all pics by Shigeyuki Ushizawa 金色のパーティーモールで埋め尽くされたステージがとにかく煌びやかで眩しい。最新アルバム『ロックンロール世界旅行』を引っ提げての全国ツアー、その名も『50回転ズのロックンロール世界旅行ツアー』で各地を巡り、ここ赤坂BLITZに舞い戻ってきたザ50回転ズを祝うかのようなド派手なステージセットに、集まったオーディエンスのテンションも上がりっぱなしだ。バカバカしさを本気で貫き通すからこそ成り立つ彼らのステージは、この金色のモールならぬ金屏風のようにギラギラと輝いていて、エネルギッシュで熱かった。
MCらしいMCはほぼなく、常にハイテンションのまま音を鳴らした状態で約2時間ノンストップでライブを展開していった3人。“レッツゴー3匹!!”や“放課後のロックンロール”など定番曲で初っ端からスピード感を出していき、フロアの空気をかき回したところで、世界旅行をテーマにした最新アルバムからの楽曲を投入! ダニーがマラカスを振り乱しながら、「ウンバ、ウンバ」のコール&レスポンスで会場丸ごとをアマゾンへと飛ばしたかのような“首狩り族の逆襲”、「次はどの国にしようかー」と一気に常夏の南国へと陽気にトリップしていき、ベンチャーズばりのサーフサウンドを展開した“ハワイはいいわ”など、民族音楽の要素や多彩なリズムを組み込んでいく。しかし、そこから見える景色は世界の鮮やかな情景などではなく、紛れもなく泥臭くロックンロールをかき鳴らすザ50回転ズ3人の姿なのである。彼らのロックンロール魂にまったくブレがないことを教えてくれる。
彼らがロックンロールを鳴らし続ける理由は、今日唯一ライヴ中にダニーが語ったこの言葉に凝縮されていたように思う。「楽しんでもらえるのが一番うれしいよ! 俺たちこの『ロックンロール世界旅行』っていうレコードを楽しんでもらえるためだけに作りました! 今年日本はどえらいことになっちゃって、何もかも忘れられるようなそんなレコードにしたかったんだよ。心打つような作品じゃないし、泣けるようなアルバムでもない。バカバカしくて、アホらしくて、最高に踊れるレコードができたよ。ありがとう! こんな時代だからこそ、声高らかに歌おうぜ!」全身全霊をかけてバカバカしくて、アホらしいことをやり抜き、心から観客を楽しませるというエンターテイナーとしての強い意識だけで動いているといっても過言ではないザ50回転ズ。彼らの熱い心意気が伝わってきた瞬間だった。この後に披露されたあるカバー曲が本当に感動的だったのだが、10月1日にツアーファイナルが行われるのでここでは曲名は伏せておきます。
後半戦もチャイナ・インスト“ロッキン・カンフー”やザ50回転ズの新たなキラーチューンとなった2トーンスカが痛快な“KILLER”など新作からの楽曲を盛り込みつつ、この日フロアが最高潮の盛り上がりを見せたのは、「最後までついていけるかーー!!」というダニーの煽りから勢いよく畳み掛けられた“Thank You for RAMONES”“1976”“MONEY! MONEY!”といったお馴染みナンバーのオンパレード。彼らが奏でる最強のロックンロールを称えるように会場一丸となって突き上げられた無数の拳は、赤坂BLITZに歓喜の渦を生み出した。
そして、「バカだなおまえら! ラストナンバーだって言ってるのに聞き分けのないやつらだぜ。俺たちそういうの嫌いじゃないんでね」(ダニー)と、鳴り止まないアンコールの拍手に応えて、再びステージに現れたメンバー。アンコールでも汗だくになって騒ぐオーディエンスに対して、最後の最後まで力を振り絞ってロックンロール・エンターテイナーに徹するザ50回転ズの姿は本当に清々しいものだった。ツアーは台風の影響により延期となった名古屋公演とファイナル公演の大阪を残すのみ。「世界旅行」の終わりに見えるのは一体どんな景色だろうか。これからライブに足を運ぶ人は心して楽しんでもらいたい。(阿部英理子)