じてた記憶があります。なのにこんだけ勢いがあるんだっていう。逆にこれだけ前向きでお転婆なこと言ってても、すごく悲しげにも聴こえますし。

──“mottö”を聴くとジュディマリは濃密になりながら終わったんだなっていうのがわかりますよね。

はい。歌詞もすごい好きで。

──歌詞、いいよね。

自分がこれを書けないんで。YUKIちゃんの言葉を借りて歌わせてもらったって感じですね。僕もこうでありたいというか。この女の子の、ギャルのバイブスみたいなのって、自分の中にも飼いたい人格なんですよね。さっきゲームみたいに俯瞰して自分をプレーしている感覚があるって言ったんですけど、こういうマインドはやっぱり欲しいなといつも思ってます。

──このバイブスはわりと自分に召喚できるんじゃない? 歌うスタイルとしても精神性としても。

はい、できます。僕は、ステージ上ではこういう感じです。しかもジュディマリをカバーしてる人って誰かいたっけなみたいな感じがして。僕らとしては洋楽のすごい有名な曲をカバーとかするより面白いんじゃないかなっていう。存在感として僕らも、ポップだけどこうやってエッジがきいてる人でいたいなっていうのはあります。

──バンドアレンジとしてもやってて面白かった?

はい。これ、もともとのTAKUYAさんのギターが結構わけわからないフレーズを弾きまくってるので、そこをどうするっていうのはありましたね。HIROKAZ(G)もいろいろやってくれて、いいなってとこはあったんですけど、ここはもっとシンプルにしたいってことになって。ライブハウスで一発で鳴らすドーンのかっこ良さみたいな方向に持っていきました。メロディも白玉ですし。ジュディマリだともっとグチャグチャしてるかなっていうところを、どストレートにやってみました。海外の人とかに普通にパンクの曲としてめっちゃ聴いてほしいですね。バンドサウンドでいうと、僕、この曲がいちばんうまく行った気がする。ドドダダ、ドドダダってドラムキックがあって、そこから2ビートに行く歯切れの良さと。なんかイージーコアみたいなことやってるというか。音づくりは全然違うけど。キックがビタビタいってる感じが気持ちいいです。このEP全体に、やっぱりバンド活動してく中でのバンドサウンドの気持ち良さみたいのがより明確になった感じがして。さっきも言ったんですけど、出したい音がすごく自分たちの中でもくっきりしてるので、それが遠回りせずにできたなって感じです。

──なんか今日、話を聞いてて改めてパンクバンドなんだなということも思ったな。すごい普遍的なメロディやサウンドをまっすぐできるし、結束バンドの曲も提供できるし、戦略的にジュディマリもカバーできる、そこをパンクバンドの表現としてできちゃうところがすごいし、やっぱりずるいなっていう感じがしますね。

ずるいですよね。でも、そのパンクバンドと思われたいっていうのは、大前提としてあるかもしれないですね。そこに身を置きたいっていう。

──型にとらわれずパンクをやる才能があるんだと思いますね。2025年の04 Limited Sazabysはどうなっていく予定なの? 

2024年は自分たちの冠のツアーとかもやってなかったですし、自分たち主導のイベントとかツアーとかは、2025年はしっかりやってこうかなと思います。あと『YON EXPO』もやろうと思ってるし。『YON EXPO』もやるんだったら、それのお土産的になるような曲つくったほうがいいかなとも思ってるし。前に『MYSTERY TOUR』をやって、みんなにすごい楽しんでもらえたんで、そういうみんながワクワクするような動き、独特なことはしたいなって思ってますね。

ヘア&メイク=藏本優花


●リリース情報

04 Limited Sazabys New EP 『MOON』

発売中

●ツアー情報

04 Limited Sazabys「MOON tour 2025」



提供:日本コロムビア
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部