【インタビュー】かわいさもかっこよさも、強さも弱さも表現するアイドル、高嶺のなでしこ。HoneyWorksと歩んだ軌跡の詰まった1stフルアルバム『見上げるたびに、恋をする。』を語る

高嶺のなでしこ(通称:たかねこ)は、かわいさの中にも、揺らがぬ凛とした強さを感じさせる稀有なアイドルグループである。HoneyWorksのサウンドプロデュースのもと、2022年の結成以来、胸キュンでポップな楽曲から、自身の葛藤やネガティブな感情にも向き合うエモーショナルな楽曲まで、さまざまな感情を歌とダンスパフォーマンスで表現してきた。2025年9月には、たかねこ史上最大規模となった幕張イベントホールでのワンマン公演を成功に収め、グループとして今、大きな自信を得たところではないかと思う。
そんな大充実の2025年を締めくくるように、12月17日にアルバム『見上げるたびに、恋をする。』をリリース。1stアルバムであり、これまでの歩みを追うベストアルバムとも言える内容からは、改めて彼女たちの表現の振り幅を存分に感じる。今回はそのアルバムについて、城月菜央、橋本桃呼、東山恵里沙の3人に話を聞いた。このアルバムには高嶺のなでしこの成長の軌跡、そしてファンとの絆がしっかりと刻み込まれている。

インタビュー=杉浦美恵


アルバムを出すことはアイドルとして憧れでもあった。このアルバムではいろんな高嶺のなでしこを見せることができると思っていて、1曲1曲に歴史が詰まっている(橋本)

──9月に幕張イベントホールで行ったワンマンライブ「A Wonderful Encounter」は、高嶺のなでしこの魅力を多角的に魅せた、3周年のアニバーサリーにふさわしいライブでした。客席との一体感もほんとに素晴らしくて。

橋本 広い会場でドキドキしたけれど、客席を見渡した瞬間に、高嶺のなでしこが好きで集まってくださった方がこんなにいるんだと感動して、涙が出そうでした。とにかくありがとうという感謝の気持ちしかなかったですね。

東山 印象に残っているのは、“革命の女王”で花道を歩きながら歌ったこと。いろんなアイドルの方の映像を観ていて、花道を歩きながら歌うっていうのにすごく憧れていたんです。みんなで2列になって歌いながら歩いたんですけど、いちばん後ろでリーダーの(籾山)ひめりちゃんが大きな旗を肩に担いで歩いているのを見て、感動して泣きそうでした。ほんとに素敵なメンバーに囲まれているんだなあって。

城月 幕張のライブは、これまでの高嶺のなでしこの中ではいちばん大きいステージで、リハのときから全力を出し切ろうと一生懸命頑張ってきました。来てくださったみなさんが声を出しやすいようにとか、ペンライトを振りやすいようにとか、メンバーそれぞれにコールというか、煽りを考えてきて。会場のみなさんの声がイヤモニ越しにも聞こえてきたりして、感動的でした。

──このライブが自信にもつながったのでは?

橋本 以前の取材でも、幕張でのライブは不安が大きいと言ってたと思うんですが、あの客席の光景を見てからは、もうそんなことは言ってられないなと思いました。高嶺のなでしこのライブのために予定を合わせて会いにきてくれたファンを、もっともっと幸せにしたいという前向きな気持ちになったし、アイドルという仕事に対しても向上心が芽生えた、そんなライブでした。

東山 ほんとにファンの方のあたたかさを感じて、これからも幸せになってもらいたいと改めて思いましたね。「たかねこにもっと大きくなってほしい」と自主的にいわゆる「布教活動」をしてくださった方たちもたくさんいて、その期待にもっと応えられるように頑張りたいと思いました。

城月 みなさんがいっぱいペンライトを振ってくださったあの光景は、自信につながる景色でした。それと同時に、ライブを定点カメラの映像で観返したときに、自分に足りないところ、次につながる課題も発見できて。これからはまたそこを突き詰めて頑張っていきたいと思えました。たかねこの一体感をさらに磨いていけたらいいなと思います。

photo by 林晋介・原田圭介
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──その幕張も含め、2025年はとても濃い1年でしたよね。さらに、1stフルアルバムも完成しました。『見上げるたびに、恋をする。』というこのアルバムは、高嶺のなでしこのベストアルバムとも言える充実した内容です。今できあがってどんな思いですか?

橋本 3年間活動してきましたが、アルバムを出せることはほんとにすごいことで、アイドルとしての憧れでもありました。たくさんの曲を歌ってきたし、いろんな高嶺のなでしこをこのアルバムで見せることができると思っています。1曲1曲に高嶺のなでしこの歴史が詰まっているんですよね。

東山 曲を聴いていると、「このときこんなふうにMVを録ったなあ」とか、「このときはツアー期間だったなあ」とか。当時のことを思い出して、高嶺のなでしことしての思い出をたくさん作れていると思って、嬉しくなりました。

城月 私も率直に嬉しいという気持ちです。このアルバムが出せたこと自体が、とっても嬉しいです。

城月菜央
橋本桃呼
東山恵里沙

“I'M YOUR IDOL”はファンの方にいちばん寄り添っている曲。アイドルとファンの関係性、たかねことファンの方たちの関係性が表現されている(城月)

 
──幕張のライブで、このアルバムに収録された新曲“花は誓いを忘れない”を初披露していましたよね。

橋本 そうなんです。歌詞に《高嶺のなでしこ》っていう言葉が入っているのは、“美しく生きろ”ぶりなんですよね。“美しく生きろ”では始めに《高嶺のなでしこ》っていう歌詞があって、“花は誓いを忘れない”では最後に入っています。たかねこの始まりと、これからのたかねこと、そんな対比を見せることができて、すごくいいなって思いました。

東山 この初披露の3日前がレコーディングだったんですよ。タイトなスケジュールで(笑)。レコーディングのときには、事前に自分なりに曲を解釈して練習して臨んでて。当日にHoneyWorksさんが「こういうニュアンスで」とアドバイスをくださって完成させるんですけど、今回はレコーディングからライブ披露が短期間だったので、自分のものにするのが難しかったですね。歌うだけでも難しかったのに、ダンスも合わせないといけないし。でも新曲を楽しみにしてくださるファンの方たちの姿を目にしたら感動してしまって、すごく気持ちを込めて歌うことができました。3年間活動してきて、辛いことも乗り越えてきたからこその歌詞だし、今これを歌えることが嬉しくて。

橋本 《涙の後/見上げた空は同じだった》という歌詞があって。恵里沙が言ったみたいに、この3年間、嬉しいことだけじゃなくて辛いこともあって、ほんとにいろんな種類の涙を流してきました。でも、その涙のあとも今も、「高嶺のなでしこをもっと広めていきたい」とか、「ファンの人たちを幸せにしたい」とかみんな同じ気持ちだったよなって。]


──アルバムでは、その“花は誓いを忘れない”から、ラストの “I'M YOUR IDOL”につながります。この2曲の流れは、そんなみんなの思いをしっかり表現していますよね。

橋本 そうですね。“花は誓いを〜”では絆とか覚悟を歌っていて、“I'M YOUR IDOL”はやさしく包み込むように、ファンの方をあたたかい気持ちにさせる曲だと思うんですよね。なのでこの曲順はすごく嬉しいです。私たちは海外のライブにも出させてもらうことがあって、2月からはアジア地域も回るツアーがあるんですけど、《言葉国境も越えて/魂揺らすハーモニー》っていう歌詞がすごく好きです。言葉も国境も越えて、たかねこを愛してくださっている方がいるというのはすごいことだと思うので、ファンの方に感謝の気持ちを伝えられる曲がアルバムの最後にあるのは、私も嬉しいです。

城月 “I'M YOUR IDOL”はファンの方にいちばん寄り添っている曲だと思ってます。アイドルとファンの関係性というか、たかねことファンの方たちの関係性が表現されている感じがすごくいいですよね。初めて聴いてくださる方にも、高嶺のなでしこのことを理解していただける曲なんじゃないかと思っています。


photo by 林晋介・原田圭介

“美しく生きろ“は、辛いことも乗り越えたからこそ、どんどん深みが増していっていると思える曲。歌詞の意味合いも自分の中で変化している(東山)

──アルバムの始まりが“美しく生きろ”で初期の曲になりますが、さまざまな経験を経て、より自信を持って歌える曲になってるんじゃないですか?


橋本 高嶺のなでしこといえば“美しく生きろ”だと思いますし、この曲で高嶺のなでしこを好きになってくださった方も多くて。それまでの高嶺のなでしこって、世間的には“可愛くてごめん”のような「かわいい」イメージが強かったと思うんですけど、“美しく生きろ”みたいな曲も歌えるグループなんだって、ギャップに驚いてもらえたと思うんですよね。改めて歌詞を見てみると、すごく「今」の高嶺のなでしこに合ってると思えて。時代はどんどん変わっていくし、私たちも変化していかなきゃいけない部分もあるけれど、抱いている夢は変わらないよねって。ずっと「日本武道館公演」を目標にして頑張っていることにもつながっているなあと思います。今、歌詞を読んでグッときてしまいました。

東山 楽曲をいただいたときは、高嶺のなでしこが結成されたばかりのとき。「頑張るぞ」という気合や勢いだけで歌っていたようにも思うんですが、“美しく生きろ”は活動を続けてきて、辛いことも乗り越えたからこそ、どんどん深みが増していっていると思える曲です。《迷いはない/後悔なんてない》っていうところも、当時は「この道を選んだことに迷いはない」という意味で歌っていたんですけど、今は「この活動を続けていることに後悔はない」と、意味合いも自分の中で変化していて、何回聴いても感動する素敵な曲です。

城月 ライブとかその時々のパフォーマンスで、違う意味をみなさんに感じてもらえる楽曲だと思います。私はこの楽曲が大好きなので、家でひとりで聴いたりもするんですけど、すごく勇気をもらえる楽曲なので、自分の成長のためにも、これからもさらにこの曲を磨いていきたいなって思っています。

──個人的には、“アドレナリンゲーム”みたいなアグレッシブなシンセロックナンバーも表現できるのが高嶺のなでしこの武器だと思うんですよね。


橋本 ありがとうございます! 仮歌を聴いたとき、「ここを歌いたいな」と思った《茨道さえ楽しもうぜ》というパートを歌割りでいただけたのが嬉しかったです。ほんとは私、茨道をあまり楽しめないタイプなんです(笑)。でもパフォーマンスではちょっと虚勢を張るというか、自分に言い聞かせるみたいにかっこよく歌えるのが嬉しくて。あと、ラップみたいなテンポの速い最後の煽りパートは、これまでの高嶺のなでしこにはなかったものだったんですよね。歌入れは私がいちばん最初だったんですけど、この煽りパートは参照する仮歌もなくて。HoneyWorksさんから「自由にやってみて」って言われてやってみたものが「いいね」ってそのまま採用されたのも嬉しかったです。

東山 桃呼ちゃんが最初にレコーディングで歌ってくれたから、私も歌のイメージが見えて。桃呼ちゃんが最初でよかったなって思いました。LINEでその歌が入った曲が送られてきたんですけど、家でひとりで聴いて、思わず拍手していました(笑)。

橋本 ありがとう(笑)。

城月 自分は歌に対しては自信がなくて、特に“アドレナリンゲーム”みたいなかっこいい曲を歌うにあたっては、HoneyWorksさんとも「そこが課題だね」って話していて。一時期「かっこいい声」を頑張って研究していたときがあって、この楽曲が来たのもその頃でした。それで、《リスナー巻き込むステージ/ハイなやつが勝ちガチマッチ》っていうソロパートのところを一生懸命歌ったら、HoneyWorksさんも「こんな声も出せるようになったんだね」って驚いてくださって。これからももっとかっこいい声を出せるように頑張っていきたいんですけど、初めて「できた!」って思えた曲でした。

photo by 杰夫JeffFeng

時代的にバズることが重要みたいな風潮もあるけど、「高嶺のなでしこらしさとは?」と考えたときに、1曲のバズではなくて、グループをまるまる好きになってもらいたい(橋本)

──“この世界は嘘でできている”もまた、高嶺のなでしこの新たな魅力を見せた楽曲でしたし、橋本さんは特にメインボーカルとして感慨深いものがあったのでは?

橋本 この曲をいただいて、初めて遠征先で聴いたときはメンバーと一緒にいたので表に出さなかったんですけど、そのあとひとりでシャワーを浴びながら思い出して、涙が止まらなくなって。アイドルを始めてからいろんな経験をしてきて、もちろん楽しいことや幸せなこともいっぱいあったんですけど、その裏で辛いことや苦しいこともあったなって、この曲で改めて思い返して。でも《僕が好きな僕でいられるように》っていう歌詞に触れて、自分はそんな自分も好きでいていいんだなって、認めてもらえたような気がしました。この曲をいただいたときは、高嶺のなでしこが新体制になるということがだんだんとわかってきた時期で、そのときの心情も込められているような気がして。この曲が、声を大にしては言えなかったやるせない気持ちを代弁してくれたように感じたんですよね。この曲を歌えたから、今の高嶺のなでしこがあると思えます。あのときの高嶺のなでしこだから歌えた楽曲だったと思います。

──《優等生じゃない/綺麗じゃない/ぐちゃぐちゃだよ》っていう歌詞なんて、アイドルソングの範疇からはみ出していますよね。それをしっかり表現できるのが橋本桃呼であり、高嶺のなでしこなんですよね。

橋本 難しい曲でしたけど、私のアイドルの歩み方をHoneyWorksさんが理解してくれているのかな?って、この3年間ずっと思っていました。私の表立ったイメージって、能天気なおしゃべり野郎っていう感じだったかもしれないけど、ずっと不安だったんです。でもこの曲をいただいて、最初の歌い出しを任せてもらえて、わかってくださっていたんだなあって。この曲、ファンの方もすごい褒めてくれて、スタッフさんや関係者の方からもすっごい褒めてもらえて、それでようやく「いえーい」って思いました(笑)。

東山 HoneyWorksさんから受け取る楽曲は、ほんとにいつも「なんでこんなに私たちのことをわかってくれているんだろう?」って思うんですよ。“この世界は嘘でできている”は、ほんとに辛いなあって思っている時期にいただいた曲なんですよね。どう進んでいけばいいかわからない状況に、ひとつ正解を示してくださったような楽曲でもありました。

──新たな楽曲が届くたび、高嶺のなでしこの新たな魅力が引き出されていくという印象です。

東山 ほんとにそう思います。個人的に印象に残っているのは“アイのウイルス”。映画の主題歌を歌うことはひとつの夢だったので、すごく嬉しかったです。これまでにないロックバラードで落ち着いた楽曲だったので、また新たなチャレンジでした。サウンドが静かなだけに、すごく歌声が聴かれる曲だと思うんですよね。レコーディングもすごく緊張したけれど、HoneyWorksさんの理想と、私が考えてきたものとを擦り合わせて、しっかり話し合いながら完成させていきました。


──大充実の2025年の締めくくりにこのアルバムがリリースされて、また気合が入るタイミングだと思いますが、来年からまた、高嶺のなでしこはどんな活動をしていきたいですか?

橋本 高嶺のなでしこの輪をもっともっと広げていきたいです。時代的にバズることが重要みたいな風潮もあるけど、「高嶺のなでしこらしさとは?」と考えたときに、1曲のバズではなくて、グループをまるまる好きになってもらいたいなというのがあって。ほんとにいいメンバーばかり揃っていてもっともっといろんな方に好きになってもらえる可能性を持ったグループだと、自分もメンバーながら思っているので(笑)。その輪を広げていくためにも、今好きでいてくださっているファンの方をもっと幸せにできるように成長していきたいですね。そしてやはり次の夢は「満員の武道館」。その景色をみなさんにも見せられるように頑張っていきます。

東山 幕張のステージを通じて、改めてファンの方々に支えられていると感じたので、応援してくれるファンの方たちを、さらに大きなステージに連れていけるように、歌もダンスも磨いていきたいです。

──2026年2月からはライブツアーも。ツアーファイナルは東京国際フォーラムですよね。

城月 ずっと応援してくださっている方はもちろん、初めて観に来てくださった方も、誰ひとり、絶対に逃がさないぞっていう心意気で頑張ります。

──またライブで新たな高嶺のなでしこに会えるのを楽しみにしています。

全員 ありがとうございます!

photo by 杰夫JeffFeng

●リリース情報

1st ALBUM『見上げるたびに、恋をする。』

スペシャル盤[CD+BOOK]
初回限定盤[CD+DVD]
たかねこ盤[CD]
発売中

●ライブ・ツアー情報

高嶺のなでしこクリスマスパーティー2025


高嶺のなでしこ Live Tour – Bouquet of 9 Flowers



提供:ビクターエンタテインメント
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部