【フジロック総復習レポ・3日目】ビョーク、ロード、ザ・ストライプス、YUKIなど


2017年7月28日(金)~7月30日(日)に新潟県湯沢町苗場スキー場にて開催された「FUJI ROCK FESTIVAL '17」。今日もrockinon.com編集部スタッフが実際に現場で目撃した内容をもとに、それぞれの日の主要なアクトをレポートしていく。本日お届けするのは、いよいよ最終日の模様。朝は、青空が広がっていて参加者を喜ばせたものの、昼からは小雨が降ったり止んだり。しかし強い雨になることはなく、最後まで数々の素晴らしいアクトと、フジロックならではの環境を楽しめた1日となった。

グリーン・ステージのトップに登場したのは、カナダのシンガー・ソング・ライター、ロン・セクスミス。日曜の朝、小雨が降りしきる中で温かみのあるフォーキーなバンド・サウンドに乗せて響き渡るロンの声とメロディの浸透力は、デビューから20年以上のベテランとなった今も全く衰えていない。
デビュー・アルバムから名曲“シークレット・ハート”が届けられると一際大きな歓声が。少しはにかんだような表情を浮かべながら、終始、美しい歌の粒子で僕らを包み込んで最高の1日の始まりの時間を作り上げてくれた。

ホワイト・ステージに登場したのは、新体制になったリアル・エステート。ロン・セクスミスのブリティッシュ・ポップ色の強いエバー・グリーンな美メロに続いて、この危うくも凛としたUSインディ・サイケの美メロを浴びまくるのは、あまりにも贅沢でヤバい。
新たなギタリストのジュリアン・リンチは長年の友人ということで、既に5人の演奏の溶け合いには、バンドの成熟さえも感じられた。

グリーン・ステージの2番手には、フジ初来日となるデンマークの4人組バンド、ルーカス・グラハム。圧倒的な歌唱力と、ソウルとヒップホップがあまりにも自然に融合したサウンド、少年性たっぷりのキャラクターに、誰もが共感&思わず涙してしまうような家族の歌。
いくつもの魅力が重なったエンターテインメントなステージが展開するが、まだグラミー賞3部門にノミネートされた大ヒット曲“セブン・イヤーズ”をやらないままに終了? と思いきや、アンコールに応えての再登場。
アンコール2曲目、最後の最後に“セブン・イヤーズ”で全部持っていくという、堂々たる完全勝利のライブだった。

続いて8年ぶりにフジのグリーン・ステージに降り立ったのは、再始動したJET。バスドラにカタカナで書かれた「ジェット」の文字に笑わされたり、髭が伸びてだいぶ風貌の変わったニック・セスターに驚かされたりしつつも、問答無用で惜しみなく叩きつけられるJETのロックンロールは全く変わっていない。
ニックがステージ下のスピーカーの上に立って歌い上げるなど、とにかく前進あるのみの姿勢で盛り上げまくるので、途中、少し強まった雨足も気にならなかった。
そして“Are You Gonna Be My Girl”“Get Me Outta Here”“Rip It Up”というロックンロール好きの本能に火を付けるラストスパートは、体を動かすなという方が無理! もう頭の中を空っぽにして楽しむのみだった。

19年ぶりの再結成を遂げての初来日となった2014年のフジロックに続いて、再びレッド・マーキーに降臨したのは、スロウダイヴ。今回は、22年ぶりのアルバム『スロウダイヴ』を引っ提げての登場だ。
少し紫がかった青色の背景に白い「Slowdive」の文字が現れてブライアン・イーノの“Deep Blue Day”と共にメンバーが現れ、5人が音を鳴らし始めると、それが最新アルバムの曲であるか、かつての名曲であるか、カバーであるかは大きな問題ではない。
そこにはとにかくスロウダイヴにしか描けない、過去と現在の垣根も、快楽と痛みの垣根も、美しさと狂気の垣根もすべて溶かしてしまう、脱出不可能の大河のような音があって、それに為す術もなく身を委ねるのは、言うまでもなく至福の極致だった。

Thank you everyone @fujirock_jp that was awesome!

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バンドに加えて、ホーン、ストリングス、コーラスの加わった豪華絢爛編成のメンバーを引き連れ、肩口の大きく開いた羽根付きドレスで「はじめまして、フジロック!」と天使のようにグリーン・ステージに舞い降りたのはYUKI
ビッグバンド編成を活かしての1曲目“恋愛模様”で、いきなりワイルド&キュートなスキャットが冴えまくる。そして惜しみないヒットパレードの嵐。
フジロックへのリスペクトと愛情を込めながらも、遠慮なく大胆に自分の色を塗りたくるのが彼女らしい。終盤の“鳴いてる怪獣”でYUKIが激しくギターをかき鳴らすほどに、シャワーのように雨が降り注いだのは、まさにフジロックの魔法がかかった瞬間だった。


夕暮れのホワイト・ステージでパンパンにオーディエンスを集めながら登場したのはボノボ
アーティストとしての注目度に加えて、今回は遂にバンドセットでのアクトだということも大きい。内省的な音だからこそライブにおいて幻想的なダイナミズムを持つ、ボノボの音楽の不思議な魅力が、野外でのバンドセットによって、より全開になっていた。
エレキギターや管楽器の使い方も絶妙で、今の時代の音楽ならではの肉体性とは何かを恐ろしくビビッドに具現化した最高のパフォーマンスだった。


3年前のレッド・マーキーでの出演から、今年はグリーン・ステージのトリ前へと大きな飛躍を果たしたのは、ロード。ビートを強調した比較的シンプルなサウンドをバックに、ロングスカートのドレスにアディダスのスニーカーをナチュラルに合わせた姿で、鋭いキレのあるダンスを自由に踊りながら歌うのがメチャクチャかっこいい。しかも、フジロックとそのオーディエンスへの愛情をMCの言葉や態度で何度も表してくれる。
中盤、ステージ前方に腰掛けて歌われた最新アルバム『メロドラマ』収録の“Liability”は、歌う前のMCも含めてオーディエンスひとりひとりの心の痛みに至近距離で寄り添ってくれるように感じたし、終盤、スニーカーを脱いで裸足になり、ステージから降りてオーディエンスの手に触れながら歌う姿には、思わず涙がこぼれた。
ラスト“Green Light”での圧巻の盛り上がりまで、ワールド・トップスターのショーとしてのクオリティとひとりの女性としての自然体の魅力が何の無理もなくステージ上で両立した完璧なステージだった。


レッド・マーキーの大トリのライブアクトとして登場したのはザ・ストライプス。元々、全く年齢にそぐわない、太々しいくらいの演奏力に定評のある4人が、よりパワーもテクニックも、そして魅せ方の余裕も格段に増している。
客席はモッシュ&ダイブ続出、メンバーも観客全員を座らせて、一気にジャンプさせるなど、3日間のラストスパートの盛り上がりをステージと客席が容赦なく、けしかけ合い続ける、嵐のようなロックンロール・パーティーだった。


そして、いよいよグリーン・ステージの大トリのビョーク。これまで数々の歴史的名ライブをこのフジで観せてきたビョークだが、今回は最新アルバム『Vulnicura』の世界観とメッセージを支えるのは、左右に配置されたストリングスと、マニピュレーターとしてステージに立ったアルカが操るサウンド、そして映像や花火の演出とのコンビネーションで表現。
それによってビョーク自身の歌と存在感の担う比重が増しているのだが、全身蛍光ピンクで、顔を薄い膜のような布で覆った衣装の強烈なインパクトも相まって、1曲目“Stonemilker”からアンコールラストの“Hyperballad”まで、トータルでビョークの肉体性そのものが巨大な幻想世界に感じられるような、あまりにも深遠な美しさを持つアクトだった。


そんなビョークの魂の深いところに響き続ける余韻を、ひとまず吹っ飛ばすくらいの無茶苦茶楽しいステージをホワイト・ステージで展開したのがメジャー・レイザー。レゲエを始め、あらゆるジャンルの音楽とEDMを異種配合しながら今のポップ・ミュージックのど真ん中を破壊力満点で突き進む楽曲をド派手な演出、セクシーなダンサーたちのパフォーマンスと共に次々と繰り出し続ける。
“Cold Water”で始まり、“Lean On””Watch Out For This”で完全に観客のエネルギーが燃え尽きるまで、アゲ要素を絶え間なく投下し続けた、フジの伝説に残るバカ騒ぎのパーティーでバッチリ今年のフジをシメたという人も多かったはず。


(古河晋)

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