ネクタイにワイシャツ姿でタンバリンを鳴らしながら、古き佳きメリケン王子様オーラをぷんぷん振り撒き歌いまくるテイラー。その横で、同じくネクタイ姿(!)で神経質なあのディストーション・サウンドを、それでも100%のポジティヴィティでもってかき鳴らすジェイムズ。ラフで無骨ながら安定感のあるラインをぶいぶいと弾き倒していくアダム。そして、さながら大通りも裏道も知り尽くした熟練バス運転手のような佇まいで、快速爆裂パワー・ポップもスロウ・バラードもパワフルに叩き分けていくカルロス。それらが渾然一体となって、1曲目の“テイク・ミー・バック”からタフでカラフルなサウンドを生み出していく。1つ1つの音がでっかい風船みたいに粒子がでかくて色彩と弾力に満ちている感じ、とでも言うのだろうか? 「この音楽で世界を変える!」とか「音楽シーンに物申す!」とかいった覚悟や気負いはゼロだが、それこそ「バンドって楽しい!」というのを始めて知った中学生のような歓喜を、ツボを押さえた百戦錬磨のベテランの技量で再現しているのである。楽しくないわけがない。感極まったジェイムズの「アォーウ!」という絶叫が、そんな4人の気分を実にヴィヴィッドに伝えている。
もちろん、いくら熱気ムンムンとはいえ、10代20代中心のライブに比べれば、満場のお兄様お姉様たちのリアクションは大人しい。そこで26歳・テイラー王子の出番である。少女マンガならいちいち星がキラキラしそうなアクションでもって、2階席に至るまでにこやかにアグレッシヴに煽っていけば、自然発火的に手拍子が湧き上がるのも時間の問題である。
アルバム『ティンテッド・ウィンドウズ』収録曲全部やった上にザ・ナック“レット・ミー・アウト”やバズコックス“アイ・ドント・マインド”カバーまでやっても、19:44に開演したステージはアンコールまで含めて20:43には終演。だが、「コンパクト」というよりは「性急」とか「衝動的」と呼びたい、爽快なアクトだった。「次は2ndアルバムを飛ばして3rdを作る! 『ティンテッド・ウィンドウズ3』だ!」というアダム&テイラーのMCと、登場SEがエイジアの“時へのロマン”だったことだけはどうにも謎だが。(高橋智樹)