VOLA & THE ORIENTAL MACHINE@恵比寿リキッドルーム

pic by YUKA KOMAI
7月末に2作目となるフル・アルバム『SA-KA-NA ELECTRIC DEVICE』をリリースしてから3か月ちょっとの時が空いてしまったが、東名阪ワンマン『Dead or Dance!! Tour2009』のファイナルを飾るリキッドルーム公演。火曜休日(文化の日)のフロアに足を踏み入れると、そこは既にボラの登場を待ちわびたオーディエンスで一杯だ。リリースから時間を経たぶん、ニュー・アルバムが極めて好意的に受け入れられていることを証明するような光景である。

歓声の中にメンバーが登場し、まずは“ORIENTAL MELANCHOLY”から演奏をスタートさせる。バンドとしてのグルーヴが、フィジカルな掌握力となっていきなりぐわっと耳に迫る。アヒトは早々にスティックを振り回してビートを打ち鳴らし、また首から下げたカオシレーターでエレクトロニックなノイズを撒き散らしていた。高揚のリズムがスムーズにオーディエンスを焚き付け、満場のハンド・クラップが巻き起こる。最高の立ち上がりと言えるのではないか。2曲を終えたところで、有江(B.)はオーディエンスのあまりのレスポンスの鋭さ/大きさに満面の笑みを見せ、両の手を広げて高く掲げた。

メンバー全員がおもむろにサングラスを着用して“WEEKEND LOVERS”の性急なダンス・ロックを披露すると、アヒトが告げる。「我々VOLA & THE ORIENTAL MACHINEは、今日のライブで全力を尽くすことをここに宣言する!フーフー!!」。堂々たる宣誓ではあったが、残念ながらちょっと噛んだ。しかし、その言葉どおり、ボラの掌握力に満ち満ちたバンド・グルーヴは様々な形を成してオーディエンスに降り掛かる。4つ打ちのダンス・ビートを離れ、打ち込みのパーカッションと中畑(Dr.)のソリッドなシャッフル・ビートが渾然一体となった“No Dream”には、ドラマティックなキーボードを弾く楢原(G.)のサウンドも折り重なる。《your life is on the table》というフレーズはコミカルに響くが扇動的だ。個人的には『SA-KA-NA ELECTRIC DEVICE』収録曲の中でもすごく好きな曲である。更にはストイックでヘヴィなブルース・ロックと爆発的なエレクトロ・パンクの分裂症ナンバー“FOOD’S NEXT”へ。ボラのバンド・グルーヴの濃密さをまとめて叩き付けるような時間帯であった。

アヒトはマルチ・プレイヤーだし打ち込みも多用するしそもそも自身のイメージする表現を具体化するためにボラというプロジェクトを立ち上げたのだが、あくまでもそれはバンド・グルーヴでなければならない。パーティ・チューンが好きだしオーディエンスも笑顔でノリノリだが、そこにはシリアスでときに辛辣なメッセージも込められなければならない。ボラのそうした二面性が、序盤から分かり易過ぎるほどにバシッと提示されたステージである。一見、極と極であるようなものが左右の車輪のように両立したとき、ボラのパフォーマンスは最大限の魅力を放ち始めるのだ。

「アルバム出してから待った? 今日は、たしか(チケット代が)3千円でしょ? 踊り放題、死に放題ですから! Dead or Dance!! 僕は踊るけどね。あー楽しー!!」と昂るアヒトは、自らのタオルをオーディエンスの方へ投げ飛ばす。壮観なスウェイがフロアを満たした“In the morning”を経て、オーディエンスに語りかけるように歌われる“キラキラ☆Future Days”へ。浮かれるわけではなく理性的だが、それでも多幸感に満ちたメロディ。名曲である。と思えば、次の瞬間には悪ノリの如くハードコア・テクノ風のイントロが鳴り響き新曲“みなごろしの歌”(仮タイトル)へ。様々な色彩の感情が、次から次へと塗りたくられる。そしてノイジーな音の壁の向こうに、楢原によるアコギのアルペジオと中畑のコーラスが浮かび上がる“The Sea of the Sand”は、ただただひたすらに美しかった。

「ベタベタベタベタ粘着的にね、まとわりついてくる人がいるんですけど! 私はそういう人とは一切、コミュニケーションは取りません!」。アヒトの尖った姿勢表明に大歓声が上がる。ということは……“A communication refusal desire”だ。楢原の鋭いカッティングが踊り、有江のベース・ラインが唸りを上げる。ここからの終盤戦はまさにとどめを見舞うようなハイ・エナジー・チューンの乱れ咲きであった。もう一発放たれた新曲は、その名も“PARTY SONG”。中畑とアヒトによる熱狂的なツイン・ビートが炸裂し、それを有江がホイッスルを吹き鳴らして更に煽り立てる。そして“Dead or Dance!!”のイントロで印象的なハンド・クラップをオーディエンスが決めると、アヒトが色とりどりのゴム風船をバラ撒き、大団円に向かったのであった。アンコールまで鉄壁の盛り上がりで全20曲。それでもあっという間に感じられたステージだった。

今後のボラは、対バン形式の自主企画『ORIENTAL CONCOUR』含め、精力的にライブをこなしていく予定だそうだ。笑いも怒りも憂いも込めて踊り尽くす今の彼らを、ぜひともチェックして欲しい。(小池宏和)


1.ORIENTAL MELANCHOLY
2.Turning Turning
3.An Imitation’s superstar
4.WEEKEND LOVERS
5.Dark Emperor
6.No Dream
7.FOOD’S NEXT
8.噛む猫
9.In the mouning
10.キラキラ☆Futur Days
11.みなごろしの歌(仮)
12.A sick island
13. The Sea of the Sand
14. A communication refusal desire
15.PARTY SONG
16.Dead or Dance!!
17.Mexico Pub

アンコール
18.self-defence
19.Internal Division

アンコール2
20.Song of Ruin