The1975、22曲81分の超絶傑作ロックを取り巻く全ての壁をぶち破った『仮定形に関する注釈』、答えはここに!

『rockin'on』2020年6月号より

でも実際は、大胆(Bold)になろうとしてるんじゃなくて、退屈(Bored)を回避しようとしてるんだよ

結成から17年、アルバム・デビューから7年。ついにThe 1975がロッキング・オンの表紙を飾ってくれた。前作『ネット上の人間関係についての簡単な調査』で2010年代を体現するロック・バンドになった彼らはいま、待望のニュー・アルバム『仮定形に関する注釈』によって2020年代のロック・バンドのあるべき姿を真っ先に例示するフロントランナーになろうとしている。

The 1975を知ることは、時代のいまを知ることでもある。彼らは常にそういうバンドだった。だからこそ、2020年代もこうして、The 1975と共に始めるべきなのだ。

今回のThe 1975総力特集では、新作インタビューとオールキャリア・インタビューの2本立てでマシュー・ヒーリーがThe 1975の過去と現在を語り尽くしている。彼の証言からは「ロック・バンド」と「アルバム」のアイデンティティが急速に見失われていったこの10年間を、その曖昧なアイデンティティの表層を軽やかに遊び、ディープに相対化することによってサバイブし、モザイクの時代に相応しい傑作ポップ・アルバムを作ることに成功したこと――つまり、The 1975が体現した2010年代のロック・バンド像とはいかなるものだったのかが浮かび上がってくる。

『ネット上の人間関係〜』と『仮定形に関する注釈』の2連作に共通するテーマは、一言でいうならば「問いかけ」だ。マット曰く『ネット上の人間関係〜』は世界への問いかけのアルバムであり、『仮定形に関する注釈』はその世界に生きる自分自身への問いかけの一作だった。

ただし、「一貫性がないという一貫性」に貫かれた『仮定形に関する注釈』のサウンドと歌詞は、彼らの問いかけには答えがないことも暗示している。そう、砕けて散り散りの破片となった鏡に映し出される自分の輪郭は、どこまでも抽象的なものにならざるを得ないように。それでも彼らは問いかけつづける。

アイデンティティ同様にひとつの答えを見失って生きているという認識だけが、この世界の唯一たしかなリアリティだからだ。そんな同作のモードは、未曾有のパンデミックによって否応なくひとりひとりの内省が求められる現在に驚くほど馴染むし、これからのニュー・ノーマルとなる予感に満ちている。The 1975はいま、2020年代の命題を私たちに差し出したのかもしれない。(粉川しの)


また、The1975の巻頭特集には、以下のコンテンツが掲載されている。

★注目新作『仮定形に関する注釈』のすべてを語った独占インタビュー
★マシュー・ヒーリー、オールキャリアを語り尽くした独占ロング・インタビュー
★The 1975 レア・フォト・ギャラリー
★徹底論考:The 1975が成し遂げた革命の正体
★The 1975完全ディスコグラフィー


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『rockin'on』2020年6月号