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誰も観たことのないセッションが観られる。そういう意味ではこの3日間でも、最も破壊力の大きなステージのひとつがこれだ。だいたい今日のお客さんに、ゲストの山本譲二を生で観たことがある人、ほぼいないと思うし――とか考えていると、さっそく流れ始めたSEは青江三奈の「伊勢佐木町ブルース」。笑いと手拍子が巻き起こったステージに現れたのは、勝手にしやがれの5人と怒髪天の増子さん以外の3人。そしてイントロに続いて、首にピンクの花を巻きつけて登場した増子さんが歌い始めたのは、越路吹雪の“ろくでなし”だった! 爆笑と共に超豪華なカラオケ状態の1曲が終わると、「こっちじゃない! こっちの“ろくでなし”じゃない!」と1曲分使ったネタふりだったことを明かして、怒髪天のほうの“ロクでナシ”へ突入!「ROCKでない奴ァ ロクデナシ」の必殺コール&レスポンスが炸裂し、続く3曲目はメンバー4人だけで、軽快なパンクビートとブルージーなギターがビシビシと突き刺さる、一週間の労働者アジテーション・ソング“労働CALLING”へ。大物ゲスト登場を待たずして、会場は沸騰寸前の盛り上がりである。

続くMCで増子さんが「今日は、完全に昭和歌謡ショーです! ここから、信じられないほどの年末感が君たちを襲うことになる」と告げてもう1曲“キタカラキタオトコ”で場を温めると、ついに「ハンっパねえぞ? オラわくわくすっぞ? それではお呼びいたしましょう」という言葉で迎え入れたのは、光り輝くヒョウ柄のジャケットを着た山本譲二! ハンドマイクでゆっくりと歩きながら、堂々と歌い上げる“みちのくひとり旅”は、まさにこのフェスの「すばらしければ何でもあり」をひとつ更新する伝説的な瞬間だった! 歌い終わって、客席に数回頭を下げて、去るのかと思いきや――、胸に「アニキ!」と書かれたTシャツを着た大勢のコーラス隊が登場。全員で歌うのはなんと怒髪天の“GREAT NUMBER”である。「酒を浴びて 夢を語れ」のフレーズも、山本譲二の口から出ればまた値千金。ちなみにコーラス隊には、なぜかヒダカや高橋優、MONOBRIGHTのメンバーの姿も見える。





2曲の出番を終えた山本譲二が去ると、「いいもん見ちゃったな! 祝杯上げるか!」と言って歌うのは“酒燃料爆進曲”。そして、勝手にしやがれの5人が戻ってきて“オトナノススメ”“喰うために働いて 生きるために唄え!!”と怒髪天の黄金ナンバー連発である。はっきり言ってホーンやピアノを加えた豪華なアレンジで怒髪天の曲が聴けること自体、超レアなんだけど、いつも以上に楽しさとヤケクソな哀愁が丸裸で胸に飛び込んでくる。それはやっぱり、増子さんのあの声で歌う言葉とメロディが、増子さんそのものみたいにシンプルで強いからだろう。

そして、ラストはジャケットを黒ストライプに着替えた山本譲二、コーラス隊と共に再登場である。全員で歌った永遠の名曲“上を向いて歩こう”は、まさにすべての人に元気を届ける極上のひと時であった。場内いっぱいに響き渡る手拍子の中、曲が終わると、増子さんから「今日から新しい年だ。やり直すぞ! 俺たちはやり直すぞ!」という力強い一言があり、なんと山本譲二の貫禄の一本締めでライブはフィニッシュ。「怒髪天と知りあえて、今しみじみよかったなと思っています。ありがとうございました。では、リーダーからのご指名でございますので……」という言葉に続いた御大の一本締めの前口上は、堂々の迫力だった。まさに、記憶に焼きつく最高の幕切れ。どうもありがとうございました!(松村耕太朗)





◆ 怒髪天
ゲスト・アーティスト:山本譲二 / 田中和、福島忍、田浦健、飯島誓、斉藤淳一郎(勝手にしやがれ)

1 ろくでなし(越路吹雪) w/ 田中和、福島忍、田浦健、飯島誓、斉藤淳一郎(勝手にしやがれ)
2 ロクでナシ
3 労働CALLING
4 キタカラキタオトコ
5 みちのくひとり旅 w/ 山本譲二 / 田中和、福島忍、田浦健、飯島誓、斉藤淳一郎(勝手にしやがれ)
6 GREAT NUMBER w/ 山本譲二 / コーラス隊
7酒燃料爆進曲
8 オトナノススメ w/ 田中和、福島忍、田浦健、飯島誓、斉藤淳一郎(勝手にしやがれ)
9 喰うために働いて 生きるために唄え!! w/ 田中和、福島忍、田浦健、飯島誓、斉藤淳一郎(勝手にしやがれ)
10 上を向いて歩こう w/ 山本譲二 / 田中和、福島忍、田浦健、飯島誓、斉藤淳一郎(勝手にしやがれ) / コーラス隊