Hump Backにとって初のフルアルバムとなる今作は、シングルリリースされた楽曲も含めた全11曲が収録されている。そして、曲の新旧問わずその全てで歌われているのは、リスナーである私たちにも身近に感じられる日常生活圏内だ。メロディもシンプルなバンドサウンドであるからこそ、歌詞が紡ぎ出す情景描写の中へもするりと溶け込んでいける。そんな心馴染みの良い楽曲たちを聴く中で、1曲目の“LILLY”を聴いて思うことがあった。作詞をした林萌々子(Vo・G)は明言こそしていないが、恐らくこの歌詞を書くきっかけになったのは、彼女の愛犬が亡くなってしまったことだろう。彼女は以前にも“ぎんのうた”(1stミニアルバム『夜になったら』収録)という別の愛犬の死を書いた楽曲を世に出しているが、哀しみを一瞬で想起させるバラードだった“ぎんのうた”に対し、“LILLY”は曲調がぐっと前向きになっている。もちろんその変化は彼女の哀しみの比重とは関係ないはずで、どちらの別れも本当に辛かったはずだ。それでも「哀しみ」に対して向き合った楽曲を以前と同じテイストに仕上げなかったのは、林自身、そしてバンド自体が日々前進していることによって強くなったからなのだろうなと思った。人間である限り出逢いと別れは一生続くし、哀しいことも嬉しいことも、奈落の底まで落ち込むことも飛び上がるくらい楽しいこともたくさんある。Hump Backはそのひとつひとつをサボらずにきちんと歌って、3人で一緒に鳴らしていこうと前向きに活動しているバンドだ。先述した変化は、そうやって実直に進んできた彼女たちだからこそ迎えることのできた、前進する為の変化のひとつなのだろう。
【今週の一枚】Hump Backのメジャー1stアルバム『人間なのさ』が何者にもなれない私たちの青春賛歌になり得るのはなぜか?
2019.07.18 12:00
Hump Backにとって初のフルアルバムとなる今作は、シングルリリースされた楽曲も含めた全11曲が収録されている。そして、曲の新旧問わずその全てで歌われているのは、リスナーである私たちにも身近に感じられる日常生活圏内だ。メロディもシンプルなバンドサウンドであるからこそ、歌詞が紡ぎ出す情景描写の中へもするりと溶け込んでいける。そんな心馴染みの良い楽曲たちを聴く中で、1曲目の“LILLY”を聴いて思うことがあった。作詞をした林萌々子(Vo・G)は明言こそしていないが、恐らくこの歌詞を書くきっかけになったのは、彼女の愛犬が亡くなってしまったことだろう。彼女は以前にも“ぎんのうた”(1stミニアルバム『夜になったら』収録)という別の愛犬の死を書いた楽曲を世に出しているが、哀しみを一瞬で想起させるバラードだった“ぎんのうた”に対し、“LILLY”は曲調がぐっと前向きになっている。もちろんその変化は彼女の哀しみの比重とは関係ないはずで、どちらの別れも本当に辛かったはずだ。それでも「哀しみ」に対して向き合った楽曲を以前と同じテイストに仕上げなかったのは、林自身、そしてバンド自体が日々前進していることによって強くなったからなのだろうなと思った。人間である限り出逢いと別れは一生続くし、哀しいことも嬉しいことも、奈落の底まで落ち込むことも飛び上がるくらい楽しいこともたくさんある。Hump Backはそのひとつひとつをサボらずにきちんと歌って、3人で一緒に鳴らしていこうと前向きに活動しているバンドだ。先述した変化は、そうやって実直に進んできた彼女たちだからこそ迎えることのできた、前進する為の変化のひとつなのだろう。