ストレイテナー @ 赤坂BLITZ

今回で3度目を数えるストレイテナー・プレゼンツ『BROKEN SCENE』。第1回目(2007年11月5日@新木場STUDIO COAST)はSOIL&“PIMP”SESSIONS、JOY HEIGHTS、toe、昨年8月の2回目は東名阪広ツアーとして開催され、各地で9mm Parabellum Bullet、SPECIAL OTHERS、the band apartらを迎えるなど、毎回多彩にして偏愛的なラインナップで楽しませてくれるイベントなのだが、今回もテナーの審美眼に叶った、確かなアーティスト性と実力を備えた2組を招聘。もちろん、赤坂BLITZのフロアは超満員!

トップを飾ったのは、シンペイ&ホリエと同郷(長崎)の新鋭3ピース・BlieAN(ブライアン)。奇しくもこの日がニュー・アルバム『so what?』の発売日で、ホリエは「車の中でガチあがりで聴いてる」そうだが、ライヴも絶頂に向けて一気に駆け上がるようなアグレッシヴなステージを展開。ガレージ・ロックやハードコア・パンク、UKロックなど、それらの沸点のみを抽出したようなバースト感がとにかく痛快! BLITZキャパを丸ごとノック・アウトさせるにはまだ荒削りな部分もあるが、その身体性/突破力はかなりのもの。何にも媚びない、勝気なバンドのツラ構えもグッドだ。今後ロック・シーンでどんな暴れっぷりをみせてくれるか、要注目の逸材である。

2番手は、「去年リリースされたアルバム(『シンボリック・エレファント』)がクソ素晴らしくて。泣いちゃいますよ」とホリエも手放しで絶賛する4人組ギターロック・バンド、wooderd chiarie(通称・ウッチャリ)。彼らのライヴ会場で何度かホリエに遭遇したこともあるくらい以前から入れ込んでやまないバンドなのだけれど、代表曲“アイのストーリー”から幕を開けたステージは、その熱愛っぷりもうなずける実に素晴らしい40分だった。ポスト・ロックを通過した上で鳴らされるシンプルかつ創造的なリズム、情景的でメランコリックなギター・フレーズ、何より驚異的に伸びる上邨辰馬のボーカルが聴く者をここではないどこかへと引き連れていく。そんな“柔らかなトリップ感”に耽溺するように、オーディエンスはじっくりと耳を傾けていた。

時計の針が午後9時を指そうというころ、いよいよテナーがオン・ステージ。しばしのセッティングの後、キーボードに向き合ったホリエ。おもむろに“Lightning”のイントロを奏でる。そこへ大山のディレイ・ギター、ヒナッチのベース、シンペイのドラムスが折り重なり、ゆっくりと物語の扉を開け放っていく。続けてホリエ、ホワイトのストラトに持ち替えて、“奇跡の町”を。しっとりとした幕開けだが、その後は一転。シンペイの力強い8ビートと強烈なバック・ライトのもと、“BIRTHDAY”→“TRAVELING GARGOYLE”の激アガりチューン2連発! フロアは熱烈なオイ・コールに沸き、BLITZに今宵最初のクライマックスが訪れたのだった。

「大好きなバンドを迎えられて、ありがとうございます」とホリエ。「今日は来週出るアルバム『Nexus』の中からガッツリやろうかな」との言葉に、割れんばかりの歓声が沸きあがる。「ついて来れないと思うけど(笑)、楽しんでください!」と続け、最新作のオープニングを飾る“クラッシュ”を披露。小気味良いビートと躍動的なバンド・サウンドに、オーディエンスはすぐさま目一杯にコブシ突き上げて応戦する。その他にも“イノセント”(無垢なる高みへとゆっくり上昇していくような珠玉のミドル・ナンバー)、“Stilt”(荒々しいギター・カッティングが痛快なグルーヴィー・チューン)などいくつかの『Nexus』収録曲がお披露目されたが、メンバーに新曲に相対する緊張感みたいなものは皆無で、生まれたての楽曲たちの真新しい手触りを楽しむような、リラックスした感じさえある伸びやかな演奏が印象的だった。

圧巻は“DISCOGRAPHY”→“Little Miss Weekend”とアッパー・チューンを畳み掛けた本編終盤。身体ごと持ってかれるような強靭なロック・グルーヴに誰しもが大フィーバー! フロアに目も眩むような熱狂を出現させて、幾度もオーディエンスに手を合わせながら4人はステージを後にした。

アンコールでは「最後に1曲だけ」と“TRAIN”を熱演。まさしく暴走列車のごとき加速で再びクライマックスへと駆け上がり、「またツアーで会いましょう!」との言葉を残して3度目の『BROKEN SCENE』は盛大にフィナーレ。3月6日からの『Nexus』ツアーに期待膨らみまくる、大充実のアクトでした!(奥村明裕)