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 ゆったりとしたグルーヴに、ふわりと浮遊感あるハーモニー。辻村豪文(兄)と辻村友晴(弟)によるによる兄弟ユニット・キセルの登場で、 COSMO STAGEの空気はガラッと変わった。デビューから8年、08年には3年ぶりとなるアルバム『magic hour』をリリースした彼ら。新作からの“ビューティフル・デイ”や「数少ないキセルのダンス・チューン」という“夢のいくら”など、新旧織り交ぜたセットを繰り広げてゆく。CDJには初登場だけれど、辻村豪文・友晴兄弟の人懐っこいキャラクターと伸びやかなハーモニーは、しっかりとオーディエンスの心を掴んでいた。

 アコースティック・ギターとノコギリ(ミュージカルソウ)の不思議な音色がどこか物悲しい風景を描き出す“君と犬”、そしてラストは打ち込みのリズムに柔らかい音色が積み重なって、ダビーでサイケデリックな空間を作り出す“ギンヤンマ”。キセルの音楽には、あたたかくほっこりとした手触りと、ファンタジックな独特の美学と、切ない郷愁が共存している。それがCOSMO STAGEのフロアに、集まったお客さんたちの胸に、じんわりと染み出していた。(柴那典)