【インタビュー】め組、10周年を目前に放たれた3ヶ月連続シングル。そしてバンド活動の光と影を超えてひた走る今を、菅原達也が語る!

青天の霹靂である。この取材日の前日(12月9日)に、め組からドラマーの外山宰が脱退する、という重大ニュースがあった。高度な表現スキルはもちろんのこと、め組の歌心やバンド内外の人間関係を大切にしてきた外山の離脱は痛い。しかも、め組は10周年の大きな節目に向けて勢いづいている最中だ。以下のインタビュー本文を読んでもらえればわかるように、菅原達也(Vo・G)はバンド活動そのものにも、自身の楽曲制作にも思い悩みながら、ところどころで歯切れの悪い言葉を発している。でも、目下の3ヶ月連続シングルリリースについては、そのいずれもが間違いなく素晴らしい楽曲であり、僕はストレートに思うところを伝えた。今のリアルな思いの丈を吐き出す菅原と、波乱の中を突き進んでゆくめ組を、感じてほしい。なお、この記事はダイジェスト版で、2024年12月27日発売のROCKIN’ ON JAPAN2月号に完全版が掲載されている。そちらでは今後の活動に向けた意気込みなども語られているので、ぜひチェックしていただきたい。

インタビュー=⼩池宏和 撮影=野⼝悟空 ヘア&メイク=栗間夏美 スタイリング=三宅剛


ここ1、2年というのは、め組がお客さんたちと密になって、格好つけずにフレンドリーになっていこうよ、というムードだったんです


──まず、ドラマーの外山さんが脱退を発表しました。ご本人の居ないところではあるんですけど、菅原さんの言葉で、経緯を教えてもらえますか。

はい。まあ本当に、公式コメントの文面がすべてだし詳細だし、ということなんですけど、結構長きにわたって本人が抱えていた問題だったんです。1年か2年くらいかな。ドラムスを叩いてほしい人は彼しかいないので、僕たち他のメンバーもそれに向き合っていたというか、話し合いながら、いろいろバランスを取りながら、やっていたんです。外山は気持ちがすごく真っ直ぐなので、彼が脱退を決断するタイミングがあったんですよね、1ヶ月前くらいに。組織として動いているので難しいところもあったんですけど、健康上の問題は優先順位がいちばん上ということでそこは尊重して。あとは、彼だけでなく、それと向き合っている他のメンバーのメンタルの問題というのも無視しちゃいけないな、ということがありました。COUNTDOWN JAPANへの出演も控えている中、健康上の問題に引っ張られたまま、大きなステージに立つというのは僕たちも心許ない部分があったので。しっかりマインドセットしたいなという気持ちがあって、このタイミングに脱退を発表したんです。本当に、お客さんたちには頭が上がらないんですけど。

──10周年に向けてのこのタイミングに脱退を発表したということ自体がね、相当無理してきたんだろうなって思って。

そうですねえ。ここ1、2年というのは、め組がお客さんたちと密になって、格好つけずにフレンドリーになっていこうよ、というムードだったんです。バンドもお客さんもそういうマインドで過ごしていて。

──SNSもよく動いていましたしね。

ああ、そうですね。それこそ外山が頑張ってくれていたんですけど。彼は、バンドが今がけっぷちだとか、いろんなことを赤裸々に語ってきたんです。お客さんに嘘を吐くのはよくないから、それはいいことなんですけど、昨日の脱退発表で、ああ、そういうことだったのか、って察してしまう人もいたりして。まあ、バンドの内部的にはずっと抱えていた問題だったので、寂しいとか悔しいという気持ちはもちろん大きいんですけど、外山にしても残った4人からしても、どこかスッキリしたところはあったりするんですよね。

──わかりました。外山さんには心身の健康を大切にしてもらって、ひとまずお疲れさまでした、ですね。

はい。伝えておきます。

今のめ組にはクールさは必要ない。”タソガレモード”を作っていたときは、クールであることが美意識ではなかったんです


──ではここから、3ヶ月連続リリースの話題に入りましょうか。10月に“タソガレモード”、11月に“はっとすりゃ喜劇”が発表されて、この12月には最新曲“いちぬけぴ”が届けられます。まずは、連続リリースの目論見みたいなところから教えてください。

そうですねえ。ある程度、曲のストックがあって、3ヶ月連続で出すイベントにしましょうよ、じゃあ順番はどうする?みたいな話の流れがあったんですけど、『七変化』からのリード曲は“さたやみ”(『七変化』リリース直後にMV公開)が最後だったので、バンドとしてもああいうノスタルジーに浸るモードだったというか、己の内部を抉るような時期だったんです。お客さんもそういうモードに入ってくれていたので、その流れからすると連続リリースの第1弾は“はっとすりゃ喜劇”じゃねえだろうなっていうのがありました(笑)。まさに、モード的には“タソガレモード”だったんですよね。


──“タソガレモード”は7月のワンマン「ネクスト10」で初披露されて、ライブで触れたときも音源で聴いたときも思ったんだけど、いや、め組かっけえなって、率直に感じました。

ありがとうございます。BPMとか、めちゃくちゃ速いですからね。

──菅原さんは音楽的なルーツとして、UKロックのテイストを色濃く持っていたじゃないですか。でも今回はUSエモコアっぽくて、珍しい引き出しが開いたなと思いました。ストレートな曲調の中からバンドのかっこよさが見えてくる。外山さんのフィルインとかもめちゃくちゃ熱くて。

確かに確かに。速いし、こんなふうに勢いを利用してやることもこの先あまりないだろうな、って思っていたんですよ。不必要だと思っていたんですけど、やっぱりこういう曲が自然発生的に出てきたということは、利用せざるを得ない何かがあるんだろうなと思って。メンバーは1人抜けちゃいますけど、僕だけじゃなく全員がそういうモードに入っていたところで、一蓮托生な雰囲気でできたのかな。僕のイメージだと、UKロックはクールにやっている人が多い気がして。今のめ組にはそういうクールさは必要ないというか、この曲を作っていたときは、必死こいてるぐらいが丁度よかったんですよ。クールであることが美意識ではなかったんですよね。

──なるほど、気取らないかっこよさ。以前の菅原さんだったら、メロディも捻り倒していたじゃないですか。

ああ、そうですねえ。『七変化』以降、ずっとボカロを利用して作曲しているんですけど、ボカロって不思議なもんで、良くも悪くも決められたことしかできないというか、じゃあそこでどう言葉を入れます?ということぐらいしか許されていなくて。まあその制約を乗り越えるのが、次のステップだと思っているんですけど。『七変化』で、音楽的にも曲作りにおいても、良質なサンプルができたなって自負していたので、だったら写し絵のように、着る服とか髪型だけ変えてみるような作り方をしたのが、連続リリースの3曲なんです。よく言えばうまくいってるんですけど、悪く言えば0から1を生み出すような制作ではなかったのかな。でもまあ、今はこういうふうにボカロで作るのが楽しいので。

──『七変化』のときにボカロで曲の叩き台を作ったって聞いて驚いたけど、“タソガレモード”はもっとびっくりした。勢いで作った曲じゃないの?

うん。最初はもっと速かったんですよ。さすがに聴き取れないっていう話になって(笑)。ちょっと塩梅がわからなくなるくらい勢いが強かったですね。もっと速くしよう、もっと速くしよう、って。周りに言われて、はじめて気づかされるくらい。

──DAW上で作っているときから速かったんですね。メンバーはそれを聴いていたから、なおさら勢いがついたところもあるのかな。

うん。そうだと思いますね。

僕の憧れているバンドは、いろんなものを見せてくれる。それがたまに首を傾げるようなものでもいいんですよ


──じゃあ次の“はっとすりゃ喜劇”ですけど、こちらは最近のめ組が得意としているグルーヴィなディスコポップ路線。キャッチーだけどイントロからがっちりアレンジが練られていて、完成度の高いポップソングだと思います。

もうちょっと何か欲しいなっていうときに、今回もアレンジャーの花井諒さんにお手伝いしてもらいました。ダンスミュージックなんだけど、真ん中にいるやつがこう、だらしなくリズムギターを弾いている感じ、っていうアレンジの意図を伝えたら、なるほどね!ってえらく共感してもらって、それでうまくいったところがあります。

──ああ、ダンサブルなんだけど、平坦なノリじゃ駄目だったってことかな。

そうなんですよ。ベースとかはガンガンに忙しいんだけど、真ん中にいるやつがスンとして、リズムギターを弾きながら歌っている、みたいな。


──言葉の押韻が巧みにグルーヴ感を加速させているし、実はいろんなテクニックが詰め込まれた曲なんですよね。これこそ10周年のめ組だなって。メッセージとしては、《I know! 愛の正体は喜劇》っていう歌詞の最終ラインに集約されるのかなって思うけども。

そうですね(笑)。『七変化』の収録曲にも“(I am)キッチンドリンカーズハイ”っていうダンサブルな曲があるんですけど、ああいうノリというか、もう歌詞の意味とかどうでもよくない?みたいな。音楽はどこか無責任でもいいって、自分で肯定していたんですけど、聴く人からすればちゃんと意味があったほうがいいのかなって、ずっと鬩ぎ合いをしています。

──そうか。前のめりでロックな勢いに満ちた“タソガレモード”がある一方、あのリズム隊は“はっとすりゃ喜劇”のこのグルーヴ感も出せるんだぞっていう、表現の振り幅がすごい。

振り幅を見せることで偉そうにしたくはないんですけど、僕がただ飽き性なだけなんですよね。メンタル的にも“タソガレモード”みたいな曲を10曲は作れないから。でも、メンバーの個性が際立つことは、もちろんそれを美意識としてバンドをやっているし、僕だけじゃなくてみんなもっと前に出てきなよ、という気持ちはあります。あとは、これも美意識なんですけど、サザンオールスターズとか僕の憧れているバンドはこう、いろんなものを見せてくれるんですよ。そのどれもがよくて。たまに首を傾げるようなものでも、いいんですよ。やっぱりそこに憧れているんで。それは僕だけじゃなく、メンバー全員の共通認識だと思います。

誤解を招きそうなので敢えて表明しておくんですけど、外山がめ組を離れるから“いちぬけぴ”ではないです


──なるほど。そして連続リリース第3弾になるのが“いちぬけぴ”です。コミカルな遊び心に満ちた曲なんですけど、これはビビりましたね。まずはこの曲を作った狙いみたいなところから、先に訊いておいたほうがいいかな。

ああ、そうですね。誤解を招きそうなので敢えて表明しておくんですけど、外山がめ組を離れるから“いちぬけぴ”ではない、ということです(笑)。

──タイミング的にね、難しいよね。

そうなんですよ。まじか、と思ったんですけど、全然関係ないというのは、ひとつ念頭に置きつつ。で、これもあまりポジティブな制作経緯ではないんですけど、なんか、自分のやっていることに対して、だましだましやってるところがあるのかなって気持ちがあって。さっきの写し絵のたとえ話にも通じるところがあるんですけど、一瞬そんなことを思ったことがあったんです。だから、サウンド面はヘイトな感じにせず、あくまでも歌詞の中の話で、ちょっと稚拙な僕を許してねというふうに吐き出させてもらいました。とは言え、一人よがりはよくないので、《馴れ合いは慣れないやいや》というフレーズでリスナーさんとの折り合いをつけているところはあるかな。こんなこと言っておいて、アホっぽいサウンドになってると、面白いと思ったんですよね。これも憧れと言えば憧れで、アホっぽく見せたほうが賢く感じられる現象というのもあって(笑)。



このインタビューは、12月27日に発売された『ROCKIN'ON JAPAN』2月号にも掲載中!
JAPAN最新号、発売中! THE ORAL CIGARETTES/別冊Saucy Dog/Mrs. GREEN APPLE/BUMP OF CHICKEN/SUPER BEAVER/back number/UVERworld/Vaundy/Official髭男dism/宮本浩次/ねぐせ。
12月27日(金)に発売する『ROCKIN’ON JAPAN』2月号の表紙とラインナップを公開しました。今月号の表紙巻頭は、THE ORAL CIGARETTESです。 ●THE ORAL CIGARETTES 今こそ、ロックバンドシーンを背負う── 「PARASITE DEJAVU…

●リリース情報

Digital Single「タソガレモード」

配信中

Digital Single「はっとすりゃ喜劇」

配信中


Digital Single「いちぬけぴ」

配信中

●ライブ情報

「ME-GUMI LIVE TOUR 2025 MK5-マジで駆け抜ける5人組-」

2025年1月25日(土) 大阪・HOLY MOUNTAIN(OPEN/START:16:30/17:00)
2025年2月8日(土) 愛知・名古屋 ハートランド(OPEN/START:16:30/17:00)
2025年2月15日(土) 東京・渋谷 O-nest(OPEN/START:16:30/17:00)