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外はすっかり夕闇が降り立った時刻だが、幕張メッセの中は今日から始まったロック宇宙のエネルギーでまだまだ真昼と変わらない蒸し暑さ。そもそも宇宙に昼も夜もありませんが。そんなタイミングで登場したINORAN。LUNA SEAというモンスター・バンドの一員でありながら、不思議な少年っぽさを今なお強く残している人で、コンスタントなソロ活動の印象もあり、今回のフェス出演にしても“さもありなん”といった雰囲気さえあったりするから、つくづく面白い人だ。
軽快なロックンロールのSEに乗って登場するや、「飛ばしていこうぜ!」の一言とともに、1曲目“Hide and Seek”で早速、熱っぽい歌声と、かきむしるように激しいギターを響かせる。ステージ一面が真っ赤なライトに照らされる中始まった“SuperTramp”はザクザクとしたギターのリズムで聴かせる疾走感溢れる楽曲で、頭を振り、全身をシェイクさせてギターを弾く姿は、LUNA SEAでの彼からは想像できない展開だろう。しかし、このやんちゃなまでにストレートなロックこそ彼のソロ活動の核となる部分で、歌声を聴いていても彼がやたら乗っているのがわかる。
最初のMCで「こんにちは、INORANです。こんなイヴェントに出ることが出来て嬉しいです」
と殊勝なところを一瞬見せつつ、続けて「盛り下げるわけにいかないんで、(急に大声で)メチャメチャにいきたいと思います!」と宣言するや、ヘヴィ・ナンバー“Your Light Is Blinding”で、場内を腰に絡みつくエロティックなグルーヴで満たし始める。そして「もっともっとジャンプしようぜ!」という掛け声で始まった“Nasty”からは絨毯爆撃のスピード・ナンバー攻勢。間奏に入るタイミングでの「ホーッ!」てなシャウトは、ロックを覚えたての若者のような初々しさで、本当にこの人の長大なキャリアを忘れてしまいそうになる瞬間も。ラストナンバー“時化”も、その勢いのまま突っ走るラウド・ナンバーで、ステージ上をくるくる回りながらギターを鳴らす姿を披露して締めるなど、短い時間ながらINORANらしさをしっかりとオーディエンスの心に焼き付けるステージとなった。(小池清彦)