サウンドは変幻自在だが、一貫して抒情的な楽曲を歌い続けるシンガー・ソングライター、lukiのデジタル・アルバム『ユナイタマ』が2月24日にリリースされる。本作は、彼女の曲作りの粋を凝縮した、豊潤な楽曲集となっている。たとえば、2013年の初のミニ・アルバム『パープル』でlukiはメロディの聴きやすさと、距離感に戸惑いながらも相手に呼びかけようとする独特な歌詞的世界をモダン=オルタナ・ロックとして展開してみせていた。それが14年の『東京物語』ではエレクトロ・ポップとしてそのメロディと歌詞を前面に打ち出し、15年の『黒うさぎ』ではそれをさらにモダン・ロックとかけ合せていく試みが続いた。
しかし、16年の『その瞬間、見えた風景。』では楽曲本位に音が自在に鳴らされ、自身の歌と楽曲の魅力をいかようにでも堪能させられる境地に至ったのだ。これをさらに18年の『ACTRESS』と19年の『新月とコヨーテ』で展開してきたが、今回の『ユナイタマ』は、そのポップ・センスとサウンド、そして歌詞的世界の情感をこれまでになかったような普遍的な音として鳴らす名作となっている。
先行リリースされた“瓶とスコール”はまさにそれを体現していて、曲のテーマである歌い手が必要とする浄化をこの曲の音そのものが包み込むようにもたらすところが素晴らしいし、その音が1月に逝去したフィル・スペクターのほぼ直系のサウンドになっているのが見事と言うしかない。もちろんそれはただのレトロではなく、アメリカーナも昇華したモダン・ポップとして鳴っていて、べとつくような身と心の汚れを洗い流していくという癒しをリアルにかつ情感豊かに体現していてすごい。続く“アイスグリーン”はよりモダンでコンテンポラリーな展開で、不気味なまでに美しい質感をCGで表現したMVも必見。
さらに、70年代ポップ・サウンドを甘いメロディとともに打ち出す“ユナイタマ”もまた病み憑きになる曲だ。身体を半分に引き裂かれたユナイタマ(ジュゴン=人魚)の伝説を、現実の歌い手である自分と交錯させる場としてこの甘くノスタルジックでポップな音を鳴らし、歌い手のコミカルでどこまでも前向きな思いへと織りなしていくところがこのポップ・ソングの無敵さなのだ。 (高見展)
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