SWEET LOVE SHOWER 2010(1日目) @ 山中湖交流プラザ きらら

怒髪天
山中湖交流プラザ きららにて行われるようになってから今年で4回目となるスペースシャワーTV主催のロック・フェス『SWEET LOVE SHOWER』。過去数年どしゃぶりの雨に見舞われるなど天候があまりよくなかったのだが、猛暑、酷暑、炎暑と言われた今年は朝から晩まで超快晴! そして、このフェスの見どころと言ってもよい雄大な富士山が夕方頃から山裾からてっぺんの頂上までくっきりと現れ、まさに絶景とともに楽しむフェスがここに実現したのだ。

行きのバスは中央道の渋滞に巻き込まれてしまい、残念ながら今年から新設されたFOREST STAGEのこけら落としを飾ったcinema staff、バックに山中湖畔一面を眺められるWATER FRONT STAGEのsleepy.abのアコーステッィク編成=sleepy.acには間に合わず、会場に到着したのはLAKESIDE STAGEに登場したTHE BAWDIESの中盤あたり。急いでステージ前に向かうとすでに大勢のオーディエンスがTHE BAWDIESの繰り広げる怒涛のロックンロール・ナンバーに踊りまくってる。“KEEP ON ROCKIN'”では「あなたの会社の社長が、『おまえこんなに楽しんでいたのか、ならもっと有休どうですか?』そんな気持ちにさせるくらいの!」と饒舌なROYの煽りにのって最高のクラップとシャウトで包まれる。「夏恒例の花火大会どうですか? 『えっ、ボウディーズが花火大会やるの? だったら買ったばかりの浴衣を着てくればよかった』って違います! あなた、あなた一人ひとり、みんなが花火なんです」とROYのノリツッコミMCで突入した超濃厚ダンス・ナンバー“YOU GOTTA DANCE”で最高に熱いラストを締めくくっていた。

大型トレーラーをステージにしたFOREST STAGEからグルーヴィーなバンド・アンサンブルを叩きつけたOKAMOTO'S。モニターに足をかけ、前のめりになって圧倒的存在感を放つオカモトショウ(Vo)の魂の叫びが富士山に木霊するよう。“まじないの唄”でのコール&レスポンス、“恋をしようよ”の「ヤりたいだけ!」のシンガロング、極めつけの“Run Run Run”でオーディエンスを完全掌握していた。そして、「あのー、ステージから富士山が見えないんですけど、どこにあるんですか?」(中島/G)「富士山が見えるステージなんですよって言われたんですけどね」(藤崎/Key)と富士山が見えないことを残念がっていたのはMt.FUJI STAGEのトップバッターを飾った世界の終わり。カンカン照りにもかかわらず、富士山にはあいにく雲がかかっている。しかし、その雲さえ吹き飛ばすような清涼感に満ちた深瀬(Vo/G)の歌声と突き抜けるようなピアノとシンセのサウンドが壮観な自然の中で響く“幻の命”は息を呑むような美しさに溢れていた。「ここをでっかいディスコに変えようぜ! アー・ユー・ディスコーー?」という石毛(Vo/G)の大絶叫とともに“I Hate DISCOOOOOOO!!!”で幕を開け、山中湖に巨大ミラーボールが出現したかのようなキラッキラのダンスフロアへと変えていったthe telephones。「今日は暑いと思うんで、水分、塩分、十分な睡眠、“HOT DOG”はいらないと思うんだよね(笑)」「最後はやっぱり愛だと思います。愛の戦士はROY様じゃなくて、the telephonesです(笑)」と最愛のライバル、THE BAWDIESに向けての対抗心(!?)も煽りながら“Love&DISCO”でオーディエンスを踊り狂わせ、山中湖の地面を圧倒のディスコで揺らした。

FOREST STAGEでは、毛皮のマリーズが妖艶なロックンロールを撒き散らしている。真っ赤なサロペット風パンタロンに身を包んだ志磨遼平(Vo)がステージ上を所狭しと練り歩きながら歌う。「こんなステージじゃロックンロールは収まりきらない!」とステージから溢れんばかりの濃密で美しい“ビューティフル”が山中湖の自然と溶け合う様は本当に素晴らしかった。そして、ますます熱さを増していく山中湖に更なる熱風を吹き荒らすYOUR SONG IS GOOD。我を忘れるように軽やかにステップを踏んで踊り出すオーディエンスにJxJxも「わたくし個人的にも異常な熱を帯び始めています。踊るしかないっつうことでネクスト・チューンはこんな感じです」といって祭り×スカのリズムでぐいぐい引っ張っていく“ONIROKU”、暴発寸前の勢いで“A MAN FROM THE NEW TOWN”を連射。束の間のクールダウン“UNBREAKABLE”を挟んで、再び“B.A.N.D.”→“THE OUTRO”の極上パーティー・チューンではち切れんばかりの熱量を撒き散らしていった。続く、LAKESIDE STAGEのサカナクションは草刈(B)、岩寺(G)による太鼓から始まる“21.1”で一気にトランス状態へと導いていき、「用意はいいか~!」という山口の合図で“明日から”へとなだれ込んでいった。オーディエンスのハンドクラップとジャンプでフィールドが包み込まれていく光景がはっきりと目に見える真昼のサカナクションも悪くない、と思っていたら、山口が「実は僕たち明るい昼間のステージは苦手でして…恥ずかしくて…。今日、このステージで初めて昼間のステージに慣れた気がします」と言っていた。そして、「去年もこの曲で終わって気持ちよかったので」と言って“ナイトフッシングイズグッド”で締め。真夜中の闇を泳ぎ続けるサカナクションが太陽の光を浴びてこの上ない高揚感をもたらした瞬間だった。

ぎらつく日射しの中、FOREST STAGEではDOESがスリリングなビートと爆音を撒き散らす。“修羅”の疾駆していくビートが炎天下に突き刺さり、「踊りまくってちょうだい!」と煽った“バクチ・ダンサー”で突き上がる拳とシンガロングが沸き起こる。新曲“ジャックナイフ”で猛攻勢を加えると“明日は来るのか”でラストスパートをかけていった。Mt.FUJI STAGEではandymoriが“1984”を穏やかかつ壮大にプレイ。ステージバックには雲に隠れていた富士山がついに姿を現し絶景が目の前に広がった! “FOLLOW ME”“CITY LIGHTS”“SAWADEECLAP YOUR HANDS”と性急なビートに乗ったナンバーを一気に畳みかけてクライマックスを迎え、ラストは“すごい速さ”で猛疾走。富士の美しさとともにandymoriのステージを堪能したオーディエンスは本当に爽やかな笑顔に満ちあふれていた。

夕暮れ差し迫るLAKESIDE STAGEにはKen Yokoyamaが登場! 「3年ぶりに来たよ! ニュー・アルバムからどんどんやります!」と“Let The Beat Carry On”“Go With The Flow”と畳みかけると、たちまちフィールドは「パンクロック! パンクロック!」コールで熱く燃えあがる。MCでは「今日、来る時に渋滞に巻き込まれて、さっき着いたところ。THE BAWDIESが観たかったんだけどね。でも、よく考えたらTHE BAWDIESが始まる頃、まだ家で寝てたわ」と会場の笑いを誘うと、なんと“HANDSOME JOHNNY”でTHE BAWDIESのJIMがギタリストとして飛び入り参加! ハイスタ世代のTHE BAWDIESにとってこの共演は飛び上がるほどに嬉しいはずだ。超笑顔で少年のようにギターをかき鳴らすKENとJIM。世代を越えた奇跡の共演がここに実現した。その後の“Stay Gold”はもちろんのこと、ラストまで爆裂パンクロックを注入していきフィールドをカオス状態へと巻き込んでいった。

そのまま、Mt.FUJI STAGEに向かうためにボードウォークを歩いていくと、WATER FRONT STAGEに登場する七尾旅人を待つお客さんで埋め尽くされている。沈み始めた太陽と富士山と、七尾旅人のアコースティック・ショー。歌のような、ポエトリーリーディングのような、ラップのような独特な表現で、表情豊かな世界が広がる。それは、キラキラと煌めく山中湖の揺れる水面に吸い込まれていくような不思議な感覚だった。そして、Mt.FUJI STAGEにはハナレグミが登場。“あいのわ”でギターを弾き語りながら穏やかな歌声を届ける永積、そしてバンドサウンドが折り重なっていくと、あまりの心地よさにフィールドは拍手喝采に包まれた。ふもとから頂上までくっきりと現れた富士山を観て「パンツを逆さまに見たみたいだね」と会場の笑いを誘って上機嫌な永積。眩しい夕陽がステージに差し込む中、新曲も披露。ゆるやかなブルースハープと柔らかな歌声、時に激しくかき鳴らされるアコギ……ハナレグミならではののんびりした極上のフェス空間を彩ってくれた。

ハナレグミを前半だけ観てHiGEに移動するつもりでしたが、あまりの心地よさについうっかり…。あわてて移動したものの、HiGEは既に終わっていて観ることができませんでした…申し訳ありません。そして、すっかり日も暮れ深い青色に彩られた富士山が不穏に揺れる中、LAKESIDE STAGEにはBOOM BOOM SATELLITESが登場。ただならぬ雰囲気を醸し出す強烈な4つ打ちの低音ビートが轟くと地の底を揺らすようにオーディエンスを興奮状態へと導く。yokoによる生ドラムのビートがより一層の重厚感を生み出し、ノイズまみれの音の洪水が身体中にまとわりつく感じが堪らない。闇の中に揺れる富士をバックにプレイされたナンバー“STAY”は荘厳な世界観は山と湖と木々に囲まれたこの場所でしか感じえない神聖さを放っていた。

そして、イベントもついに終盤に差し掛かってきた。Mt.FUJI STAGEのトリを飾るのはEGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX。夜の闇にひと際輝くスパンコールの衣装に身を包み、赤いキャップを被った中納良恵(Vo)が登場すると会場は大歓声に包まれた。“love scene”“Mother Ship”とホーン隊が生み出す極上のアンサンブルでフロアは一瞬にしてジャズ・バーのような空間に塗り替えられる。そのまま、“くちばしにチェリー”のイントロが鳴らされると有無を言わせず、お客さんは思い思いに踊り出す。極めつけは「秋の始まり。心に染みるこのブルースを」と言って始まった“色彩のブルース”だ。まだまだ暑い日は続くけど、一足先に秋を先取りしたような涼やかでしっとりと聴かせるブルースに会場全員が拍手喝さい、感傷に浸るような面持ちで聴き入った。

1日目のLAKESIDE STAGEのヘッドライナーを飾るのは怒髪天! リーゼントでビシッとキメた増子兄ィの登場で「祭りじゃーい!」と勢いづき“GREAT NUMBER”で男気満載の祭りはスタート! 続けざまに「働けーーー!」という絶叫とともに“労働CALLING”となだれ込んでいき、フィールドはあっという間に両手を挙げて踊り、歌い狂うお客さんで埋め尽くされた。「よくぞ残ったな。こんなに物好きな人たちが残ってくれて、ありがとう! 今日はヘッドライナーですからね。紅白で言えばオヤジ(北島三郎)枠ですからね。違う意味でオヤジですけどね」と最年長バンドの余裕をかましていく。「気温もちょうど下がって暴れやすい! あんまり暑いと倒れちゃうからね。俺たちがね(爆笑)涼しくなると夏ももう終わりなんだなと思ってしんみりくるよね」と増子兄ィが語り出すと、上原子(G)が「君といつまでも」のイントロを弾き出した! まさかの加山雄三カバーにオーディエンスも大爆笑。「ぼかぁ、幸せだなぁ。休みでもないの
に朝から飲んでるのが一番幸せだなぁ……」と増子節が炸裂、名言です! そのまま“
あの夏のバラード”で今年の夏を振り返るようにして一時のクールダウン。と思いきや榊原郁恵の“夏のお嬢さん”のカバーを暑苦しいくらいにプレイし、“真夏のキリギリス”で夏のうだるような暑さで再び炎上させて本編終了。アンコールでは「まだ足りないものがあるんじゃないの? 血液中に足りないもの!」と言って始まった“酒燃料爆進曲”、「明日のトリはエレカシということで、同じ歳。今年44歳がそろってトリを飾るという、実に珍しいフェスティバル。いい時代じゃないの。まだまだフェスは終わらねーぞ!」と明日へつないだ“サスパズレ”で大合唱! 最後にはこの日出演した若手バンドらがステージに乱入し、さらには増子兄ィの「しゃがめー!」の合図で会場全員がしゃがみ、一斉にジャンプをして締めくくり。

今年の夏もいい夏だったなと感慨深い思いに浸りながら、まだまだ暑さが続くことを予感しつつ会場を後に。明日の2日目へ続く!(阿部英理子)