昨年11月、原宿アストロホールでのプレミア・ライブ以来7か月ぶり、そして2ndアルバム『モダン・マインズ・アンド・パスタイムス〜現代的精神と暇つぶし』をリリースしてから初めての来日公演。今回は東南アジア・ツアーの一環(!)ということで、彼らを取り巻く状況は刻一刻と拡大していることがわかる。ザ・クリック・ファイヴ、ボストン出身の5人組。昨年12月にリリースされた『モダン・マインズ〜』ではボーカリストの交代という荒波を乗り越えながら、前作以上にパワフルでポップなロック・アルバムを作り上げてきた彼らだが、それにしても女子ファンが多い。現在のボーカリスト、カイルのルックス(リアル八頭身。細く、脚は長く、顔は小さく、目は大きい!!)もあいまって、アイドル的な人気も博しているバンドである。
キャ――――――――――――――ッ!!という悲鳴ともつかぬ歓声の中現れたバンドは、衣装もばっちりキメている。全員がきっちりとシャツを着こなし、カイルにいたっては上下白のスーツにネクタイと靴まで真っ白。これが似合っているのだからしかたがない。“フリップサイド”からスタートしたライブは、『モダン・マインズ〜』からの曲だけでなく1st『グリーティングス・フロム・イムリー・ハウス』からの楽曲も織り交ぜた構成。カイルにしてみたら自分とは違うボーカリストが歌っていた曲なので難しいところもあるだろうが、見事に乗りこなしていた。バークリー音楽院の出身だけあって、演奏センスとスキルは本物。隙あらばギター・ソロだのドラム・ソロだのキーボード・ソロだのを挟み込む感じはいかにもオールドスクールなのだが、そのある種の「野暮ったさ」が彼らのロックに安定感をもたらしている(恒例“パンプ・イット・アット”でのメンバー紹介なんて、絵に描いたようなロック・ショウ的展開!)。中盤にはアコースティック・セットで“ドント・レット・ミー・ゴー”という新曲をやり(ギターのアルペジオとカイルの伸びやかな声が絡み合う名曲)、アンコールではシングル“ジェニー”など4曲を披露するなど、幅広い音楽性とサービス精神の豊かさをたっぷり見せ付けた90分。まだ若いんだけど、早くも風格すら漂うニュー・ヒーローの実力をしっかりと確かめさせてもらった。(小川智宏)
ザ・クリック・ファイヴ @ 恵比寿リキッドルーム
2008.06.11