【インタビュー】対照的なふたつの個性が育む爽快キラーチューンの数々──シーンの最前線へと躍り出たセカンドバッカーはバンド音楽に何を懸けるのか

特大のバイラルヒットを記録した“犬とバカ猫”に代表される、シンプルながらクセになるよく整理されたサウンドから想像するよりだいぶ、デコボコした個性を持つ2人組である。こうへい(G・Vo)は口下手な性格を自認していて、脳内のイメージを説明するためのはずの例え話がたびたび迷路に迷い込んでしまうようなタイプ、まさみ(Dr)はあまり細かいことに悩んだりはせず外交的で、客観的なプロデュース視点も持ち合わせるタイプ。お互いの足りない部分を補い合う絶妙なバランスによって、セカンドバッカーの作品と表現は形作られている。
最新シングル『喧嘩するほど』のリリースへ向けて実施した本インタビューでは、もともと配信者として出会ったふたりがバンドを組むきっかけから振り返るとともに、“犬とバカ猫”のヒットを経験して今作へと至る道のりを辿った。ピュアな表現欲求とクレバーでモダンな仕掛けなど、キャラクター面と同様にギャップ満載なバンドの個性をより深く知るためのガイドとなれば幸いだ。

インタビュー=風間大洋


人と喋るのもすごく苦手で頭もよくないけど、歌詞なら時間をかけてじっくり文字にして伝えられるので、そこが自分にマッチしてた(こうへい)

──ふたりが出会ったのは2020年頃なんですよね。

こうへい はい。5年か6年前くらいです。

まさみ 僕もこうへいくんもSNSに動画をあげてたんですよ。その時こうへいくんはいわゆるTikTokerみたいな形だったんですけど、もともとバンドをやりたくて──バンドが売れるためにはファンが必要っていうので、音楽を作るよりも先にファンを作ろうとしてたらしくて……。たぶん、こうへいくんが話すとすごく長くなるんで俺が話すんですけど。

こうへい (笑)。

まさみ でもファンがいるからってバンドマンではないじゃないですか。

──ですね。

まさみ っていうことに気づいたからTikTokerをやめて音楽一本でやるっていう話をされて、面白い人だなと思って。その時から、バンドをやるならまさみくんとやりたいっていうことを言われたんですよ。そこから曲を書き溜めたり経験を得る期間があったので、本格的に曲をリリースしたりライブをするようになったのは3年前ですね。最初は作ってくる曲がわりとわからない……なんだこれ?っていう(笑)、とても世に出せるものじゃなかったので。

こうへい もともと僕はリードギターで、歌うことも曲作りもしたことなかったので、AメロBメロとかサビっていうものもあんまりよくわかってなくて。頭の中にあることを言葉にしたり、人に思いを伝えるってこんなに難しいのかって感じたし、歌詞を書いてみたら自分が浅はかな人間であることが隠れずに出ちゃう。最低限そこを人に見せられるようにするのに2~3年かかりました。


──書きたいイメージ自体は最初からあったけど、やってみたらうまくいかないし伝えられなかったと。

こうへい そうですね。言ってることはわかるんだけど、それを道を歩いてる裸のおじさんがマイク持って言ってたとしても、誰も聞こうとしないしっていう、そういうものになっちゃって。

まさみ ……難しいな、喩えが(笑)。

──(笑)。でも、もともとギターをやっていたのに、ギタリストとしてバンドをやりたいというふうにはならなかったんですか?

こうへい 僕はback numberとかサンボマスターがめちゃくちゃ好きで、10代の頃はそのあたたかさが何かっていうのが明確にはわかってなかったんですけど、どちらも歌詞がめちゃくちゃいいんですよ。だから、歌いたかっただけじゃなくて誰かに何かを伝えたかったのかな。僕は人と喋るのもすごく苦手で頭もよくないけど、歌詞なら時間をかけてじっくり文字にして伝えられるので、そこが自分にマッチしてたのかなって。だから音楽をやってなかったらどうなってたんだろう?っていうのはあります。どんどん溜まるものが溜まっていって爆発して、その辺で裸で踊ってたかもしれない。

まさみ なんでだよ!

──さっきの喩えが回収されましたね(笑)。

まさみ LINEの返信とかも、こうへいくんはめっちゃ考えるんですよ。「そうだね」っていう短文でも「…」を入れたり消したりみたいな。

こうへい 本当に音楽をやっててよかったと思います。僕は勉強をしてこなかったので、今から医者やパイロットにはなれないじゃないですか。たとえなれたとして、お金をたくさんもらえたとしても、自分は幸せじゃないだろうなと思うんですよね。お金のために一日の8時間とかを取られるわけじゃないですか。でも今は自分の伝えたいことがあって音楽が好きで、やりたいことに時間を使えてるので。

まさみ 自分の気持ちを人に伝えたいとか何かをしてあげたいっていう感情って、誰にでもあるわけじゃないじゃないですか。それにこうへいくんは人の話したこととかポロッと言ったこともずっと覚えてる、自分とは全く違うタイプなんですよ。

こうへいくんがいろいろ作ってくる中から、世に出したら評価してくれる人がいるであろうものを俯瞰で判断するのが僕の仕事(まさみ)

──そんなふたりが一緒にやるにあたって、やりたい音楽のすり合わせはしたんですか?

まさみ してないんですよね。

こうへい 自分の好きな音楽はあるんですけど……たとえば、めっちゃ細い人がタンクトップ着てたらちょっと違うというか。タンクトップは筋肉ある人が着たほうがもっとかっこいいじゃないですか。だから、自分のやる音楽はこれだからっていうこだわりはそんなになかったですね。

まさみ マッチョなのが大事だよねってこと?

こうへい 違う違う(笑)。自分の曲が人だとして、その人を伝えやすくするためには、古着が好きだからといって何でもかんでも古着を着せればいいわけじゃないし……。

──伝えたいことに合う音にしてあげることが大事で、そのためなら自分の趣味は横に置いたっていいという。

こうへい はい、そうです。

まさみ さすがライターさんだ!

──まさみさんのもともと好きな音楽と今の音楽性は?

まさみ 近いです。曲を世に広めたりリスナーに「いいな」と思ってもらうための、いわゆるプロモーションは、どちらかといえばこうへいくんより俺の仕事な気がしていて。制作段階から、もう少しこうしたほうが伝わるんじゃない?とか、こっちのほうが俺はわかりやすいよという話はするから、好きな音楽を俺はやれてますね。

──そういう役割分担ができるのもバンドの強みですけど、こうへいさんがバンドで音楽をやりたかった要因ってどこにあったんですか?

こうへい ギターの音も、歪みって要は汚れじゃないですか。けどそれが良さというか。コーヒーでもビールでもそうだけど、苦くても良さがわかったらすごく美味しい。ギターがかっこいいと思う人なら、自分の言いたいことを表現しやすいし、理解してくれる人が多い気がして。他の方向からやったとしたら、自分の肩書きによって違う伝え方をしなきゃいけない状況にもなりかねないというか。バンドがいちばん歌詞を伝えやすい感覚があったんですよね。

──バンドの精神性に惹かれたというよりも、伝えたいことのためにバンドサウンドであることがまず第一優先だったんですね。活動をスタートさせてからはわりとトントン拍子で評価を得てきたわけですが、それはある程度想定できてました?

まさみ 僕的には全然想定内です。こうへいくんがいろいろ作ってくる中から、世に出したら評価してくれる人がいるであろうものを俯瞰で判断するのが僕の仕事だとも思ってるんで、そういうものを世間に届けてるつもりです。


自分の曲はよく読めばわりと同じというか。伝えたいことは全部、誰かにこうしてあげたい、こうしてあげたほうがいいんじゃないか?って考えること(こうへい)

──その中でも“犬とバカ猫”のバイラルヒットは相当大きかったと思うんですが、もともとはどういう立ち位置でできた曲なんですか。

こうへい 自分のできなかったことがすごく歌詞に出ていて、AメロやBメロには自分の後悔だったり、相手に伝えられなかったことが入ってて……なんて言ったらいいんだろうな。誰かを好きになった時にその人の理想があって、やっぱりかっこよくいてほしい、可愛くいてほしいとか。でもそれって自分が思い描くその人であって、本当にそういうことをしてくれるかは全然違う話で。でも目がハートになった状態で相手に尽くしすぎてしまうと、自分の思いをどんどん当てちゃってすれ違いが起きちゃったり、別れちゃうこともあると思うんですよ。自分も、作った曲に「こっちのほうがいいと思うんだよね」って言われると多少はムッとはなるわけですよ。でもそれは曲をよくしようと思って言ってくれてることだし、そのいい塩梅を見つけるために言葉があるわけだし……元の話って何だっけ?

まさみ この曲はこうへいくんの中でどういう立ち位置なの?っていう話。

こうへい 相手に伝えたい、もっとこうしてあげればよかったなっていう気持ちがでかいですね。

まさみ おお、結構短くまとまったね(笑)。

──それって、それまで書いてきたテーマと何かが違いました?

こうへい いや、特には。自分の曲はよく読めばわりと同じというか。伝えたいことは全部、誰かにこうしてあげたい、こうしてあげたほうがいいんじゃないか?って考えることなんですよね。セカンドバッカーの名前の由来もそうですけど、相手にとって自分がいちばんに愛されてない、二番目だったとしてもその人に対して何かできることはないか?って考えるのが愛なんじゃないかっていう。


まさみ 僕はこの曲はサビの頭がわかりづらいなと思ってて。《不意に目配せ今はねダメだね》ってパッと言われても「ん?」「どういうこと?」みたいになるじゃないですか。意味がわからないわけじゃないけどあまり理解できない歌詞がこうへいくんっぽいし、引っかかるところが逆にいいなって。そういうフレーズがあることでキャッチーだけどキャッチーじゃないのがいいな、なんとなくみんなが気になる曲になりそうだというのはデモを聴いて最初に思ったので、EPの中から最初にTikTokで使うのをこの曲にしました。


──それにビートがごくシンプルで、だからといって他の楽器で隙間を埋めることもしていない。そのぶん言葉数が多めであることやそこに書かれた内容が際立つバランスだと思います。そういうタイプの曲がバズったことは、以降の曲作りに何か影響しました?

こうへい あんまり関係ないかもしれないですね。生活もそんな劇的に変わるわけでもなく。でもそこでプレッシャーをそんなに感じないのは、周りの人がすごく優秀なんだと思います。僕は喋るのが苦手だし、曲を作ること以外は本当に何もできないんですけど、その余裕を作ってもらえるし。どこのステージに立ちたいとか何万回再生いきたいとか、そういうのを気にし始めたらもう、どこかで自分を苦しめるじゃないけど……動画をやってた時もそういう瞬間がなかったわけじゃないし。目標も作らずただ生活してる中で、ふとした瞬間をどういうふうに長い文章で書くのかをずっと考えられているので。

まさみ 僕はプレッシャーですねえ(笑)。“犬とバカ猫”は結構自分の力技で流行ったから、次の曲でもリスナーはそういうのを期待してるだろうけど、自分もここまでのバズになるとは思ってなかったので。あんまりバンドマンにはいないかもしれないですけど、次はどうすれば伸びるのかな?っていうプロモーション案がプレッシャーです。

──他のことをやってうまくいっても、そのサイクルを一生やり続けられるのか?っていう悩みはありますよね。

まさみ そうなんですよ! めっちゃキツいじゃないですか(笑)。と思いつつも、俺は結構好きなんですよ。動画もバンドも一緒で、ずっと聴いてくれる人ってすごく少ないと思うし、ずっと興味関心を持ってもらえるような人間でありバンドになっていけるまでは、俺が頑張らないとっていうのはありますね。

恋愛ソングって広いイメージだったけど、その中でも特定の題材に刺した曲を書けるのがすごくいい(まさみ)

──という“犬とバカ猫”以降、最初の新曲が“喧嘩するほど”ですが、この曲はどういう出発点でしたか?

こうへい 誰かが喧嘩するのを結構見た年でもあって、それが無意識にこの曲になったのかなと思います。自分は人にものを言ったりぶつかるのが苦手で喧嘩もしたくないけど、お互いを思って言ったことがすれ違って喧嘩になったとしても、思いそのものは変わらないし誰にも取られないじゃないですか。そこをわかった喧嘩なら、別に悪いものじゃないと思うんですよね。喧嘩するほど仲がいいじゃないけど、誰にも取られない思いが残るような喧嘩を曲にしたくて。

──それが倦怠期のカップルや浮気性の相手という舞台設定になったのは?

こうへい 友達と「浮気って何だろう」「どこまでが浮気だろう」っていう話になった時に……僕はどういう行為をしたらとかじゃなく、今いちばん時間を使いたかったり考える時間を割く相手、愛したい人が変わらなければ、別に浮気じゃないんじゃないかなって思ったんですよ。……もちろん嫌は嫌ですよ? 何やってんだよ!とはなるけど、「もう無理だ、別れよう」とはならずに、また一緒に頑張ろうって言える自分でありたいというのはすごくあって。

──その、ひとまずは怒るしヤケになったりもするニュアンスが、とてもポップに出力されてますよね。そこがキャッチーさに繋がってるとも思うし、語呂とか韻、言葉遊びもよく練られていて。

まさみ 喧嘩って恋愛ソングの一部でしか出てこないと思ってたんですけど、喧嘩だけを題材にしてこれだけの曲を書けるんだって思いました。喧嘩って喜怒哀楽の怒だっていうのがすごくわかりやすく、狭いところにスポッとハマってる曲で。恋愛ソングって広いイメージだったけど、その中でも特定の題材に刺した曲を書けるのがすごくいいなと思いました。


──共感を得られる幅を広く設定すればするほど、何かを言ってそうで何も言ってないみたいなことになるけど、この曲はその逆をちゃんと攻めきれてると思いました。サウンド面についてはどういうイメージで組み立てました?

こうへい サウンドももう、喧嘩です。グチャグチャで歪みゴリゴリの。

──その中でBメロだけリバーブがかかっていたり、ディテールにもこだわっていて。

こうへい やっぱりどこか寂しさも出てくるところなので、ここは優しく。相手を許せなくて怒ってるわけですけど、それに対する悔しさとか寂しさが出ちゃう惨めさみたいなものが、ギターのサウンドにも出てたら嬉しいなと思います。

まさみ この曲も言葉がすごく詰まってるので、ドラムはできるだけシンプルに作りました。“犬とバカ猫”と似たフレーズですけど、一緒にしようというよりこれ以外あんまりないんですよね、歌もギターも邪魔しちゃうから。ドラムをバカスカ叩くのは好きですけど、バカスカしてる曲を聴くのは好きじゃないんですよ。

──セカンドバッカーのサウンドにおける黄金パターンみたいなものができつつあるのかもしれないですね。

まさみ 自分の中にそれはあるかもしれない。ライブはともかく、音源に関してはいちばん聴きやすい形がいいかなと思ってます。


──精神面やプレイヤーとしての考え方、出るところ引くところまで、とても対照的なのがいいコンビだと思います。今年はツアーもあり、フェス出演も含めてより忙しくなりそうですが、どんな一年にしたいですか?

こうへい 次のツアーはワンマンが多いので、そうなるとライブの感じも全然違ってくるじゃないですか。自分たちで1時間半なりを埋めるとなった時に、見せ方や演奏の部分でより成長できる一年になったらいいなと思います。

まさみ 僕は、長く続くバンドは人間性が見えるバンドだと思ってるので、今年はこうへいくんの人間性がもうちょっとわかりやすく出るような、観たお客さんに「こうへいくんってこういう人なんだな」と伝わるような一年になってほしいと思います。今はまだ「めっちゃ変なボーカルやなぁ」で終わっちゃうところを、みんなが理解できるように。型にははめないですけど、わかりやすくできたら、もうちょっと……売れるんじゃないかと思っております(笑)。


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●リリース情報

『喧嘩するほど』

1月21日(水)配信

●ライブ情報

セカンドバッカー 3周年記念LIVE「乾杯を祝して」


●ツアー情報

セカンドバッカー 全国ツアー2026「あの時こうしておけばよかった」



提供:セカンドバッカー
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部