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いつ終わったのだろう。一応、終わったことにはしているが、本当は終わらせられていないことが生きていればどっかしらにあったりする。「終わり」は一方的に突きつけられたものか、あるいは表面的な約束で、どんなに勉強ができたり仕事ができたり締め切りを守れたりする人でも、実はその人だけの世界の中では約束を破り続けている、なんてことがあるのかもしれない。実はその人だけの、終わらせられない時間を生きているのかもしれない。この曲はノスタルジックな質感のサウンドが美しい。だが、猛烈に生々しくもある。美しく情緒的な世界を繊細に作り上げることで、その背後にある美しくないものや情緒ではどうにもならない現実すら滲ませる。このバンドが独自に進化させ続けているギターロックという手法は、そんな凄まじい表現力を持ち得ている。「終わり」の約束を守れないのは音楽と聴き手の関係も同じである。この曲は「これで終わり」と明確に突きつける。でも、聴き手である僕は何度でもこの曲を再生し、約束を破る。(天野史彬)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年9月号より)
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