【知りたい】CLAN QUEENはこの5曲を聴いてハマれ!

「アートロック」を標榜するユニット・CLAN QUEEN。「アートロック」とはすなわちどういうことかというと、楽曲・ライブ・ビジュアルのトータルで確固たるコンセプトを示していく姿勢のことを意味する。ソングライティングを担うAOi(G)はもちろん、yowa(Vo)もマイ(B)も曲が伝えるメッセージをとことん思考し、歌や演奏や映像を通して意味を与えていくからこそ、CLAN QUEENの楽曲には強さがあるのだ。

クールなビジュアルとは裏腹に熱いライブパフォーマンス。肉体的なバンドアンサンブルとポップな打ち込みを自由に行き来するサウンド。そして、概念的でありながらもAOiのパーソナルな人生経験に裏打ちされた歌詞──今回はそんなCLAN QUEENの多面的な魅力が伝わるであろう5曲を紹介。この記事を通して、一度足を踏み入れると決して抜け出すことはできないCLAN QUEENの世界に招き入れたいと思う。(畑雄介)


①踊楽園

ノンプロモーションにもかかわらず、Spotifyのバイラルチャートで最高6位にチャートイン。歌唱は激しくも声に品のあるyowaの歌にしろ、聴いていると心がぐつぐつと沸騰してくるファンキーなアレンジにしろ、既に只者ではない才能を感じさせる。マイがCLAN QUEENのすべてのMVの監督を務めているというのも驚きだが、この曲のMVではなんとyowaが透過した画像をマイとAOiがコラージュで動かしたというDIYっぷり。「愛とは何か」を問いかける1stアルバム『VeiL』において、《恋って言うから/愛に来たんだって/その重さじゃ/釣り合わないのかい?》というフレーズが、どう足掻いても完璧な均衡はあり得ない恋愛感情を秀逸に言い表している。

②天使と悪魔

他者を愛するということは自己を滅することと同義ではないか、という「愛」の根源にまで肉薄する楽曲。その壮絶なテーマとは裏腹に、ピアノとグロッケンによる軽やかなイントロ、心の動きをビートで表現するドラム、美メロを響かせるサビなど、サウンドはどこまでもキャッチーだ。ブリッジの《私達の存在は/天使と悪魔みたいね/自分ごと投げ出してまで/君を救えはしない》というラインでは、yowaとAOiの引き裂かれそうなユニゾンによる歌が、《好き》と《嫌い》の間にある言いようのない感情に輪郭を与えている。

③求世主

CLAN QUEENはこの曲で、「自分らしさとは何か」をひとつのテーマにした2ndアルバム『NEBULA』へと物語のページをめくった。誰からも求められる存在である救世主が、誰も救ってはくれない苦悩の先でひとり《私は誰?》と問いかける──という悲劇によってえぐり出されるのは、欲にまみれた人間の業である。ライブではサビの《メーデーメーデー》に合わせてまさに助けを求めるかのように拳が突き上がり、観客も“求世主”の世界に取り込まれていく。

④紙風船

AOiが自由に筆を走らせたこの超絶技巧バラードに、マイはグルーヴィーなベースで、yowaはエモーショナルな歌で立ち向かい、見事に曲を自分のものにした。イントロで躍動するスラップベースも、2オクターブを超えるメロディに等しく命を吹き込む歌も、誰よりもAOiを理解するふたりだからこそできる表現であり、CLAN QUEENが「バンド」であることの意味を体現している。《たまゆら》《冬ざれ》のような趣深い古語に、《可塑性》《フロギストン》のような科学用語が入り交じるAOiらしい語彙で紡がれた別れの物語が、頼りなく空に浮かび、地面に打ち付けられぺしゃんこになった“紙風船”のイメージとともに心を切なさで満たす名曲である。

⑤チェックメイト

アルバム『NEBULA』のプロローグを飾る楽曲。“チェックメイト”というチェスをモチーフにした曲で、マイナーキーのメロディがサビでメジャーに切り替わるというアプローチが洒落ている。2番のAメロで炸裂するAOiのラップはいつになく私小説的で、クリエイターとしての葛藤を吐露しながらも、最後は《いま、後悔の続きをしようぜ/怠惰な足で歩いていけ/壮大な自分探しさ》という力強い宣言とともに、「自分らしさ」と向き合うすべての人間を鼓舞していく。生ドラムが入り厚みを増したサウンドも、苦悩からの解放を映像で見せるMVも、表現の深度をこれまでよりもう一段階高めていて、3人がクリエイティブで追求する《終わらない旅》の果てしなさを感じさせる曲だ。


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