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さあ、『JAPAN JAM 2011』も残すところ3アクト。今回ホスト・アーティストとしては最年長の仲井戸“CHABO”麗市が、バンドメンバー3人を連れてひょいっとステージに入ってくる。挨拶がわりの1曲目はインスト曲“Fox, trot”。息ぴったりのアンサンブルが軽快に鳴らされて、なぜか「今日も元気だご飯がウマい!」のシャウトで曲が終わると、続けて始まった “What’d I Say”ではチャボが「JAPAN JAMへようこそ! 今夜は誰とジャムろう?」と即興の日本語詞で盛り上げていく。バンドのメンバーは河村“カースケ”智康(ドラム)、早川岳晴(ベース)、Dr.kyOn(キーボード)。「仲井戸麗市BAND」として、すでにチャボとは長いキャリアを持つ熟練の面子である。

そして「普段やってない曲をやろうぜ! ここで練習の成果を試させてくれ」と言って始まったのはローリング・ストーンズ“Let's Spend the Night Together”! しかも、曲のグルーヴを完璧に血肉化しているばかりでなく「ロクでもないことばかりの毎日~」と、自作の日本語詞を乗せるチャボ・オリジナルのスタイルである。続けてプレイされたのは「君は空の上 雲の中 歩いてるのかな」と歌うジミヘンの“Little Wing”! 時に優しく、時に悲鳴のようにスウィープさせるギターの音色が、会場全体をうっとりと酔わせていく。すでに幕張は、完全に仲井戸ワールドに包み込まれてしまっていた。

と、ここで「紹介させてくれー! 俺の古い古いダチだ。弱冠17歳、無免許でバイクに乗ってる、ギターのうまい子がいるって紹介されたんだ! マイ・オールド・フレンド!」と紹介されてCharがギターを弾きながら登場する。そのままステージ中央でふたりが向きあってギターを鳴らして曲がフィニッシュすると、いよいよCharがヴォーカルを取って“Crossroads”へと突入していく。これはブルースのレジェンド、ロバート・ジョンソンの曲をクリームがカバーしたハードロックの名曲である。探り合ったり、刃をぶつけ合ったり、まさに阿吽の呼吸でふたりのギタープレイが、鮮烈かつコクの深いグルーヴを生み出していく。曲がラストに近づくと、Charがわざとチャボに体当たりして、チャボがそれをパンチで返す一幕も。こんな言い方はどうかと思うが、とにかくじゃれ合う仔犬のような、最高のふたりなのである。




そしてセットリストは、Char自身がかつてカバーしてアレンジしていたという、ビートルズ“A Hard Day's Night”、そしてオールド・スタイル・ロックンロールの “ルート66”、そして「ブルースもやってもらうよ」というチャボの一言から、10分以上のブルースの名曲“Love In Vain”へ。このふたりは、かつて1996年の野音のイベントのステージで、この曲をプレイしたことがある。僕は残念ながら見てないけれど、ふたりの脳裏にはもちろん、その時の記憶がまざまざと蘇っていただろう。ここで一際ゆっくりと、一音一音を慈しむように鳴らされたCharのギターは本当に絶品だった! チャボのスライド・ギターと絡みあって生まれるブルースなフィーリングは、恐ろしく涙腺を刺激するような美しさだった。ギターという楽器を死ぬほど愛して、その愛情が数十年の時間をかけて醸成してきた、得も言われぬ色っぽいオーラがステージ上のふたりを繋いでいた。

そしてラストは一気にテンポを上げて、チャボの曲“Free Time”でフィニッシュ! 改めてメンバー紹介を交えつつ、ワウを効かせたCharのギターが、本当はいつまでもプレイしていたいというふたりの気持ちを、いたずらっぽく代弁していたようだった。その気持ちは、今日のセッションを高らかな拍手で祝福した観客の胸にも、もちろん共有されていたはずだと思う。(松村耕太朗)




◆仲井戸麗市BAND
ゲスト・アーティスト:Char

1 Fox, trot~What’d I Say(メドレー)
2 Let's Spend the Night Together
3 Little Wing
4 Crossroads w/Char
5 A Hard Day's Night w/Char
6 ルート66 w/Char
7 Love In Vain w/Char
8 Free Time w/Char