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ラーズ・ウルリッヒ(メタリカ)
ラーズ・ウルリッヒ、この男がいなかったらメタルの歴史はまったく違ったものになったはずだし、今日のメタル・シーンの状況も大きく変わっていただろう。
もともとプロ・テニス・プレイヤーを目指し(父親もプロだったからエリート教育でもあった)デンマークからカリフォルニアに引っ越してきたもののジェイムズ・ヘットフィールドとの出会いから完全に音楽にのめり込むようになる。ふたりが一致したのは、より尖った極端な方向に向いたサウンドの追求で、スラッシュ・メタルと呼ばれるようになる世界を確立したが、そのバンド・アンサンブルの基盤となっていたのが、ラーズの繰り出すツー・バスで激しい低音が常に襲いかかり、そこに細かく手数の多い、変拍子も交える高速ドラミングだった。
もともとディープ・パープルのイアン・ペイスやブラック・サバスのビル・ワードに影響されてドラムを始めNWOBHMのサウンドにも浸かることで、より先鋭化していきタイトで尖ったスタイルを作りあげ、創世記メタリカを経てジェイムズ、カーク・ハメットのギター陣、亡くなったクリフ・バートンのベースと一体化することで無二のサウンドが確立された。
もちろんテクニックも凄いのだが、ラーズがしばしば言うのは、自分はそうしたテクニシャン志向のプレイヤーではないということ。それ以上にバンドの一員であることにこだわり、その中での役割としてのドラミングを意識するとしているのだが、それは彼が曲作りにも深く関与しているからで、実際、今回の特集でリスティングされたラインナップでも彼ほど曲作りにまで関わっている人はいないのじゃないだろうか。
だからこそ積極的にインタビューに応えるスポークスマン的な役割を果たしてもいるし、トータルな流れや動きを先導するプロデューサーの立場でしばしば動く。サウンドの要のドラマーであると同時に、メタリカという一種、共同体的な要素をとても重要視するバンドの軸にもなっているわけだ。
グループが巨大化し、また年齢と共にプレイ・スタイルも微妙に変わり、よりシンプルな音を意識しているが、それもまたかつての極限まで追求し尽くした経験があるからこそ説得力を持つわけで、『メタル・マスター』はその究極だ。(大鷹俊一)
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