JAPAN JAM 2012、2日目のトップを飾るのは中田裕二。事前の予告は「カヴァー主体のライヴ」。もともと、椿屋四重奏の頃からカヴァーやっていたし、ソロになってからもアコースティック編成で「SONG COMPOSITE」というカヴァー曲中心のシリーズ・ライヴを不定期に行っている彼ですが、ギター:カトウタロウ(ex.BEAT CRUSADERS)、ドラム:小松シゲル(NONA REEVES)のトリオ編成で、それをやるのは初めて。
1曲目、中田アコギ、タロウもアコギ、ドラムは当然小松、という編成で始まった1曲目は、昨年11月リリースのファースト・アルバム『ecole de romantisme』収録のオリジナル・ソング“ベール”。すっごい吸引力を持つあの歌でフロアをぐっとつかんでから、中田、MC。 中田「JAPAN JAMというとですね、豪華なゲストが……いや、ふたりが豪華じゃないってことじゃないんですけど(笑)」タロウ「薄々感じてた」小松「地味でごめんね」中田「いやいや……えーと、いろいろ声かけたけど、全滅、ということで(笑)」などと、3人がかりの自虐的なMCで笑わせたあと、「SONG COMPOSITE」はいつも弾き語りだけど、それをバンドでやってみたくてこの3人で「COMPOSITE 3」を結成した、という本当の理由を明かしてから、次の曲へ。 坂本冬美の“また君に恋してる”だ。歌い終え、曲の説明をしているうちに失言しそうになりグズグズになっていく中田に、タロウがツッコミを入れる。さっきの自虐MCもそうだけど、このふたりの掛け合い、妙に形になっていておもしろい。なんか、ずっと一緒にバンドをやってきたみたいな阿吽の呼吸。と、感心していたら、タロウ「こんな口きけるほどほんとは仲よくないんだよね、まだ」中田「そんなことないですよ! まだ1回も飲みに行ってないじゃないですか!」タロウ「ねえ?」とまたふたりでボケ合いになり、その話の流れで予定になかった“ワインレッドの心”を中田がちょっとだけ歌ってから、タロウが選んだという次のカヴァー曲へ。 アン・ルイスの“六本木心中”。おおー。1コーラス目はタロウが、2コーラス目は中田がヴォーカルをとり、サビはふたりでハモって合いの手コーラスの「DON’T YOU KNOW?」は小松が入れる、という総力戦。オリジナルは8ビートだけどリズムをシャッフルに変更、ベースレス、ギター2本で両者とも弾きまくり。かっこいいこれ! フロアから歓声がとぶ。 続いてはこれも横ノリのロックンロールに生まれ変わった沢田研二の“カサブランカ・ダンディ”……いや、元から横ノリか、この曲は。でもこのメンツでやると、えらいハードなことになっていて、めちゃめちゃかっこいい。今度は1コーラス目を中田が歌い、サビは全員、2コーラスでタロウが歌ったと思ったら、次は小松シゲルがヴォーカルをとる。「全員が歌うバンド」というコンセプトのようです、どうやら。 にしても、タロウくんはビークルでも時々ヴォーカルをとっていたので(“I Wanna Go to The Disco”という曲が特にすばらしいです)驚きませんが、小松シゲル、異様に歌うまくてびっくり。すみません、知りませんでした私、こんなに歌える人だってこと。思わず、己の詳しくなさを恥じました。
続いては「10代の人、います? (挙手するフロアを見て)知らないよねえ」と前置きしつつ、中田がギターをベースに持ち替えて、南佳孝の“モンロー・ウォーク”へ。私は知ってます、40代なので。1コーラス目は中田裕二、もう、ほんっとずっぱまり。すばらしいとしか言いようなし。2コーラス目はタロウくん、これはちょっとさすがに歌い慣れてないかな……と導入部では思ったが、中盤の「声をふわーっとのばす感じ」あたりから「おお、南佳孝っぽい!」と言いたくなる素敵な感じに。シメの小松シゲルの歌は、それに輪をかけて佳孝してました、声のエッジ部分が。完璧。
そして、サンバ/ラテン・バージョンにアレンジされた“スローモーション”(中森明菜のデビュー曲)を経て、次は最後の曲。同じくラテン、ただしこれは原曲もラテンっぽい“みずいろの雨”(八神純子)だ。“また君に恋してる”もこの“みずいろの雨”も、以前の「SONG COMPOSITE」でもやってる曲だけど、「この3人でやるとこんなことになるのか!」というインパクト、すごい。ハネるリズム、サビの分厚い三重コーラス、弾きまくりなギターソロ(byタロウ)。うわあ。めちゃめちゃいいんじゃないこれ? とびっくりしているうちに、あっという間に終わってしまった。
とりあえず、ほんとに、予想外&予想以上なことが多いセッションでした。いや、セッションじゃないか。バンドか。また観たい。(兵庫慎司)
1.ベール
2.また君に恋してる
3.六本木心中
4.カサブランカ・ダンディ
5.モンロー・ウォーク
6.スローモーション
7.みずいろの雨