Fear, and Loathing in Las Vegas×でんぱ組.inc@Zepp Tokyo

アルバム『PHASE 2』を引っさげたFear, and Loathing in Las Vegasの約3ヶ月に及ぶ全国ツアー。9/4新木場~11/24神戸の35公演(「“PHASE 2”Release Tour」)+12/6札幌~12/13福岡の4公演(「“PHASE 2”Release Tour Final Series」)=計39本、様々な音楽性を持つアーティストたちとの対バンが組まれている(ファイナルの大阪のみワンマンライヴ)。今回レポートする「“PHASE 2”Release Tour Final Series」のZepp Tokyo公演のゲストはでんぱ組.inc。異色の対バンではあるものの、2組が各々のパフォーマンスを堂々と行い、集まった観客たちもそれを貪欲に楽しむ、という健全かつ清々しいツーマンライヴだった(註:以下には、曲目および演出に関する詳細な記述があります。今後の公演に参加される予定でネタバレを回避したい方はツアー終了後にご覧いただければ幸いです)。

〈でんぱ組.inc〉
この日のでんぱ組.incはバンド編成での登場。「でんぱ組.inc、始まるよー!」という掛け声を合図にSEが止み、ギター/ベース/ドラムのサポートメンバー=でんでんバンドがスタンバイ。バンドがセッションをするなか、古川未鈴/相沢梨紗/夢眠ねむ/成瀬瑛美/最上もが/藤咲彩音が走って登場。1曲目“ちゅるりちゅるりら”の冒頭から上がる「オイ!オイ!」という力強い掛け声。観客の頭上ではクラウドサーファーが行き交い、色とりどりのペンライトが輝いている。ネイビー×ゴールドのセーラー服を着た6人はくるくるとフォーメーションを変えながら唄い踊り、会場を満たす熱をでんでんバンドの迫力ある演奏がさらに煽り立てるかのようだ。「Zepp Tokyoにお越しのみなさん、元気ですかー!」(相沢)、「でんぱ組もバンドで来ちゃいました!」(夢眠)、「ジャンルなんて関係ない!楽しんでいくぞー!」(最上)など次々と挨拶し、“VANDALISM”まではアッパーチューンを連続していく。“イツカ、ハルカカナタ”ではしっとりした曲調に乗って笑顔を振りまきながら観客へ手を振る姿が印象に残った。ストーリー性の強い振り付けが目にも楽しい“キラキラチューン”のあとにはMCへ。普段からラスベガスの楽曲を聴いているという最上の「光栄どころか恐れ多くてめちゃめちゃ緊張してます。一緒にライヴできると思ってなかったから嬉しいです!」という言葉をきっかけに歌詞を引用した寸劇がスタートし、新体操のリボンを持ち位置につく6人。そして「まだまだ盛り上がっていくぞー!」(相沢)と“でんでんぱっしょん”が始まったのだった。ハイスピードなビートを背に唄って踊ってリボンまで操る。息をつく間もないステージングを成し遂げる6人が放つ熱量と、それを受けて熱狂する観客の熱量が相乗効果を起こし上昇しまくる様子は圧巻の一言だった。そして最新シングルの表題曲“でんぱーりーナイト”が持つミュージカル的多幸感の下で大団円! アウェイどころか会場をしっかり盛り上げてくれたでんぱ組.inc。その姿はとても頼もしく見えた。

〈Fear, and Loathing in Las Vegas〉
転換時のBGMがブツッと途切れた瞬間に暗転。そして大歓声。レーザー光線が「Las Vegas」の文字を描き、その文字が、ステージ後方にゆっくりと上昇してきた幕の「Las Vegas」と重なる――期待に満ちた人々の昂揚感をさらに煽るような演出を経てメンバーが登場! So (Clean/Scream Vo.)/Minami (Scream Vo.&Keyboard)がフロアを指さしながら挑発気味に煽るなか、上空には波のようにたゆたうレーザーの光。“Are You Ready to Blast Off?”~“Rave-up Tonight”というアルバムの曲順に準ずる冒頭だ。「Zepp Tokyo始めるぞー!」「超最高の日にしようぜ!」「まだまだ小せぇぞ!」と何度も言葉を投げかけるSo。長いマイクのコードをしならせながら右へ左へ走り回るMinami。Sxun(Guitar)/Taiki (Guitar)/Kei(Bass)も盛んに動き回っていていつの間にか3人の配置が替わっていたりするし、Tomonori (Drums)が刻むビートはとてもパワフルだ。「でんぱ組のときみんなスゲー楽しそうで早くライヴしたかったです!あの光る棒はなくなっちゃったんですか?」というSxunのMC直後の“Swing It!!”ではサイリウムとタオルが観客たちの頭上で回され、この日ならではの光景が生まれたのだった。リアルに鳴らされる6人の骨太な音とプログラミングによる電子音が噛みあって生まれるアンビバレントなサウンド。1曲のなかにいくつもの要素を詰め込んだ多展開の楽曲。構成に関する高い偏差値と演奏に対する集中力がないと成り立たないそれらの音楽をしっかりと成立させながらも、バンドの衝動を前面に押し出し、大事にしている点がラスベガスの魅力のひとつである。だからものすごい情報量を与えられても聴き手は迷わずハイになれるし、それがライヴで鳴らされればハンドクラップにダイブに大合唱に……とフロアは興奮必至だ。
来年1月7日に発売のシングルの告知を挟み、その表題曲“Let Me Hear”も披露。Soの唄う旋律がロマンティックだったからだろうか、後ろで鳴る音が激しくてもテンポアップを重ねても切なさを感じる楽曲だった。バンドではなくても人々を楽しませるエンターテインメントをするという点が同じだと思ったからでんぱ組.incを呼んだと語るSxun。「観てて思ったけど結構アリですよね。どう思いますか?」と語りかけると観客たちは大きな歓声でそれに答えた。メンバーが物販に顔を出したり、Twitterへの投稿を欠かさずにしたり、その他様々なことをしながら「初心を忘れずに」というテーマで廻っているという今回のツアー。そのなかでたくさんの人の支えを実感したのだそう。携わった人々への感謝を述べたあと、「『こういうの面白いやろ!』っていうのをどんどんやっていきたいです。自分の楽しみたいように楽しんで、他の人の楽しみ方も尊重して、俺たちについてきてください」と心強い言葉を聞かせてくれた。そして「初心に帰る」ということで演奏された『PHASE 2』以前の楽曲=“Chase the Light!”“Love at First Sight”ではイントロで一際大きな歓声が。特に“Love at First Sight”終盤、Soが何度も「踊れー!」と叫ぶなか会場が大合唱に包まれた場面はこの日のハイライトのひとつだったに違いない。「みなさんに刺激をもらいました。でんぱ組のSEが鳴ったらワーッと声が上がってサイリウムが光って、本当にラスベガスのライヴかよって思ったけど(笑)、俺らのときも最初っから盛り上がってて」とSxun。そしてラストの“Stay as Who You Are”へ。熱気が充満する会場へ「最後だぞ、東京!全部出してK点超えようぜ!」とSoが呼びかけるまでもなくクラウドサーフが頻発、床も大きく揺れて大きな盛り上がりを見せたのだった。
フロアを指さしながら何度も「ありがとう!」と叫ぶSo。演奏を終えたメンバーの晴れやかな表情を見て、充実したツアーを廻れているんだろうなと改めて確信した。ツアーはこのあと、名古屋、福岡を経て、大阪まで続く!(蜂須賀ちなみ)

■セットリスト

〈でんぱ組.inc〉
01.ちゅるりちゅるりら
02.Future Diver
03.バリ3共和国
04.VANDALISM
05.イツカ、ハルカカナタ
06.キラキラチューン
07.でんでんぱっしょん
08.でんぱーりーナイト

〈Fear, and Loathing in Las Vegas〉
01.Are You Ready to Blast Off?
02.Rave-up Tonight
03.Scream Hard as You Can
04.Swing It!!
05.Thunderclap
06.Counterattack by the Sesame Sized Bodies
07.Let Me Hear
08.Ley-Line
09.Rain Inside Your Eyes
10.Just Awake
11.Step of Terror
12.Flutter of Cherry Blossom
13.Chase the Light!
14.Love at First Sight
15.Virtue and Vice
16.Stay as Who You Are