その姿勢は、何が何でも盛り上げてやるぞ、というプロフェッショナルな意地を感じさせる。グラミー受賞アーティストの余裕だなんて、とんでもない。そんなイメージを抱くことすら、彼に対して失礼だ。アルバム『アップタウン・スペシャル』のターゲットマークが背景に浮かぶと、変幻自在のダンスタイムが展開されていった。さらに、キング・オブ・ポップことマイケル・ジャクソンのリミックスメドレーで、誰一人逃すかとばかりに追い込みをかける。“Don't Stop 'Til You Get Enough”〜“Wanna Be Startin' Somethin' ”〜“Smooth Criminal”〜“Billie Jean”という鉄板の流れだ。
その直後、もう一人のレジェンドにして他界した盟友=エイミー・ワインハウスが歌う“Valerie”(ザ・ズートンズのカバー)を放り込んでくるのだから泣ける。お待ちかねの“Uptown Funk”では悲鳴ともつかない嬌声が上がり、フロア一面が激しく波打っていた。ダメ押しは「ジョン・レノンとヨーコ・オノのクリスマスソングをプレゼントするよ」と告げてからの、厳かなベースミュージックによる最新カバー“(Happy Xmas) War Is Over (feat. Sean Ono Lennon)”だ。限られた時間に、底なしの音楽愛と情熱でオーディエンスを感動へと導くDJショウだった。ちなみに、マーク・ロンソンとショーン・レノンは、ローティーンの頃から親友同士である。
「みんなバラバラに動いてる。それがいいんだって。自分の踊りを踊ってください。じゃあ、バラバラに踊ったあとは、みんなで同じダンスを踊ってみるというのはどうでしょうか?」と呼びかけて投下されるのは“恋”だ。曲中に「すげー! みんな踊ってる!!」と声を漏らす星野源は、2コーラス目後の間奏で自身もキレッキレの振り付けを繰り広げて沸かせる。続けざまに“SUN”を放つと、「マジで、リハしてるときはここ、極寒だったんですよ。みんなの熱気で暑いです」と笑いながら、自分が好きな音楽をやっていいものかどうか創作活動の方針に思い悩んでいたとき、コンビニで聴いた“Uptown Funk”に勇気を貰ったことを語っていた。
バンドの高速回転グルーヴを乗りこなし、ビートミュージックの夜を掻い潜り、フォーキーな歌心を伝えて爆発的な歓喜へと導く“アイデア”は、バンドサウンドの精度の高さに度肝を抜かれる名演になった。来るドームツアーは期待してもし過ぎることのない、凄まじいものになるはずだと確信させられる。本編ラストは《胸の窓光る先に/手を振りながら/離れゆく場所で/笑い合うさま》と歌われる“Friend Ship”。国/文化の枠組みを越えたライブに相応しいナンバーだ。さらに、予告どおりのアンコールでは月曜日のラストダンス“Week End”を決めて、この最先端ポップミュージックの宴は幕を降ろすのだった。(小池宏和)
●セットリスト
マーク・ロンソン
1. Nothing Breaks Like a Heart
2. Electricity
3. Ooh Wee
4. Daffodils
5. Feel Right
6. MJ Medley
7. Valerie
8. Uptown Funk
9. (Happy Xmas) War Is Over
星野源
1. ファイアークラッカー(Inst)
2. 地獄でなぜ悪い
3. 桜の森
4. Night Troop
5. 肌
6. Snow Men
7. 恋
8. SUN
9. アイデア
10. Friend Ship
(アンコール)
EN1. Week End