【インタビュー】あなたの心を内側から爆発させる、ロックを未来につなぐ砦──Age Factoryの実像に迫る

2010年の結成から15年、現在のメンバーが揃ってから11年。作品を重ねながらひたすらライブハウスで戦い続けてきたAge Factory。このロックバンドのことをひと言で説明するのは難しい。なぜなら彼らの鳴らすとてもストレートで、ストイックとも言える3ピースロックには、常に表裏一体の感情や感性がそのまま埋め込まれているからだ。

一面ではとても鋭利な牙をもち、現状に異を唱え続ける反抗者であり、一面では内面に深く潜って言葉にできない感情を見つめ続ける内省的な詩人であり、また別の一面では3ピースのポストハードコアやエモ、オルタナをベースにしつつ、ヒップホップやトラップミュージックまでを貪欲に取り込む音楽の探究者であり……そのすべてが渾然一体となり、内側から爆発するように放射されるAge Factoryの音楽は、常にリスナーの心を刺激し、揺さぶってきた。

そしてフロントマンの清水英介(Vo・G)が30代に突入した今、彼らは新たなフェーズに突入している。自分たちで新たなレーベル「0A」を立ち上げてリリースされるニューアルバム『Sono nanika in my daze』には、長い時間とさまざまな経験を経て改めて問う「Age Factoryとは何か」というテーマが、これまでにない純度と正直さで刻まれている。清水に訊いた。

インタビュー=小川智宏 撮影=Kazma Kobayashi


俺たちは誰のために歌いたいんだろう、なんのために、何が見たくてやってたんだろうって思ったんです。次に自分が何を見つけたいのかをずっと模索してた日々でした

──前作『Songs』はAge Factoryにとって画期的なアルバムとなりました。実際にこれまで以上に多くの人に届く結果にもなったし、ライブの規模も大きくなって、かなり手応えも感じたと思うんですけど、そこから今作に至るまで、どんなことを思いながらやってきましたか?

『Songs』を出した時は、すごくみんなのために作った感じがあったんです。それは僕らバンド3人もそうですけど、増えたバンドを取り巻く人たちのためにでもあって。対象とする人数がすごく多いテーマだったんですけど、そのアルバムを出してツアーをやる中で新しい景色みたいなものをすごく見れたんです。

──うん、Age Factoryがこんなことを表現するようになったんだというのは、こちらから見ていても新鮮でした。

でも、そうやってやってきた結果……次もまたみんなのために歌いたいとはシンプルに思わなくて。俺たちは誰のために歌いたいんだろう、なんのために、何が見たくてやってたんだろうって思ったんです。次に自分が何を見つけたいのかをずっと模索してた日々でした。

──その模索の果てに、何かを見つけた?

それはこのアルバムですごい表すことができたかなって。答えとかは別にずっと曖昧でいいし、今回のラスト曲の“Sono nanika in my daze”の《daze》っていう部分ですごいノイズがかかってるんですけど、それでいいんじゃないかなって思った。それが今の自分たちの答えかなと思って。

──リリースに際して英介さんが書いたコメントがあって、そこには「もう作らないでも良いのかも知れないと思っていた」という言葉があるんですけど、これはどういう意味?

『Songs』出して、結構俺、ホームシック状態になったっていうか。結構ずっといろんなとこ行っていろんな人と出会ったのが「疲れたな」と思ったんです。自分たちが目標としてたツアーもできて、すごくいいバイブスのフロアが目の前にあって、今以上に何が欲しいのかっていうのが思いつかなくて。だからもう別に作らなくてもいいのかなって思ってた瞬間があった。ただそこから、なんか取り憑かれたみたいに自分の中から出さないといけないもの、今自分たちが形にしないといけないものみたいなのがある気がしてきて。その思いのまま、ツアー中もホテルとかでこのアルバムの曲を書いていたんです。だから『Songs』のツアー中から、自分の中でのモードはもう変わってた。その葛藤もしんどかった部分があったけど、でもツアーはやりきるっていうのが自分の中であったから。そこから次のアルバムは芽生えてましたね。


──あれを読んで、確かに『Songs』でAge Factoryが完結したとしたら、それはめちゃくちゃ美しい物語だったかもなと思ったんですよね。

完結しようと思ったこともありましたね、何回か。もうこれ以上アルバムを出さずに、このまま永久保存でもいいんじゃないかとか、また出したくなった時に出す感じのスタンスでもいいのかなとか。でもそれでは飽き足らないというか、何か満たされない部分っていうのがあった。インタビューでなおてぃ(西口直人/B・Cho)が言っててすごい腑に落ちたのが、「みんなのためじゃなくて、自分のために作ったものが、誰かの自分のためになったらいいな」っていう。そのピュアさみたいな部分が、どこかしらに一貫してるのが今回のアルバムで、Age Factoryが今後も存在するために絶対に必要だった、そういう作品になったと思います。僕らが今後成功するためとか失敗しないためとかじゃなく、自分たちが自分たちであるために、今後状況がどう変わっても変わらないものが作りたかった。それが時空も時代も超えてどこかに届けば、俺たちが今ここでAge Factoryのために作ったものが、未来までずっと意味を持つかなって。そういうものを作りたかった。雑音とかちょっと余分なものとかの意味、それをなぜちゃんと表だって出すのかの理由。そういうところをちゃんと今回は見つめ直したというか。それが今回の原動力でした。

自分とは何者であるのか、人から見た自分ではなく、自分の思う自分はなんなんだろうっていうところに立ち返りたいと思った

──アルバムの始まり方も『Songs』とは対照的ですもんね。前回は強くて踊れるビートから始まっていったけど、今回はノイズから始まるっていう。

そうですね。

──『Sono nanika in my daze』っていうアルバムタイトルも、結局その「何か」がなんなのかを言わないっていうところに意味があるんだと思うし。

このタイトルはいろんな意味を俺の中で含んでて。ローマ字の「Sono nanika」って海外の人が読んでも「Sono nanika」で。それは俺たちがそれにそういう呼称をつけたっていうことなんです。「それ」はずっとあやふやなんですけど、そのあやふやなものを明確にしたっていう。このタイトルはすごい気に入ってます。そういう余白とか隙間って、このアルバムに一貫した何かを掴み取るためのものだと思ってるんで。

──前作ではそれこそ明快に《your favorite song》を歌うんだって言い切ったわけじゃないですか。実際にそれはちゃんと届いたし、その実感も3人の中にはあったと思うんだけれども、それと同時にその方向の限界みたいなものも感じていたんですか?

ありましたね。たとえば先輩とかに「すごいアルバムよかったよ」って言ってくれる人もめっちゃいたけど、「次どんなの作るの?」ってなった時になんて言っていいかわかんなくて。いいと言ってもらえるのはすごく嬉しかったけど、その先にいる自分たちが僕には見えてなかった。でも、自分の中にあるものはそういうことを考える度にちょっと生まれてきてて、自分の中でずっと育て続けてたんです。そうやって外に出さなかったのは初めてでした。今まではちょっとでも種が生まれたら外に出して、みんなで話して空気に触れさせて、いろんな角度から育てるっていう感じでやってきたけど、今回は違ったっすね。


──そのぶん純度が高いものになったし、みんなで話す必要がないから、曖昧なままにしておけた。

なんか、曖昧なのに確信だけずっとすごいあって。「こういうアルバムを作りたい」という明確なイメージだけはずっとあったんです。

──だからまあ、『Songs』みたいなアルバム出したあとって必ず「Songs 2」を期待されるじゃないですか。

そう、結構みんなにそう言われた。「Songs 2」を期待しているって。同じようなアルバムを求めてくれてることは別に嫌じゃないけど、なんか俺的に、そっちの方向は見たけど何も見えなかった。『Songs』では人生でもいちばんいろんな人の前に立って、いろんな人と話して、いろんな場所に行って。その時に、ちょっとだけ自分のコアみたいな部分が薄くなってる気がしたことがあったんです。いろんな仕事をしてる人も、それぞれの自分のキャパシティの中で生きてると思うんですけど、僕的にはちょっとキャパい瞬間があったというか。そこで、今まで自分が歌ってきたことの1個ではあるけど、自分とは何者であるのか、人から見た自分ではなく、自分の思う自分はなんなんだろうっていうところに立ち返りたいなって思ったっていう。

漠然とした不安があって、でも今までやってきた自負も確実にあって。その中で、自分が思う「クール」を高めたいなって思うようになった

──それを違和感と呼ぶのか、危機感と呼ぶのかわからないけれども──。

違和感。僕はそういう、違和感のある場所にはいられなくて。それが悪いとかじゃなくて、ただ俺がなんか違和感を覚えるだけなんですけど、そうなると俺はやっぱりそこを出発しようとするなって思う。それが今のタイミングでの自主レーベルっていうところにもつながるんだと思います。

──そういう自分が薄れていく感覚みたいなのをある程度受け入れていくことができる人もいるんだと思うけど、Age Factoryというバンド、清水英介という人はそれができない、というのがこのアルバムだと思うんです。だからこのアルバムには、ちょっと諦めのムードみたいなものも漂っている気がする。でもそれもあのアルバムを作ったからこそ見えてきたものですよね。

うん。『Songs』が終わった時に、俺の中で初めてピリオドみたいな感覚があったんですよ。30っていう年齢もちょっとあったかもしれないですけど、明確な区切りを感じた。Age Factoryって、自分と同じ年齢のやつの別人格のような感じだなって思うんです。自分のようで、自分じゃないけど、ともに生きてきた流れを感じる。だからわかるっていうか、なんか漠然とした不安があって、でも今までやってきたっていう自負も確実にあって。その中で、今は人から見た時にかっこいいと思われるのではなく、自分が思う「クール」を高めたいなってだんだん思うようになってきたんです。

──それを作り上げて守っていくっていうフェーズってこと?

『Songs』までのピリオドはそれを作っていくと同時に進んでいくっていうものだったと思うんです。それが今回のアルバムで完成した気がしていて。だから今回ぐらい、アルバム作り終わって次のイメージが浮かばないこともなかった。それぐらいすごいでかい……第2章の1個目かなって。まあ1個目になればいいけど、まだ何もわからないって感じですね。

もっと新しい自分たちを見つける努力をしないとなっていうか。だから全然やめられんなと思う。アルバム作っただけで終わりじゃないんで

──自主レーベルの「0A」を作ったっていうのもきっとそういうことなんだと思うんですよね。自分たちが思っているクールなことを実現するために、それができる仲間たちと一緒に進んでいくっていう決意なんだと思う。

だから、メンバーもみんな自負が生まれたと思いますね、今回初めて。俺たちがAge Factoryという看板のもとに今までやってきたってことに対しての自負。なんとなく会場がでかくなったとか、レスポンスがでかくなったとかいうことよりも、この作品ができたことによって明確にそれを感じている気がします。俺はこれを絶対に必要としている人がいるのがわかるし、何より僕らにとって必要だったものなんで。っていうことは、必要としている人にはわかるかなと思う。


──うん。このアルバムが刺さる人っていうのはむちゃくちゃ刺さる人だと思うし、逆に言うともしかしたら刺さらない人もいるかもしれない。

それで全然いいですね。でも、これが今の自分たちなので。嘘もフェイクもない状態だよっていう。だから、すごい未来の人にも聴いてもらいたいなって思うんですよね。時代じゃない、今の空気を真空パックして、この数ヶ月に自分が思えたこと、みんなで思えたことみたいなのが、すごく生々しく入れられたから。

──なるほどね。だから、さっき「次のイメージが浮かばない」と言っていたけど、それぐらいまっさらな状態に戻ってまた始められるっていうことなんでしょうね。

今は本当に初めてぐらい展望もなくて。でも、このアルバムの曲をステージ上でAge Factoryの今までの楽曲たちと同じようにプレイすることで芽生えることがありそうだなって。だから、ライブしないとなって思ってます。アルバム出してライブしたら、俺らにも「Sono nanika」がわかるのかもしれない。俺にはわかっているけど、まだバンドを通してはわかってないから、ライブで今回の曲らが教えてくれることがありそうだなと思ってます。早速ツアーのセットリストのこととか考えてみたんですけど、なんかおもんなくて(笑)。もっと面白いことっていうか、なんかもっと新しい自分たちを見つける努力をしないとなっていうか。だから全然やめられんなと思う。アルバム作っただけで終わりじゃないんで。



●リリース情報

『Sono nanika in my daze』

発売中
品番:0A-001/¥2,139(税込)


●ツアー情報

Age Factory presents "Sono nanika in my daze" Release Tour 2025

9月5日(金) 岡山・YEBISU YA PRO
9月9日(火) 香川・DIME
9月26日(金) 宮城・Rensa
9月28日(日) 石川・金沢Eight Hall
10月13日(月・祝) 北海道・Zepp Sapporo ※対バンあり
10月19日(日) 福岡・Zepp Fukuoka ※対バンあり
10月25日(土) 大阪・Zepp Osaka Bayside
10月26日(日) 愛知・Zepp Nagoya
11月3日(月・祝) 東京・Zepp DiverCity(TOKYO)

提供:0A
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部