レディオヘッド、ディアンジェロからビートニク詩人まで――多様なルーツを軽やかに呑み込んだ待望のファースト。気鋭のSSWアーロ・パークスが綴る、10代のクロニクル

『rockin'on』2021年3月号より

「私自身の曲であり、そのストーリーの中に自分自身のストーリーを見つけてもらいたいんだよね」


弱冠18歳でのデビュー、ビリー・アイリッシュとも比較されるポエティックな歌声と、10代の憂鬱をリアルな情景に乗せていくストーリーテラーとしての才能を発揮したドリーミーなソウル・サウンドで、次世代を担う存在として熱い注目を集めてきたアーロ・パークスの待望のデビュー・アルバム、『コラプスド・イン・サンビームズ』がついにリリースされた。過去のシングルの魅力だったベッドルーム・ポップの親密さはそのままに、アルバムに至ってプロダクションは驚くほどカラフルかつ重層的に作り込まれており、期待を遥かに上回る仕上がりになっている。作り込んでなお余白が残されているのも素晴らしく、彼女はその余白をまるで映画館のスクリーンのように用いて、報われない恋、すれ違う想い、セピアに色褪せるにはまだ少し時間のかかる痛みの数々を刻んだ言葉を投射していく。確かな肌触り、温もりと共に立ち上がってくるそれは、まさに五感を研ぎ澄まされる体験なのだ。(粉川しの)



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『rockin'on』2021年3月号