バー・イタリアは、「バンド」というものに一片の夢も希望も抱いていない。ポストパンクの鬼才異才がひしめき合うロンドンのバンドシーンにおいても、彼らほど孤立した個性は他にないし、過去に「ロンドン云々で括られたくない」という発言があったのも頷ける。
ポストパンクならぬ「ポストバンド」バンド、それがバー・イタリアだ。
ロックバンドを名乗るだけで、既存のレールに乗って獲得できるイメージやジャンルに、彼らはまったく興味がないということを、待望の新作『Some Like It Hot』を聴いて改めて思ったし、それこそが彼らの最大の魅力だと実感させる、最高のアルバムが到着してしまった。
米マタドール移籍後の第1作で、彼らのブレイクポイントとなった『Tracey Denim』と約半年の短インターバルで作り上げた前作『The Twits』は、バー・イタリアの明と暗をそれぞれ象徴する、連作のような2枚だったが、『Some Like It Hot』は、そんな過去2作の振れ幅を一枚で実現するマキシマムなアルバムとなった。
過去イチの最深部へ最鋭角で切り込んだ古のフォークや幻惑のサイケデリックと、過去最もパワフルなロックチューンが混在し、ニーナ・クリスタンテ、ジェズミ・タリック・フェフミ、サム・フェントンのシンガー&ソングライターとしての三者三様の個性差も、これまた過去最大に際立っている。
特にニーナのボーカルの七変化ぶりは圧巻で、まさに女優の風格。しかし、3人の技量が高度化し、サウンドが充実すればするほど、むしろバー・イタリアの正体は混乱していく、バンド像がアンバランスになっていくというのが本作の錯乱させられる面白さなのだ。
3人が重心と遠心の役割を絶妙にスイッチングしながら、アルバム全体に大きなうねりを生んでいく本作はシネマティックだが、タイトルがマリリン・モンローの『お熱いのがお好き(Some Like It Hot)』と同じなのも偶然ではないだろう。
マフィアに追われたふたりのジャズマンがモンロー演じるシュガーの楽団に女装で紛れ込み、ロマンスあり、笑いありの逃避行を繰り広げる同映画の過剰なまでの活力は、どこか本作に通じるものがあるから。詳細は次号掲載予定のインタビューにて!(粉川しの)
バー・イタリアの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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