USハードロックシーンを長年牽引し続ける絶対王者:クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(以下QOTSA)。
これまで世界各国さまざまなステージで聴衆を沸かせてきた彼らが次なる舞台として選んだのは、約600万人もの遺骨が眠るパリの地下納骨堂:カタコンブ・ドゥ・パリだった。
この前代未聞のパフォーマンスを記録した映像作品『Alive in the Catacombs』、そしてプロジェクトが実現に至るまでを追ったドキュメンタリー映像が日本でも限定上映されるというので足を運んだ。
実はこの上映イベントが開催される前に、rockin’on編集部ではQOTSAの主格であるジョシュ・ホーミにオンラインインタビューを敢行しており、その中で彼はこう語っている。
「とにかく俺にはこの、自分が興味のあるプロジェクトをストップする理由がなかった」――
上映が始まると、カタコンブ・ドゥ・パリの重く湿った地下通路が映し出された。反響する弦楽器のストリングスと歌声、そして時折の静寂の中、壁を伝う地下水の有機的な音響。地下墓地といえど、そこに嫌な緊張感はなく、なぜか親密で温かい気持ちが湧き上がってきた。場所柄、今回のギグは派手なバンドセットではなく、エレクトリックピアノに弦楽カルテットという無駄を削ぎ落としたミニマルな仕様。そのシンプルさがかえってジョシュの味わい深い歌声を極限まで際立たせている。
600万体もの聴衆に囲まれながら、彼らの演奏は愛と敬意を持って地下空間に響き渡っていた。
その後続けてドキュメンタリー短編映像が上映された。ジョシュ自身、カタコンブでの演奏を長年切望し続け、長期間にわたってパリ当局と交渉を続けていたそう。ようやく念願叶ってギグを行うに際しても、ジョシュはもともと抱えていた体調不良が悪化し非常に困難なコンディションでパフォーマンスに望んだ様子が記録されている。
ギリギリの状態を押し切って実現した今回のパフォーマンスは、ロックスターとしてのQOTSAのもう一つのチャンネルを観たような気がした。
ライブ音源『Alive in the Catacombs』は、すでにデジタル/ストリーミングで配信中。フィジカル盤CD/LPは9月26日(金)より日本限定で発売中。そして、ジョシュ・ホーミの貴重な最新インタビューも近く本誌にて掲載予定なのでお楽しみに。
きっと誰もが経験したことのないであろうこのプリミティブなライブ音源を、ぜひ皆さんにも体感してほしい。(土屋聡子)