滲んだ心、残る言葉、宿る魂

キタニタツヤ『ユーモア』
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時代を感じる。季節を感じる。匂いを感じる。温もりを感じる。愛を感じる。喪失を感じる。生を実感する。映画『ゆきてかへらぬ』主題歌として書き下ろされた今作には、いつになくキタニタツヤというアーティストの心が滲んでいるように思う。トオミヨウのアレンジにより一層キタニの歌心がメロディに染みつき、紡がれる《言葉》の、その奥にある《心》の、その隙間にある《ユーモア》の輪郭が鮮明に縁取られていく。彼はいつだって愛について歌ってきたし、とりわけ生と死の在り方について熟考し、死を通して生の醜さ、美しさを浮き彫りにしてきた。中原中也という天才詩人と文芸評論家・小林秀雄、女優・長谷川泰子ら男女3人の奇妙な関係を描いた映画に寄せてキタニは、「残された言葉は他者の心を撫で続ける。現代に生きる私はそういうふうに中原中也の詩に触れてきました」とコメントしている。この曲でキタニは、日常に埋もれてしまいそうな当たり前の「生」に確かな温もりを添えて、まだ見ぬ明日へ新たな息吹を繋いでいる。(橋本創)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年4月号より)


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