ボブ・ディランはポール・オースターやドン・デリーロなどのアメリカの現代作家らが名前を連ねるアメリカ芸術文芸学院の名誉会員に迎えられたことが明らかになっている。5月15日に行われた入会式典にボブは出席できなかったが、声明文で次のように感謝の意を表明している。
「芸術文芸学院の会員を構成する偉大な個々のアーティストらが揃ったこの殿堂に自分の名前も加えられることになって、とてつもない光栄だと思いますし、ありがたいことだと思っています。いつかみなさんとそちらでお会いすることを楽しみにしています」
また、学院の紹介では次のようにボブを称えている。
「ジャンルで細分化されたカルチャーの中で、ジャンル分けされることを拒んできたボブ・ディランは過去50年にわたってわたしたちの魂を検分しては探ってきました。また、曲という形式の中に露わになる詩をもって、わたしたちが想像もしなかったような言葉と感情と思想の関係を作りだし、それをレコーディングすることでわたしたちの世界と人生を変えてしまったのです」
その一方で、ピューリッツァー賞受賞作家マイケル・シェイボンはボブの入会に際してのスピーチを担当したが、そのなかで"自由の鐘"の「Far between sundown's finish an' midnight's broken tall」という歌詞の「tall」を「toe」と聞き間違えていたため、「すっかり日が暮れてから真夜中の壊れた鐘の音が鳴るまでの長い間に」という歌詞が「すっかり日が暮れてから真夜中の折れたつま先までの長い間に」という意味になってしまい、何年もの間、この歌詞の真意について悩んでいたというエピソードを紹介したとAP通信が伝えている。
なお、ボブが今回名誉会員に推挙されたのは、正会員のうちでも音楽部門か文芸部門か判然としないという声が挙がったからだそうで、そこでメリル・ストリープ、ウッディ・アレン、マーティン・スコセッシらと同じ名誉会員に推されることになったという。学院の会員のうちでも、名誉会員は総勢15名を超えることのない狭き門となっている。