TOWER RECORDS 35th Anniversary Bowline2014@さいたまスーパーアリーナ

「結び目の王(King of knots)」とも呼ばれるという『Bowline』の名を冠した、タワーレコード主催のイヴェント。開催ごとに1組のアーティストにキュレーターを務めてもらい、テーマを打ち出して出演ラインナップを決定するという方針も特徴的だ。昨年のMAN WITH A MISSION、今春のSiMによるキュレーション開催を経て、日本でのタワーレコード設立35周年を祝う趣旨も込められた今回は、10-FEETによる「ボーダーレス」というコンセプトのキュレーションである。さいたまスーパーアリーナを見事にソールドアウト、13000人の来場を記録した一日を、駆け足でレポートしたい。

locofrank(pic by Daisuke Suzuki/Nobuyuki Kobayashi)
locofrank(pic by Daisuke Suzuki/Nobuyuki Kobayashi)
開演時間の午前11:30。タワーレコード・スタッフが次々に「Bowline!」コールを届けるオープニング・ムービーを経ると、ステージに立つのはlocofrankだ。結成から16年、もちろん勢いだけではないけれど、やはり勢いが凄まじい3ピース男気パンクに、朝っぱらから胸を焦がす。“START”を皮切りに、「10-FEETが、なんで俺らを最初にしたか分かるかい? 最初から飛ばしてこうってこと!」と言い放ってすぐさま“Before It's Too Late”に向かってゆく木下正行(Vo・B)である。“share”に続いてはギラつくギター・サウンドと歌メロで視界を切り開く“voyage”“It's OVER”とほぼノンストップで楽曲を繋ぎ、震災以降の活動を踏まえながら「不謹慎だったかも知らん。でも、そこには少なからず、音楽を待ってくれてる人がいました」と東北復興支援ブースへの参加も呼び掛ける。そして最後には「助けてくれる仲間がおる。自分がどうしようもないと思ったら、頼ったらええねん!」と“ONE”が「Bowline」のテーマをがっちり受け止めるという、素晴らしいステージであった。

FIRE BALL(pic by HayachiN)
FIRE BALL(pic by HayachiN)
転換中には、10-FEETと出演アーティストによるムービー「ボウライン大作戦(仮)」が映し出され(『Bowline 2014』公式サイトでの公開は11/2まで)、2組目に登場したのはFIRE BALLだ。生バンド編成の凄腕リディムをバックに、4DJの高速トースティングが火を吹きながらリレーする。「日本はまだまだこんなもんじゃない! レコードショップが世界で一番多くあるのが日本なんですよ、皆さん!」と鼓舞する“BAD JAPANESE”や悪ノリ満載なアドリブも絡め、ほとんど1コーラスずつといった感じでメドレーする猛スピードのライヴ感が強烈だ。“Reggae Bus”に「乗車券は愛です!」とオーディエンスを乗せ、ブロンディ“The Tide Is High”やジミー・クリフ“YOU CAN GET IT IT YOU REALLY WANT”もカヴァーしながら賑々しくステージが進む。クライマックスにはFIRE BALLの最新テーマである“One Link”で人差し指を掲げながらエモーショナルに呼び掛け、最後には灼熱のタオル回しが場内に広がるのだった。

[Alexandros](pic by Daisuke Suzuki/Nobuyuki Kobayashi)
[Alexandros](pic by Daisuke Suzuki/Nobuyuki Kobayashi)
3番手として登場したのは[Alexandros]。びっくりするぐらいクリアなサウンドの高機動ロックンロールが、大型アリーナを丸ごと揺さぶってしてしまう“Starrrrrrr”の立ち上がりが何とも痛快だ。超スリリングなコンビネーションで叩き付ける“Cat 2”の最中、白井眞輝(G)は昂るままに「タワーレコード、35周年だってよーっ!!」と雄叫びを上げる。一方、10-FEETに感謝の言葉を伝える川上洋平(Vo・G)は「近いうちに、スーパーアリーナでワンマンをやりたいと思います」と自信の漲る言葉も投げ掛け、今度は“Forever Young”の歌心でがっつりと場内を掌握してみせるのだった。大きなステージをハンド・マイクで練り歩きながら披露する“Kick&Spin”を経て、タワーレコード渋谷店2F「TOWER CAFE」から提供されたケータリングを食べ過ぎた、と磯部寛之(B・Cho)が笑いを誘うと、今回のステージを堂々締め括るのは目下の最新シングル曲“Adventure”だ。スケールの大きなロックでロマンを押し広げる、そんなステージだった。

氣志團(pic by HayachiN)
氣志團(pic by HayachiN)
おなじみのSE、COMPLEX“BE MY BABY”で登場した氣志團。“Baby Baby Baby”でさっそく團長・綾小路翔(Vo・G)が狂おしさ全開の節回しを届けると、トミーこと西園寺瞳(G)は渾身のマシンガン・カッティングをぶっ放す。“鉄のハート”では現在ドラマーを務めている叶 亜樹良の熱いソロも挟み込み、“愛 羅 武 勇”の友愛が「Bowline」のメッセージと共振するという胸熱の展開を見せた。翔やんは「オーライ! Bowline!! 戸惑ってるね。伝わってるよ。曲知らないけど、取り敢えず拳上げとくかって優しさも伝わってるよ」と自虐ネタで笑わせ、フリをレクチャーしながら“喧嘩上等”を披露する。そのまま“One Night Carnival”の華やかなダンスが、アリーナの視界一杯に広がる光景は何とも壮観だ。氣志團版“MY WAY”までは最高のバンド・パフォーマンスを見せてくれたのだが、「みんなゴメン! 知らない曲ばっかりやって!」とEXILE版“Choo Choo TRAIN”をカラオケで歌い踊り、そのまま“Rising Sun”に傾れ込もうとするところを、スタッフに取り押さえられて強制退場。氣志團流エンターテインメントをフェスの短い持ち時間の中でも魅せる、さすがのアクトだった。

ACIDMAN(pic by Daisuke Suzuki/Nobuyuki Kobayashi)
ACIDMAN(pic by Daisuke Suzuki/Nobuyuki Kobayashi)
1日の後半戦に差し掛かったところで、ステージに立つのは前回のSiMキュレーション開催に引き続き出演となるACIDMANだ。「ボウライン大作戦(仮)」では10-FEETと面白可笑しく絡んでいたが、お馴染み“最後の国(introduction)”の荘厳なSEに合わせてオーディエンスが一斉に打ち鳴らすクラップ、そして“造花が笑う”のエモーショナルな爆走と、真摯な思いが溢れ出すパフォーマンスだ。大木伸夫(Vo・G)は10-FEETとタワーレコードに向けた感謝を織り交ぜつつ、「俺たちは埼玉出身なんですが、地元でこんな素晴らしいフェスが出来て幸せです」「デビュー当時からやっている曲を聴いてください」と告げて“赤橙”を披露していった。そこからACIDMANの現在地へと一気に時空を繋ぐ“Stay in my hand”、重厚な3ピース・アンサンブルを追い越さんばかりの歌声で届けられる“新世界”、更には“ある証明”と繰り出し、11/19にリリースされるニュー・アルバム『有と無』について「もう、メジャー・デビューして10枚目なんですよ」と語る大木。最後には「ロック・バラードは好きですか?」と、美しい新作曲“世界が終わる夜”が、オーディエンスを包み込んでいった。

エレファントカシマシ(pic by HayachiN)
エレファントカシマシ(pic by HayachiN)
さて、10-FEETの熱烈なラヴ・コールに応えての出演となった、エレファントカシマシ。今回はヒラマミキオ(G)をサポートに迎えた5人編成で、初っ端“ズレてる方がいい”からトリプル・ギターの豪快な爆音をぶん回す。「今日は呼んでくれてありがとう、エブリバディ。じゃあ、俺たちの一番新しい曲、聴いてください。生きてる、っていう歌です。全部そうですけど」と宮本浩次(Vo・G)が告げ、ハンド・マイクでオーディエンスを見据えながら披露されるのは“Destiny”だ。“悲しみの果て”や“今宵の月のように”、“俺たちの明日”という歴代のヒット曲もさることながら、宮本が石森敏行(G)をステージ前方に突き飛ばしてプレイを見せるよう促す“デーデ”や、自らの尻を叩きながらの“化ケモノ青年”、そして全力投球スポークンワードだけに留まらずスキャットで石くんのギターとバトルを繰り広げる“ガストロンジャー”といった、尖った歌詞がバシバシと突き刺さる名チューンの数々がすこぶるかっこいい。汗まみれのグルーヴで放たれる“ファイティングマン”に至るまで、片時も気を抜く暇を与えない激烈ショウであった。

サンボマスター(pic by Daisuke Suzuki/Nobuyuki Kobayashi)
サンボマスター(pic by Daisuke Suzuki/Nobuyuki Kobayashi)
続いては、京都出身の10-FEETに京都生まれの「天下一品」ラーメンをプレゼントするという「ボウライン大作戦(仮)」も最高だったサンボマスター。彼らも「Bowline」連続出演だが、開口一番「10-FEETの何が気に入らないってなあ、あそこのTAKUMAくんが、俺の何倍もハンサムだってことなんだよ!」と告げる山口隆(Vo・G)。「ハンサムぶってんじゃねえぞ、ハンサム禁止! ハンサム禁止!」と、とオーディエンスを巻き込むコールで(ここで言う「ハンサム」とは「素行が良い」という意味とのこと)“ミラクルをキミとおこしたいんです”に傾れ込む。ぶちまけるようなサウンドの“世界をかえさせておくれよ”では「おめえら踊らねえとな、ポイント2倍にしねえぞ!」とムチャクチャなことを言い放ち、「一方通行じゃ寂しい。愛してるって言ったら、どこかで自分も愛して欲しいと思ってんだ」と届けられる11/26リリースのニュー・シングル曲“愛してる愛して欲しい”は、その飾り気の無い真実が音楽の力で押し寄せて来るようなパフォーマンスになった。後半は“世界はそれを愛と呼ぶんだぜ”“できっこないを やらなくちゃ”“ロックンロール イズ ノットデッド”とアンセム群を連打。ドタメシャな演奏から滲み出る、甘く優しいソウルがアリーナを包んだ。

10-FEET(pic by HayachiN)
10-FEET(pic by HayachiN)
というわけで、いよいよ大トリ=キュレーター役の10-FEETである。「よいしょーっ!! いっくぞー、ハンサム禁止!!」と、いきなり繰り出される“RIVER”、続いてヘヴィな音塊をいとも容易く振り回しながらの“VIBES BY VIBES”“super stomper”という連打に、一日騒いだ疲れも吹き飛ばされてカチ上がる一面のオーディエンスである。TAKUMA(Vo・G)とNAOKI(Ba・Vo)とでヴォーカルをスイッチしながらの“JUNGLES”に続いては、FIRE BALLの4人を迎え入れて“STONE COLD BREAK feat. FIRE BALL”をライヴ再現するというスペシャルな一幕に沸いた。「今、戦争しとる国やったら、こんなふうに集まれへんから、みんないつも大変かも知れんけど、最低限、やれて良かったな。もしかしたら、どうしても来れなかった人もおるかも分からん」「嬉しいとか楽しいを伝える言葉とか、表情とか、親や友達にそういうことが出来なくなって、自分も何も感じなくなって、平和が当たり前になって。ライヴは、凄い奇跡みたいなことが起こるからな。俺らにとっては普通のギターで、普通のドラムで、普通のフレーズでも、毛穴が開いてウワァーってなって、昔つらかったこととか、これから起こる大変なこととか、そういうのと重なるといいな。重なるかなあ。重ならんかな。平和にボケた心を、溶かしてくれ!!」。そんなふうに思いを迸らせて、“蜃気楼”を歌うTAKUMAである。

10-FEET(pic by HayachiN)
3ピースのサウンドを鮮やかに伝えながらスタートした序盤から、10-FEETらしい激情が渦を巻く後半への流れも素晴らしいステージで、“1sec.”、“その向こうへ”とオーディエンスの熱い歌声も誘いながらのクライマックスは、すべてを受け止めながら歓喜に弾ける“goes on”だ。ここで3人は立ち去らずに、「ありがとうございました。アンコール始めます。言われんでもやるっていう、新しいシステムやねん」と告げるTAKUMA。ここで唐突にリボンキャノンが発射されてしまうというハプニングにも笑いながら、KOUICHI(Dr・Cho)がドラムを叩きつつ“Choo Choo TRAIN”や“TRUE LOVE”(藤井フミヤ)を歌い、TAKUMAとNAOKIがプレイで乗っかるという余りにも自由奔放な一幕が挟み込まれる。TAKUMAヴォーカルで改めて、昨年の『エレファントカシマシ カヴァーアルバム2 ~A Tribute To The Elephant Kashimashi~』にも収録された“今宵の月のように”カヴァーを届けると、さらに“2%”、最後には“CHERRY BLOSSOM”(ここであらためて盛大にリボンキャノンが発射)とプレイし、今回のステージは幕を下ろした。ボーダーレスに繋がる喜び、そして忘れがちな幸福の実感を呼び覚ます、そんな音楽に満たされた一日であった。(小池宏和)