インタビュー=田中大 撮影=ハタサトシ
──大阪で始動したバンドですね。雰囲気は変わってるのに「らしさ」は変わらない。その理由は航平の歌い方にあるんじゃないかなと(まっきい)
惣田 はい。大学時代にサークルでやっていたバンドが終わった時、僕はまだ続けたいと思っていて。前のベースと一緒にメンバーを集めて結成したのがEVE OF THE LAINです。当時の大阪ではかっこいいギターロックが流行ってて、「バンドをやるからにはかっこよくなきゃいけない」みたいなのがあったんです。最初の頃はそういうのをやろうと思ってたんですけど、コロナ禍が明けてから考え方が変わりました。お客さんも声を出せるようになった中、お客さんと一緒に何かをやり合えるライブをやりたいなと。それが今の感じに繋がっています。
──オリジナルメンバーは、航平さんだけですよね?
惣田 そうです。今の4人になる過程で最初にメンバーになったのが大旗でした。昔のドラムの知人で、最初はサポートだったんです。大旗はギターはずっと弾いていたんですけど、バンドをやったことはなかったんですよね。そのあとにまっきいと大河くんが入ったのが、ほぼ同時期。まっきいはイブオブ初期の頃から友だちで、対バンをしたり、飲みに行ったりもする仲でしたね。大河くんとの出会いは、一緒に遊び行ったのが最初だったよね?
齋藤 うん。知人の紹介で。
惣田 大河くんは、僕が働いてた梅田の居酒屋に飲みに来たりもしていて。
齋藤 中華系の店で、航平の作った小籠包みたいなのを食べてました。
──小籠包が美味しかったので加入を決めたんでしょうか?
齋藤 そうです!
まっきい だったらその居酒屋の店員になれよ!(笑)
惣田 大河くん、その居酒屋に来た時に曲のことを褒めてくれたんですよ。それがサポートをお願いすることに繋がって、加入に至りました。1回目のサポートの時に「俺はEVE OF THE LAINに入りたい」って言ってましたね。そういう感じでこの4人が揃ったのが2023年の10月でした。
──大旗さんは、バンドをやったことがなかったんですか?
岩根 そうなんです。だからバンド活動に関するすべてが新鮮でした。「えっ? グッズ? 物販やるの? 精算って? 打ち上げってなんや?」とか。
──まっきいさんは、加入前にイブオブの音楽性についてどのようなことを感じていました?
まっきい 僕は初期からこのバンドのことを知っていたんですけど、アー写が黒っぽくてヴィジュアル系みたいな感じだったので、その印象が強かったです。曲は昔からずっとよかったですね。
──大河さんのイブオブの印象は?
齋藤 僕が出会った頃は、航平が曲の幅を広げようとしていた時期だったと思うんです。当時は「こんな楽しい曲もあるし、こんな踊れるような曲やメッセージ性の曲もあるんや?」と思いました。かっこいい、おしゃれ、ノリがいいとか、すごく幅広くて、そこに違和感がないという印象でした。
まっきい 確かにそうやな。幅広いけどイブオブらしさみたいなのはずっとあるから。
齋藤 それってなかなかできることじゃないと思って。
岩根 いろいろやっても「音楽性が変わったな」という感じがない。
まっきい そう! 雰囲気は変わってるのに、「らしさ」は変わらない。その理由は、僕が思うにですけど、航平の歌い方にあるんじゃないかなと思っていて。高音に行く時のがなり方って言うんですかね? 声の出し方はずっと一貫性があって、それが幅広い中でも変わらない一貫性に繋がってる気がします。
──声の歪ませ方が独特ですよね? ずっと歪ませるのではなく、一瞬歪ませるので。パワーを醸し出すために声を歪ませ続けるのではなくて、ニュアンスをつけるための歪ませ方という感じでしょうか?
惣田 そうなんだと思います。
──ギター奏法で喩えると、ちょっとしたポイントで繰り出すチョーキングビブラートみたいな感じというか。
岩根 まさにその感じですよね。
──航平さんのこのボーカルスタイルは、どのようにして確立されていったんですか?
惣田 中学生くらいの頃にONE OK ROCKの“完全感覚Dreamer”をカラオケで歌えるようになりたくて。でも、当時の僕は歌が下手くそだったので、親にどれだけ「うるさい!」と言われようと、近所にどれだけ聞こえようと、ひたすら練習してたんです。それがうまいこと自分の歌に取り込めて、今の感じになったのかなと思います。
齋藤 僕は航平の書く歌詞も、幅広い曲がある中でも変わらないイブオブの一貫性に繋がってるのかなと思います。もがいてる曲も、恋愛の曲も、表現の仕方の「らしさ」があるので。なんかもがいてるっていうか、泥くささがあるんですよ。弱いのに必死に進んでる感じも「らしさ」だと思います。
──昨年辺りから、活動エリアが広がりつつありますね。「負けたくないな」という気持ちがずっとあるんですよね。逆境を越えていく決意表明も込めて、この曲を作りました(惣田)
惣田 そうですね。去年、名古屋と東京で初めてワンマンライブをやることができました。関西だけじゃなくて名古屋や東京にも自分たちの音楽を求めてくれる人がいるのを感じて、すごく嬉しかったです。もっといろんな場所に行きたいですね。新しい曲も出しますし。
──新曲の“HEART BEAT”は、少しずつ前に進んできたEVE OF THE LAINの姿が反映されているように感じたのですが。
惣田 その通りだと思います。反骨精神を軸にしてる曲なんです。これまでバンドをやってきて、とんとん拍子で行ったことは全くなくて。俺らは俺らで頑張ってるけど、同世代のバンドが先にひとつ先のステージに進んだりするのを見るとめちゃくちゃ悔しいし、「負けたくないな」という気持ちがずっとあるんですよね。音楽に勝ち負けはないですけど、「負けたくない」というのはやっぱりあって。あと、仲間のバンドがやめたりすると「なんでやめるんだよ」という悔しさがありつつも、彼らの気持ちを背負って進みたい気持ちも出てくるんです。逆境を越えていく決意表明も込めて、この曲を作りました。
齋藤 この曲は、僕がさっき言った「らしさ」が出まくってますね。たとえば《ポケットに隠したその手に握る夢が/いつかの空を切り裂くんだ》は、ポケットに隠してたり、手に握ってたりすることが弱さを感じさせつつも、夢に向かってがむしゃらにもがいてるのも伝わってきて。そこが「イブオブらしさ」だと思います。
まっきい めっちゃかっこいい曲でもありますよね。イブオブ初期の「かっこいい」に振り切ってる曲に近い印象があります。ライブで弾いたらめっちゃ楽しいだろうなって思います。
──4人の呼吸を合わせながら入れる演奏のタメやキメが「バンド」という感じがします。
岩根 自分らならではのそういうニュアンスがすごく出てますね。譜面通りに弾くのは魂がこもってない感じになりますけど、人間4人が集まったことによる魂のぶつかり合いになってるというか。譜面では表せない強弱があると思います。
惣田 こういうのは、曲を作ってから4人でスタジオに入って編曲する中で出てくるんです。
齋藤 疾走感があるサビの中でキメが入るんですけど、これがかっこいいなと。ブレイクを入れるのが斬新だと思ってます。
──歌詞に関しては、リズミカルになるように子音をうまく活かすようにしていますよね? たとえば《これっぽっちしかない時間の中で》の「っ」とか。
惣田 はい。歌ってても聴いてても気持ちいいというのは大切にしてます。
──《青が曇ってって霧がかっちゃって/どうしちゃってんだ》とか、「っ」の畳みかけじゃないですか。
惣田 こういうのが作れると、「これや!」ってなります(笑)。
──ギターリフも気に入ってるんじゃないですか?
岩根 はい。これもかっこいいです。みんなでいい感じに肉付けできたと思います。
惣田 曲をひとりで作ってる時間よりも、みんなで音を出していくうちに輪郭が見えてくる過程が楽しいです。デモの段階で歌詞をつけるより、みんなで肉付けをしてからのほうが、自分の魂がより乗った歌詞が書けるんですよね。この4人になってそういうことができるのが、いちばん嬉しいです。まじで感謝です。
まっきい やばっ! いきなり感謝されるとハズすぎる(笑)。
──“HEART BEAT”が生まれた背景に関するお話の中で「逆境」という言葉が出ましたが、どんなことを経験してきたんですか?“HEART BEAT”と同じくらい反骨心とヘイトがありますね。「誰かに罵倒されたとしても負けないでほしい」という僕のメッセージも込めています(惣田)
惣田 一時期、「この感じでバンドを続ける人、あんまおらんぞ」という状況がずっと続いていて。大旗が正規メンバーになるかならないかの時期は、一瞬メンバーが僕ひとりになった時もありましたし。僕と大旗だけで活動していた時期もあったので、「遠征、ライブ、グッズ作りだったり、ふたりだけでどうやってたっけ?」と振り返って思ったりもします。
岩根 MV撮影も自分たちでやりましたからね。
惣田 そうそう。正直どうやってたのか覚えてないくらい、必死な日々の連続だったんです。それでも大旗は苦しさを出さず、続けてくれたのが嬉しかったです。
岩根 もしかしたら僕がバンドをやったことがあって、イブオブがふたつめとかのバンドやったりしたらやめてたのかもしれない。お金のことも大きかったし。プラスになることがなかったので。
まっきい そういう中でもふたりで曲を作ってた?
岩根 うん。レコーディング費用も支払ったりしてたから。
惣田 あの状況で、まじどうやってたんやろう? でも、バンドを止めたくなかったので、活動休止は1回もしていないんですよね。
齋藤 それはすごいこと。
惣田 MV、ふたりで作ったな?
岩根 そうやった。
まっきい どの曲?
惣田 “朝焼け”。
齋藤 あれか!
岩根 あのMVには思い入れがある。
惣田 僕が編集をしてみたんですけど。あのMV、まっきいと大河にずっとバカにされてるんですよ。
齋藤 バカにしてない!
まっきい 小バカにしてるだけです(笑)。
岩根 いちばんたちが悪い!(笑)
惣田 大旗からすれば、曲と映像にあの頃の苦労が全部詰まってるから。
岩根 あのMV観たら泣いちゃう。
惣田 あれは、当時の俺たちにしか作れなかった。
まっきい そういうことができてたのはすごいと思うよ。
──絵に描いたようなインディーズバンドの過程を経てきていますね。大型タイアップとかで一気に跳ねて今に至っているわけでもないですし。
惣田 1回も跳んでないEVE OF THE LAINです(笑)。そういう経験をしてきたから、今でも自分たちでできることはやってます。今はスタッフさんとかが力を貸してくれるようになったので、よりいいものができるようになりました。
──今作の2曲目の“BURNING”も、様々なものを乗り越えてきたEVE OF THE LAINが反映されているように感じます。
惣田 “BURNING”も“HEART BEAT”と同じくらい反骨心とヘイトがありますね。「誰かに罵倒されたとしても負けないでほしい」という僕のメッセージも込めています。自分に対しても歌ってますし、聴いてくれる人にも「大丈夫だよ」と伝えたいですね。
──“BURNING”の曲に関しては、大旗さんと航平さんの共作ですが、どのように形にしていったんですか?
惣田 最初に大旗が曲の種を持ってきてくれて、そこからみんなで肉付けをして、そのあとに僕がメロディと歌詞をつけたんです。
岩根 最初、デモに「王者の行進」というタイトルをつけてたんです。大きい会場で1曲目にやって、その場を制するような曲をイメージしていて。スローテンポで、重ための曲にしたいと思って作りましたね。
惣田 強そうな曲を作りたいというイメージが4人全員一致していたので、そこを目指していきました。
まっきい デモを聴いてすぐに「こういうことをやりたいんやろうな」というのがわかりました。でも、僕があんまり通ってきてなかった音楽の感じだったので、とりあえずできることを全部やっていきました。たくさんのパターンを試す中、いちばんこの曲に合う「行進感」みたいなのを探すやり方でしたね。
齋藤 まっきいとかなり話し合いました。シンプルであると同時に最適なフレーズをお互いに探したので。
岩根 ギターソロも、超いい音で弾けました。気に入ってます。
惣田 今後も曲を一緒に作ることが増えていくと思います。僕にはない引き出しを持っているのが大旗なので。
──この曲、ボーカルパートを重ねていますよね? そのことによってシンガロングを自ずと誘う響きになっているように思います。
惣田 ライブでめちゃくちゃ拳を突き上げて歌ってほしいですね。「俺たちはここに立ってるから、おまえらも一緒に行こうぜ!」というような強い意志を持ってる曲です。
──イブオブは癖の強いラブソングでも定評がありますが、“イタイヨ”も独特なムードですね。いろんな場所にEVE OF THE LAINという名前と音楽を食い込ませて、「なんだ、あのおもろいバンドは⁉」と思ってもらいたいです(惣田)
惣田 歌詞は女性目線で描いています。でも、描かれているのはダメ男のことなので、今まで出してた曲と変わらないんですけど(笑)。強さと弱さが隣り合ってる感情を描きたかったんです。強がってる人の弱さは美しいと僕は感じるので。“イタイヨ”は、「離れてしまって辛くて悲しくて心が痛い」だけでなく「そばにいたいよ」という気持ちもあると思うんですよね。強がっている中にある、そういう感情を描きたかったんです。あと、女性目線の曲は今まであんまり作ってこなかったので、挑戦してみたかったというのもあります。
齋藤 この女性、相当怒ってますよね。執拗にいろんなことを言ってるので。
まっきい 「こういうダメ男っている」っていう共感もあるやろうなあ。
──《これから貴方の恋なんて/きっと上手くはいかないでしょう/可愛い天使がずっと先も後悔させるから》とか、なかなかものすごい呪いの言葉ですよ。
惣田 こういう強い言葉を天使が言ってる皮肉というか。そういうパラドクスみたいなこともやってみたかったんです。
──“ビターハニー”“BANG!BANG!BANG!”“ワンダーランド”とか、イブオブ名物の恋がうまくいってない男シリーズの新境地でもあると思います。
惣田 俺らのラブソング、結局誰もうまくいってないんですよね。
岩根 そろそろうまくいってほしいけどな(笑)。
──イブオブは、今作の3曲で2026年の活動に弾みをつけていくことになりますが、現時点で見据えている目標はありますか?
惣田 いろんなところでライブをやりたいですね。昨年は「イナズマロック フェス」に出させていただいたんですけど、もっともっといろんなフェスやイベントに出たいです。とにかくいろんな場所にEVE OF THE LAINという名前と音楽を食い込ませて、「なんだ、あのおもろいバンドは⁉」と思ってもらいたいです。
齋藤 バンドとしてもいろんな経験をしていきたいですし、いろんな人に聴いてもらいたいですからね。あと、こうしてバンドをやってるのを楽しみたいという気持ちも強いです。
まっきい そうやな。ワンマンもいっぱいやっていきたいし。去年のワンマンは4回?
惣田 うん。
まっきい ワンマンは僕たちのことが好きな人たちのために僕たちが曲をやる機会ですけど、それがめっちゃ楽しくて。そういう機会も増やしながら、いろんなイベントとかにも出られるようになっていきたいです。
──ワンマンに関しては、次のツアーファイナルは地元・大阪ですね。
岩根 はい。大阪はやっぱり安心感とホーム感がありますね。
惣田 心強い地元があるので、そこからもっと輪を広げていきたいです。
──ファイナル以外は対バン形式ですが、どのバンドもお馴染みの仲間たちですか?
惣田 そうですね。神戸で対バンするCloudyとはちゃんとしたライブをするのは初めてですけど、これを機に音楽で仲良くなりたいです。それ以外の場所はマブダチを呼んだという感じです。このツアーを発表した時点では今回のリリースについて何も言ってなかったんですけど、実はリリースツアーだったという(笑)。3月16日の東京を皮切りに全国9ヶ所を回るので、地元に近いところプラス、もう1ヶ所くらい観てもらえたら嬉しいよね?
まっきい うん。違う場所でも観てほしい。
惣田 金沢は僕の地元なので、旅行も兼ねていかがかなと(笑)。そんなことを思ったりもしています。
●リリース情報
『HEART BEAT』
<収録曲>●ツアー情報
01.HEART BEAT
02.BURNING
03.イタイヨ
「EVE OF THE LAIN “ Shout Your LOVE TOUR “」
3月16日(月)東京・渋谷Spotify O-Crest w) Arakezuri
3月25日(水)兵庫・music zoo KOBE 太陽と虎 w) Cloudy
3月27日(金)愛知・名古屋 ell.FITS ALL w) リアクション・ザ・ブッタ
3月28日(土)石川・金沢vanvanV4 w) 終活クラブ / Gum-9
4月4日(土) 宮城・仙台 enn 3rd w) DeNeel / 猫背のネイビーセゾン
4月11日(土)香川・高松TOONICE w) ORCALAND / Broken my toybox
4月12日(日)広島・ALMIGHTY w) ORCALAND / Broken my toybox
4月15日(水)福岡・LIVE HOUSE Queblick w) Mercy Woodpecker / 夕方と猫
4月25日(土)大阪・心斎橋ANIMA <ONE MAN SHOW>
チケット:前売一般¥4,000 / 前売U-18 ¥3,000(別途ドリンク代)
提供:EVE OF THE LAIN
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部