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トラヴィス・バーカー(ブリンク182)
幾多のコラボやリミックス・ワークによってもはやドラマーは「かつての本業」と化し、売れっ子のソングライター、プロデューサーとして認知されるようになったのが直近15年のトラヴィス・バーカーという人のキャリアだ。
TRV$DJAMとしての活動やリル・ウェインらとのコラボ、リアーナやエミネムのリミックスまで、ヒップホップと深く結びついた彼のその活動が、リル・ピープやXXXテンタシオンのようにエモ、グランジから多大な影響を受けたラッパーたちの台頭の背景として非常に重要だったことは言うまでもない。
そもそもジャズやファンクを原点に持つ非パンク的なドラマーである彼が、2000年代パンクを代表するブリンク182で叩いていたことがユニークなのかもしれない。トラヴィス加入後最初のアルバム『エニマ・オブ・ザ・ステイト』は彼らが怒涛の売れ線ポップ・パンクへと舵を切った作品だが、その成功はトム・デロングの甘いハイトーン・ボーカルの叙情と対極を成す、無情なほど正確無比に打ち込まれる彼の高速ドラムスの安定感なくしては生まれなかったものだ。
後年、トムは「ここで自分がチャレンジできることがなくなった」と脱退の理由を語っていたが、彼の歌声がポップ・パンクの思春期性と運命を共にした一方で、トラヴィスがリズムとして解析された「エモさ」をヒップホップに移植することでサバイブしたのも、対照的だった。(粉川しの)
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