ザ・プロディジー @ 幕張メッセ国際展示場

ザ・プロディジーがヘッドライナーのフェス、『ウォーリアーズ・ダンス・フェスト』、幕張メッセ。というか、まずプロディジーの来日公演ありきで、こういう形のフェスを考えて企画したのではと思うが、もうとにかく、このメンツ。タイムテーブル、出演順に丸写しします。

Opening DJ YSK(DJ)
SOUTH CENTRAL(DJ)
autoKratz(LIVE)
MSTRKRFT(DJ)
Hadouken!(LIVE)
Pendulum DJ Set&MC Verse(DJ)
DJ Gedo Super Mega Bitch(DJ)
The Prodigy(LIVE)

とてもよくわかっているというか、「メイン・アクトに合う」「客が喜ぶ」の両方を満たしているというか、とにかく、すばらしい。「偉い!」とか「ありがとう!」と、素直に賞賛や感謝の言葉を発したくなるうれしい顔ぶれ。

で、実際、どのアクトもよかった。autoKratzが期待以上にアグレッシヴで攻撃的なライブだったり(ギター弾きながら大暴れだったのです)。MSTRKRFTがシメの1曲にクイーンの“ボヘミアン・ラプソディ”を、しかも中盤のアカペラになるところからかけて大笑いだったり。Hadouken! って学祭っぽいとこあるよなあ、とか前はちょっと思ってたけど、それがなくなってぶっとい音になっていたり。Pendulum、DJセットだったんだけど、後半MC Verseがもう動きまくり&フロアあおりまくりで、ほとんどライブみたいなことになっていたり。と、もう観どころ聴きどころ踊りどころ、いっぱいでした。
ライブステージの右脇にDJブースがあって、その両方をほぼ交互に使ってライブ→DJ→ライブ→DJ、と進んでいく進行だったにもかかわらず、いちいち1アクトごとに10分くらいのブレイクが入っていたのには、「切れ目なくやればいいのに」と思いましたが、それ以外は文句なしでした。
あ、余談ですが、プロディジーの直前にやっていた女性DJ、「Gedo Super Mega Bitch」、私、知らないDJだったんですが、調べたら、どうもキース・フリントの奥さんのようです。そういえば、キースの奥さん、日本人だっていう話は、きいたことある。

で。プロディジー。なんだか、驚くほど、最高だった。実は、個人的にこの人たちに関しては、一度、自分の中で、決定的に「見放した」ことがある。あれいつだったっけな、1997年に『THE FAT OF LAND』が出て、どかーんと売れて、次の『ALWAYS OUTNUMBERD、NEVER OUTGUNNED』が2004年に出るまでの間だったか、出たあとだったか、確かフジ・ロックだったような気がうっすらするが、その頃に観たライブが、ものすごく、よくなかったのだ。
完全に僕個人の印象だが、「僕らってこんな感じだよね」「こういうのが喜ばれるんだよね」みたいに、まるでプロディジーがプロディジーをなぞっているようなライブに見えたのだ。それまでは12インチとかも全部買うくらい大好きだったんだけど、あの時に「ああっ、終わったあ」って、さめてしまったのだった。偉大なるマンネリがすばらしいバンドもあるけど、プロディジーはそうじゃないでしょ。とか、思っていたのだった。

ただ、さめたとは言いつつも、その後も作品は買っていたし、来日すれば観に行っていた。そしたら「あれ? いいかも」「もしかして終わってないかも」みたいなことに、だんだんなり始めた。で、今日のライブで、なんだかもう完全に、かつてのように、いやかつて以上に、「大あり」「最高!」なことになっていたのだった。めちゃくちゃあがりました。1時間半弱が、あっという間でした。

なんだろう。マンネリじゃなくなって、かつてのように先鋭的で新しくなった、わけではない。というかそもそも、プロディジーってオリジナルなスタイルを確立した存在ではあるけど、音がすごく先鋭的だったり、新しかったりしたわけじゃない、これまでも。
でも、以前とは違って、マンネリじゃない。新しい曲も懐かしい曲も織り交ぜたセットリストだったんだけど、前半はやっぱり『THE FAT OF THE LAND』からの曲、2曲目でやった“BREATHE”あたりに、最も大きな歓声が上がっていた。でも、後半は、そんなの関係なくなって、『INVADERS MUST DIE』の曲も、それ以外も、もう地響きのような歓声とダンスで迎えられていた。

どの曲も、音がタフ。太くて堅くてごつくて、聴いていると身体ごと持っていかれる感じ。気持ちいい。前と何が違うんだろう。アレンジが大きく変わったりしたわけじゃないし、編成も、3人+サポートのギターとベースという、ずっと変わらない形なのに。
でも、明らかに何かが違う。さっき書いた、前にがっかりしたライブが、「プロディジーがプロディジーをやっていた」としたら、今日はなんか「プロディジーがプロディジーになった」みたいだ。

って、観ながらここまで考えて、ものすごく簡単な理由だってことに気がついた。
そうだ。プロディジーになったのだ。つまり、前はプロディジーじゃなかったのだ。よく知られているように、2004年のアルバム『ALWAYS OUTNUMBERD,NEVER OUTGUNNED』は、マキシムとキースは参加せず、リアムがプロデューサーとエンジニアの3人で作った作品だった。つまり、あの前後の数年間は、一応ツアーとかではバンドとしての体はなしていたけど、内実はプロディジーじゃなくなっていたってことだ。だから、それがそのまんまライブ・パフォーマンスに出てしまっていたけど、『INVADERS MUST DIE』からバンドに戻った、ってことなんだろう。

ってこんなにいっぱい書くほどのことか? って自分でも言いたくなる、シンプルすぎる結論だけど、アンコールの音を浴びながら、なんだかとても納得した。
で、よかった、と思った。(兵庫慎司)