最高のアクトだった。アンコールの最後に田淵智也が「どうだ! ロック・バンドは楽しいだろう!」と誇らしげに叫んでいたが、全18本の全国ワンマン・ツアー『誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のツアー』ファイナル=渋谷公会堂公演はまさに、UNISON SQUARE GARDENの3人がロック・バンドとしてのアイデンティティを100%見せつけたライブであり、それによって逆に彼らの音楽が持つポップ感が過去最大の訴求力をもって満場のオーディエンスの胸に飛び込んでくるという、感動的なくらいにマジカルなステージだった。
何しろ、1曲目の“流星のスコール”から、彼ら3人のサウンドには「骨太感」と呼びたいくらいの逞しさが宿っている。エッジ感や色彩感を出す上モノとしてよりも、ドライブ感満載のグルーヴ・マシンとして音色を再構築された斎藤宏介のギターが、あたり一面弾み回るようなアグレッシブな田淵&鈴木貴雄のビートと一丸となって、“フルカラープログラム”“ラブソングは突然に ~What is the name of that mystery?~”ででっかく会場を揺らしていく。もともとビートの運動神経と反射神経の圧倒的な高さを見せていたユニゾンの音楽だが、そのビートがこの日は特に、強靭なロックンロールの原動力として作用して、今年リリースされたシングル2作『流星のスコール』『リニアブルーを聴きながら』収録曲を軸に据えたこの日の楽曲群に巨大なうねりと躍動感を与えていた。
「僕らにとって、ツアーってものすごく大事で。たとえば、福岡では」とMCで斎藤が真面目に語り始めたので何かと思ったら「……博多ラーメンを食べました! たとえば、熊本では……」とラーメン行脚の話で、「僕らもロック・ミュージシャンとして、ひと回り体型がでかくなって(笑)」と笑いを誘っていたりする。その一方で、本編後半のMCでは「なんで僕らがライブやるかって……来てくれた人1人1人に、『自分がいちばん楽しんでいいんだ!』って知ってほしくて、ライブをやってます。椅子席だけど、隣りの人と同じことをしなくてもいいし。自分と、ステージの3人だけの世界で、いちばん楽しめるやり方を探してくれればいいと思います」と、あくまで「集合としての観衆」ではなく、リスナー1人1人の心を揺り動かすために音を鳴らす決意を語ってもいて、それがこの日の彼らの音と至上の相乗効果を生み出したいた。
[SET LIST]
01.流星のスコール
02.フルカラープログラム
03.ラブソングは突然に ~What is the name of that mystery?~
04.ワールドワイド・スーパーガール
05.さよならサマータイムマシン
06.シャンデリアワルツ(新曲)
07.きみのもとへ
08.マスターボリューム
09.センチメンタルピリオド
10.三日月の夜の真ん中
11.スカースデイル
12.WINDOW開ける
13.キライ=キライ
14.場違いハミングバード
15.さわれない歌
16.MR.アンディ
17.23:25
18.リニアブルーを聴きながら
19.誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと
Encore
20.光のどけき春の日に(新曲)
21.kid,I like quartet
22.オリオンをなぞる