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3日間続いた『JAPAN JAM 2011』も、ついに大トリ1組を残すのみ。どのアクトにも本当に、予想を超えた驚きと、それにふさわしい新たな音楽の喜びがあった。その記憶を噛み締めながら待つ観客たちの前で、いよいよ最後の奇跡を起こすべく、エレファントカシマシがステージに登場する。メンバー4人と、レギュラー・サポートの蔦谷好位置、ヒラマミキオを加えた6人編成で位置に着くと、宮本のブルージーなリフから「イエーーーーー!」とシャウトが響いて1 曲目は“脱コミュニケーション”! エレカシのライブが始まる時の、独特の緊張感。それに宮本自身の緊張も加わってか、異様な緊迫感がステージを包んでいる。しかし“悲しみの果て”で早くも合唱が起こり、スピードを激烈に上げながら突っ走った“戦う男”で観客から拳が突き上がると、一気に貫禄めいた迫力が会場を支配する。さらに代表曲のひとつ“風に吹かれて”で今のエレカシの「王道」を堂々と見せつけると、ここで宮本が観客にサポートのふたり を紹介して、最新アルバムからもう1曲“旅”。そして「お前らバカヤロウ! そういう歌です」と言って、なんとファースト・アルバムから“ゴクロウサン”! 20年以上前の、世間への怒りを爆発させたロックンロール・ナンバーが今もまったく攻撃力を失わない。これこそエレカシがエレカシである証拠だろう。



ここで宮本が「素晴らしいロックギタリスト、すげえぞーエブリバディ!」と紹介して、仲井戸“CHABO”麗市の登場である。そして始まったのはRCサクセションの“ブン・ブン・ブン”! チャボの奏でるギターの横で、宮本が忌野清志郎の言葉とメロディを思いっきり歌う。髪をかき乱し、シャツのボタンをこじ開け、尻を叩いて歌う、その狂気じみたテンションが、この場に懸ける宮本の思いの強さを表していた。セッション2曲目は、蔦谷好位置のキーボード に続いてチャボがギターを優しくスウィープさせて始まった“スローバラード”! 「悪い予感のかけらもないさ」と歌いあげる宮本の声を、場内は水を打ったような静けさで受け止めている。清志郎が去ってしまったこの現実の中で、どうやって前に進むべきなのか。このセッションは言うまでもなく、あれから2年を経て出されたひとつの答えなのだと改めて思う。



そして“君が僕を知ってる”を宮本がさらに熱く歌い上げると、曲の終盤で事態は急展開を迎える。「わかっていてくれる」のリフレインに――気づくと、なぜかヘルメットを被った泉谷しげるが加わっている! そして「お前ら! なんでもかんでものるんじゃねえ! この曲は黙って聴け!」と言い放って、泉谷の代表曲“春夏秋冬”へ。演奏は、かつてチャボも参加していた泉谷のバックバンド、LOSERのアレンジ。チャボと泉谷は勝手知ったる呼吸でギターを掻き鳴らし、宮本と泉谷は肩を組み、顔を寄せ合って一緒に歌った。チャボのスライドギターが炸裂し、宮本はタンバリンを打ち鳴らし、ステージの上は一気にグランド・フィナーレにふさわしい祝祭感を増していく。

続けて泉谷の代表曲“翼なき野郎ども”を泉谷がリードギターを取って披露すると(曲中のギターソロを宮本の指示で石くんが弾いて、泉谷がキレる、という一幕もあり)、チャボがリード・ボーカルを取って歌うRCのロックンロール・ナンバー“チャンスは今夜”へ。チャボ、宮本、泉谷の3人で交代にボーカルを取り、演奏はチャボ、泉谷、石くん、ヒラマミキオの4人のギタープレイの応酬で豪快にフィニッシュを迎えた。ここで宮本が改めてチャボと泉谷のふた りを観客に紹介して、本編ラストは石くんのギターリフからエレカシ“ガストロンジャー”へ! 真っ赤なライトに照らされて、かつてない厚みを増した轟音の中で宮本に続いて泉谷も激しくアジテーションすると、すでにテンションが最高潮に達していたフロアにも、「オーオーオーオー!」の大合唱が巻き起こった。「あいつらの化けの皮、剥がしに行こうぜ!」と宮本が叫び、ステージ上でも全員で拳を突きあげて本編は終了。



で、いったん全員が袖に去って、観客から盛大なアンコールが――と思ったら、泉谷、引っ込みませんでした。「なんでまたすぐ出てくるのにこいつら(観客)待たせなきゃいけないんだよ!」とライブのお約束をあっさりぶっちぎって、“ラヴ・ミー・テンダー”を鼻歌しながらアンコールを急かす泉谷。もちろん他のメンバー、すぐに全員出てきました。場内は大歓声。そして「日本で一番有名なロックナンバーです。 今日はホントみんな、ありがとう!」と叫ん だ宮本の「OK、チャボ!」の合図でいよいよグランド・フィナーレ“雨あがりの夜空に”へ。チャボから始まって、宮本と泉谷が順にマイクを握り、場内は割れんばかりの大合唱。渾身のエネルギーで歌い終わると、宮本は白シャツの前を完全に開け放ち、全員が最高の笑顔でステージを去った。本当に忘れられない幕切れになりました。最高のショウをありがとう!(松村耕太朗)



◆エレファントカシマシ
ゲスト・アーティスト:仲井戸“CHABO”麗市 / 泉谷しげる

1 脱コミュニケーション
2 悲しみの果て
3 戦う男
4 風に吹かれて
5 旅
6 ゴクロウサン
7 ブン・ブン・ブン w/ 仲井戸“CHABO”麗市
8 スローバラード w/ 仲井戸“CHABO”麗市
9 君が僕を知ってる w/ 仲井戸“CHABO”麗市 / 泉谷しげる
10 春夏秋冬(LOSERバージョン) w/ 仲井戸“CHABO”麗市 / 泉谷しげる
11 翼なき野郎ども w/ 仲井戸“CHABO”麗市 / 泉谷しげる
12 チャンスは今夜 w/ 仲井戸“CHABO”麗市 / 泉谷しげる
13 ガストロンジャー w/ 仲井戸“CHABO”麗市 / 泉谷しげる

[ENCORE]
14 雨あがりの夜空に w/ 仲井戸“CHABO”麗市 / 泉谷しげる