【インタビュー】まっすぐに、無二の道を突き進む!──-真天地開闢集団-ジグザグが初のアニメタイアップ曲“P0WER-悪霊退散-”を語る

TVアニメ『地獄先生ぬ~べ~』のオープニングテーマとして書き下ろされた新曲“P0WER-悪霊退散-”は、-真天地開闢集団-ジグザグの新たな扉を開ける1曲だ。これまで多彩な楽曲を生みだしてきた命(唄)は、初のアニメタイアップというトピックはもちろん、昨年、初の横浜アリーナでの禊(=ライブ)を成功させたバンドとして、より広い世界に響く音楽を目指したはず。そのために取った手段は、独創的なバンドの色をマイルドにするのではなく、むしろより濃くしながら、無二の道を極めることだった。
ジグザグ流ミクスチャーと言うべき“P0WER-悪霊退散-”に、禊では犬耳をつけてメンバーが踊るダンスナンバー“WAN WAN WONDERLAND”。間違いなく禊に新たな刺激をもたらす新曲を携えて、全国ツアー2025『47都道府県 ゆっくり行脚禊 〜第一弾〜』真っ只中の彼らに話を聞いた。

インタビュー=後藤寛子 撮影=CHITO


今の流行とは全然違うけど「なんだ、この曲は!?」と思わせたいし、ジグザグそのものがそんなバンド(命)

──“P0WER-悪霊退散-”は、タイアップという側面もありつつ、ジグザグの新曲として力のある1曲ですね。

 久しぶりの新曲として、気合は入っていましたね。新しい武器にしたいという気持ちはすごくありました。

龍矢(低音弦) 命さんが「過去の自分の曲を越えるのが目標」とよく仰っていて。どんどんいい曲ができてハードルが上がっている中ですけど、まさに今回もそういう曲だと思います。

──でも、そこで新しいジャンルに挑戦したというより、今まで揃えてきた武器をめいっぱい使った曲という方向性ですよね。

 確かにそうですね。歌モノでもあるし、いろんな要素を詰め込んでいます。

──《悪霊退散!》のあとにくるメロディがサビかと思いきや、さらに大サビ的なパートがくる構成が印象的です。これはどういう狙いだったんですか。

 今までのジグザグの曲にもあったパターンなので、過去にやってみてよかったことをガンガン詰め込んでいる感じです。ただ、後半の大サビのメロディは今までにない雰囲気かもしれない。とにかく難しいリズムを使わず、誰もが歌いやすいメロディを意識しました。

──MVのように、まさに合唱で歌えそうなくらい馴染みやすいメロディで。

 そうですね。あと、音符がオクターブくらいパーンと跳ね上がる箇所を絶対入れたかったんですよ。自分が好きだった90年代頃の曲にそういうメロディが多いので。たとえば、(FIELD OF VIEW“突然”で)♪突然の風に~の「ん」の部分とか、(オフコース“さよなら”の)♪さよなら~の「な」でキーが上がるところとか、下から上にカーンと音が突き抜けると、キャッチーでエモーショナルになると思うんです。

──なるほど。2つのメロディはスッと出てきたんですか?

 そんなにこねくりまわしてないですし、自然に出てきた感じでしたね。メロディに関してはあんまり悩んでないです。

龍矢 最初に聴いた時、1サビの時点でばっちり少年漫画の戦闘シーンに合いそうなメロディだと思っていたら、さらに盛り上がるパートを持ってくるんだ!と衝撃でした。

影丸(太鼓) 僕も想像してなかった。曲全体の長さとしてはそんなに長くないのに、これだけ展開が多いのはすごいですよね。TVサイズからレコーディングしたので、後日フルバージョンが届いた時に、「こうなりますか!」って。本当にジグザグらしさが詰まった曲だなあと思います。

──ちなみに、大サビの途中で転調するのは、96年版アニメ『地獄先生ぬ~べ~』の主題歌“バリバリ最強No.1”(FEEL SO BAD)のオマージュですか?

 完全にオマージュですね! みなさんもそうでしょうけど、自分としてもやっぱり『ぬ~べ~』といえばあの曲なので、尊重したい気持ちがあって。当時“バリバリ~”がやったことを、令和で俺たちがやりたいと思ったんです。“バリバリ~”は、当時の流行とはまったく異なるジャンルなので、流行からは浮いてるんですよね。でもインパクトが絶大でみんなに愛される曲になっていて。ジグザグの曲も、今の流行とは違うけど「なんだ、この曲は!?」と思わせたいし、ジグザグそのものがそんなバンドだと思うんですよ。「なんだ、こいつらは?」って蓋を開けてみたら「なんかええやん」っていう。

──逆に、プレッシャーはなかったですか。

 プレッシャーは感じていなかったですね。むしろ、変な自信があったかもしれない。「“バリバリ~”がよかった」という声は当然あるものとして、それ以上にアニメ『ぬ~べ~』とジグザグのマッチングがよすぎるから(笑)。とにかく世界観が合っているから、ジグザグしかいないだろ!という気持ちはありました。

──確かに。実際にアニメで流れているのを見てどうでした?

 いやあ、オープニング映像を見た時は感動しましたね! あと、間のCMみたいなパートでこの曲のサビが流れてきた時に、「あっ、俺の曲!」って思いました(笑)。

影丸 僕もなにげにCMのところで「テレビっぽい!」って感動しました(笑)。命さんの歌が地上波に流れてるぜ~!って。本当に感動して、逆に自分のこととは思えないくらいでした。

龍矢 不思議な感じでしたね。僕はもともとアニメが好きで、いろいろなアニメを見るんですけど、オープニング映像って作品のファンからしたら楽しみなポイントじゃないですか。それが自分たちの曲で、かっこいい映像になっていて⋯⋯自分たちなんですけど、ちょっと俯瞰して「うわっ、かっこいいなあ!」と思ってしまいました。


結局、ストレートな言葉が響くんです。そこで恥ずかしがっちゃダメだよなと(命)

──しっかりアニメソングとしての大役を果たしつつ、禊で聴くとまた印象が違って。全国ツアー2025『47都道府県 ゆっくり行脚禊 〜第一弾〜』初日の市川市文化会館公演を拝見したんですが、『ぬ~べ~』の曲というより、ジグザグの曲としてすごく新鮮でした。

 嬉しいです。そこも今回のテーマのひとつだったんですよ。ちゃんと昔ながらのアニソンっぽい要素を押さえながらも、アニメありきの曲じゃなく、しっかりジグザグらしい新曲にしたくて。かなり欲張りなんですけど、わりときれいに収まったなと思います。禊でも思い描いていたことができていたので、手応えは大きかったですね。

──合唱のような大サビの部分がどういうふうに聞こえるのかなと思ったら、謎の感動が押し寄せてきて。

 はははは! わかります。

龍矢 初披露はフェスだったんですけど、その時からすでに一体感が感じられて、みんながこの曲に対して同じ方向を向いてくれているのを感じました。一緒に歌ったり踊ったりという部分もありますけど、たぶんその要素がなくてもそうなったと思いますね。

影丸 どの新曲を初披露した時よりも、参拝者(=ファン)さんもバンドもできあがっていたと思います。

──ラストにかけてどんどん一体感が高まっていくという。

龍矢 そうなんですよ!

 狙い通り(笑)。みんないい表情をしてたよね。

影丸 「これこれ!」って思いました。

──《強さと優しさを振りかざせ》というピュアな歌詞が、なぜジグザグの禊にハマるんでしょうね。

 ハートフルなバンドですからね(笑)。歌詞はいつもと同じで、あまり狙わず、自分が今書きたいと思ったことを自然に書きました。クサいと言えばクサいんですけど、難しい歌詞にはしたくなくて。本当に誰が読んでも聞いてもストレートに意味が伝わるようなサビにしたかったんです。

──《優しい想いは 愛の魔法だ》ですから。

 素晴らしいでしょ? この見た目で歌うからいいんですよ(笑)。ただ、「キャッチーさとダサさは紙一重論」でいつも悩むんですけど、今回もそのバランスはかなり悩みました。《Power》も《メラメラ》も最後までめっちゃ悩んだんですよ(笑)。ジグザグを好きな人でも、ダサいと思ってる人は正直いると思います。でも、100人中100人に響くものはないし、そこを狙うとつまらないものになってしまうので。だから、50%にはしっかり届いて、アニメを見た人にいいなと思ってもらえるくらいの基準で考えていました。

──絶妙なバランスですよね。

もっとキャッチーに振ったパターンもあったし、逆に控えめなパターンもあったけど、いろいろ考えて、今の歌詞に落ち着いてよかったかなと。ちょうどいい熱さになったと思います。結局、ストレートな言葉が響くんですよね。恋愛の歌詞でいうと、Mr.Childrenの“君が好き”とか、スピッツの“チェリー”の♪愛してる~とか、よく考えたらかなりストレートなのに、みんなに刺さっている事実があるわけで。恥ずかしがっちゃダメだよなという気持ちはあります。

──ただ作品に寄せて書いた歌詞ならもっと浮いてしまうので、このメッセージを歌って心を動かせるのはジグザグの強みだなと思いました。新たな武器に曲になりそうですね。

 それは神のみぞ知るってことで⋯⋯期待しない主義で生きているので(笑)。やれるだけやって、それでダメならしょうがないというところです。


ライブハウスだとこんなに間は取れないけど、ホールだったら大丈夫とか、やり方がわかってきた(龍矢)

──カップリングの“WAN WAN WONDERLAND”は、“きちゅねのよめいり”“拙者忍者、猫忍者。~木天蓼三毛蔵と町娘おりん~”に続いて、今度は犬ソングですね。

 仰る通りです(笑)。でも、狙って作ったわけじゃなく、わりと最近作ったストックの中から持ってきました。デモを作った時点ではワンワンにするがどうか決まっていなかったし、ワンワンには特に深い理由はない⋯⋯。

影丸 いや、最高ですよ! 一瞬、僕の曲かと思いました。(命を見て)ね?

 ⋯⋯自分を可愛い犬やと思ってるみたいです。確かに犬であることは否定できないけども(笑)。

龍矢 ははは! “P0WER~”のレコーディングが終わってミーティングをしている時に、急に「カップリングは“WAN WAN WONDERLAND”を入れるから」と言われて。聞いたこともない曲だったから「?」となっていたら、「あえて聴かせるまでもないわ」って、何も聴かせてくれなかったんですよ(笑)。

 はははは!

影丸 でも、いわゆるおふざけソングかと思いきや、サウンドはめちゃくちゃかっこよくないですか!?

 そう、かっこいいんです! この曲も90年代ですね。サビは全然違うし、サウンドは新しくなっていますけどAメロあたりは(ゲーム)『Dance Dance Revolution』の“CAPTAIN JACK”のパロディだったりします(笑)。

影丸 ドラムもこれまでのパターンだと打ち込みになりそうなところなんですが、生ドラムなんです。

 厚みが出てよかったよね。

──禊では、途中までドラムを叩いて、後半は3人とも踊っていましたね。

影丸 そうです。本当はずっと踊りたいんですけど。

 かっこいいサウンドなのでバンドのほうが合うと思うけど、やっぱり踊ったほうが盛り上がるよねってことで。ちゃんと盛り上がっていましたね。

──それもジグザグの禊には欠かせない要素ですね。ダンス曲も新しく作っていこうという気持ちはあるんですか。

 常にブラッシュアップしていきたいとは思っています。でも、こういうおふざけ系の曲って印象が強いんですよね。真面目な曲を5曲やったあとに1曲だけこういう曲をやったら、不思議なことに半分くらいふざけた曲をやっていたような印象になって。

──諸刃の剣という。

 まさに怖いところなんですよ。ちょっとしか出していないつもりでも、世間ではこういう曲ばかりやっているように捉えられちゃったりするので。ジグザグあるあるです。

龍矢 だから、セトリも迷いますよね。

 そうそう。ま、楽しかったらなんでもいいんですけどね。そういう意味では、今がちょうどいいバランスなんだろうと思います。


──ツアー初日を拝見して、セットリストの組み方に自信を感じたんですよ。バランスがよくて、幅広い楽曲のポテンシャルがそれぞれちゃんと味わえるようになっていて。

龍矢 新曲が2曲だけなので、アルバムツアーよりセットリストの自由度が広がったからかな。

 シンプルにいいセットリストを組めた部分はあると思います。

──そこに加えて、セクションごとの空気や景色の作り方が少し変わったような印象がありました。

 それはもしかしたらシンプルに上手になっているのかな(笑)。

龍矢 ホールに慣れてきたのかも。ライブハウスだとこんなに間は取れないけど、ホールだったら大丈夫とか、やり方がわかってきた感じがします。

 そうそう、そういうところが全然わからへんかったから。

龍矢 やっぱりライブハウスは、距離が近くて熱量は伝わるけど、冷めるのも早いじゃないですか。

 ホールを意識しすぎて、ぎこちなくなっていた部分もあって。ライブハウスじゃなくてホールだから、もっとこうしたほうがいいかな?と思ったりしていたけど、逆にライブハウスと一緒でいいんだと思える部分があったり。ホールも結構やってきたもんね。

龍矢 そうですね。

来年は結成10周年。命さんが本当に辞めようとしていた時期を知っているので、続けてくれてありがとうございます!という気持ち(影丸)

──前回の禊が横浜アリーナだったせいか、ホールが近く感じましたよ。

 ほんまにそれは思います! それこそバンドがちょっと大きくなり始めた頃の初Zeppや初ホールでの禊の時とは全然感覚が違いますね。当時は、客席が遠いからどうしよう、なんとかして届けなきゃと思って力んでいたけど、今はちゃんと手が届く範囲にあるから、変な気負いがなくて。我ながら落ち着いていて、精神的にちゃんと地に足がついている気がします。

影丸 僕も初(日本)武道館、初ホールツアーとか、初めてやる広い会場での禊では力んでしまっていました。でも、今回のツアーは落ち着いていますね。実際、ドラムはどの会場でも環境が同じだし、メンバーとの距離もあまり変わらないんですよね。今は背景のスクリーンだけがどんどん大きくなっていく感覚です。星空を見ている気持ちになって⋯⋯そこで命さんがいいMCをしていると、参拝者のみなさんと同じくらい僕もグッと来ています!

 (笑)別にいいことを言おうと考えているわけじゃないんですけどね。何かを仕込むのが嫌だから、その場で思っていることをただ話していたら、ちょっと恥ずかしいぞ⋯⋯みたいな。

龍矢 かっこいいMCをしようと思っていたら、そこから次の曲にいく前に「ほな」って言わないですよね(笑)。

 はははは!

龍矢 それを聞いて、心から出た素の言葉なんやなあと思っていました。

──第一弾で15ヵ所を回って、残り32都府県。長い旅になりますね。

 これも、別に「47都道府県回るぜ!」と気負っているわけじゃなく。禊に行きたくても、いろんな事情でなかなか遠くまで行けない方もいると思うんですよ。でも、地元の近くの市民会館でやるらしいとなったら行ける人も多いと思うので、ちょこちょこタイミングを見て回っていけたらなと。

龍矢 47都道府県ツアーと宣言したら、いずれ自分の地元にも来てくれるんだということが伝わると思って。

──さらに、12月31日に東京ガーデンシアターでの禊が発表されましたね。

 来年、結成10周年なので、それに向けたスタートダッシュですね。大晦日の禊はやったことがなかったし、さあ、来年盛り上がっていこうぜ!という景気づけです。

──来年、もう10周年ですか。

 結成当初の原型は留めてないですけどね(笑)。メンバーも環境も変わって。今のメンバーになって再スタートした気持ちもあるので、10周年だけど10周年なのかって問題はあるけど⋯⋯。

龍矢 この体制になって10周年でも何かしましょうか。

 ややこしい!(笑) まあ、10年続いたのは間違いないですから。

影丸 僕は加入前からサポートをしていたので、感覚としてはずっと一緒にいるんですよ。命さんが本当に辞めようとしていた時期を知っているので、続けてくれてありがとうございます!

龍矢 僕は7年ですけど、小学校より長いですから。続けていてくれてありがたいという気持ちがいちばんです。

──少し早いですが、2026年のジグザグにも期待ですね。

 10周年、盛り上げようと思っています!

ヘア&メイク=芋田モトキ スタイリング=高見佳明

このインタビューは、表紙巻頭Creepy Nuts、別冊付録YOASOBIの『ROCKIN'ON JAPAN』10月号に掲載!


●リリース情報

『P0WER-悪霊退散-』通常盤

発売中
1,210円(税込) / CCR-050

1. P0WER-悪霊退散-
2. WAN WAN WONDERLAND


●ツアー情報

全国ツアー2025『47都道府県 ゆっくり行脚禊 〜第一弾〜』

2025.08.27【大分】J:COMホルトホール大分 大ホール SOLDOUT
2025.08.29【福岡】J:COM北九州芸術劇場 大ホール SOLDOUT
2025.09.05【岡山】倉敷市民会館 SOLDOUT
2025.09.07【島根】出雲市民会館 大ホール SOLDOUT ※立見チケット追加販売中
2025.09.15【愛媛】愛媛県県民文化会館 サブホール SOLDOUT
2025.09.18【長野】長野市芸術館 メインホール SOLDOUT
2025.09.20【福井】敦賀市民文化センター 大ホール SOLDOUT
2025.09.23【茨城】ザ・ヒロサワ・シティ会館 大ホール SOLDOUT
2025.10.04【北海道】旭川市民文化会館 大ホール SOLDOUT

●ライブ情報

ジグザグ 大晦日の大禊!

2025.12.31 東京ガーデンシアター


提供:CRIMZON
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部