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昨年は藤井フミヤを招いてセッションをやる、と事前に告知し、まさかの“TRUE LOVE”など名曲の数々をプレイしてオーディエンスを狂喜させた上に、予定外の奥田民生まで加わる、というサプライズ満載のステージを見せてくれたトライセラ、今年相見えるゲスト・アーティストは杏子。ちょっと前に、トライセラがアコースティック・ライヴのゲストとして彼女を招き、一度実現している顔合わせだけど、バンド・セットでは初めて。というか、その時に「いつかバンド・バージョンでもやりたいですね」とか言っていたら、JAPAN JAMの話があってそれが早くも実現、ということだったようです。




まずトライセラのステージ。1曲目は2010年のアルバム、オリジナル・アルバムとしては最新作の『WE ARE ONE』のトップ・チューン、“あのね Baby”で、ハード&ラウドにスタート。いや、ハード&ラウドなのはイントロ&間奏で、和田唱の歌が入るとポップかつ華やかになる、でもギター&ベース&ドラムはそのまま荒れ狂いっぱなしであって、要は「王道トライセラ」「トライセラの最強ポイント」な1曲で始まった、ということです。続いてはそのまま『WE ARE ONE』の2曲目、モッズの「パンクのルーツ」要素と「根っこはR&B」要素のうち後者にフォーカスした(かどうかはわかりませんが私はそう思います)“Neo Neo Mods”へ。さらに間髪入れず、おお、1stアルバム収録の、というか3rdシングルの“ロケットに乗って”だ。フロアから腕、上がる上がる。 今日もいい調子だなあ。と思っていたら、以上の3曲を終えたところで和田唱、「ヤバイね! いいよいいよいいよ! OK! TRICERATOPSです!」。ご本人的にもいい調子な実感、あるようです。
スーツがキツいとか、JAPAN JAM、去年にひき続きの出演を光栄に思っているとか、「姫の登場までしばしお待ちを」とかいう言葉のあと、“GOTHIC RING”へ。ミドル・チューンというか、前の3曲のようなかっとばし系の曲ではないが、演奏がめちゃめちゃグルーヴィー。「腰にくる」とはまさにこのこと。このバンドのリズム隊、優れてるよなあ、そりゃあっちこっちからオファーくるよなあ、と、改めて思う、つまりその真価がよくわかるのは、どっちかというとこういう「抑え目」な曲の時です。そして「特濃のブギーをポップ・ミュージックとして成立させる男」和田唱の真骨頂、“Believe The Light”。10年以上前、LISAをフィーチャリングしてこの曲がシングル・リリースされた時はファンクっぽく感じたけど、今日はとてもブギーな仕上がりでした。かっこええ。後半、吉田佳史ドラムソロ→和田唱ギター・ソロ、と、そのプレイヤビリティの高さを見せつけて、トライセラ単体のステージはシメ。



「お待たせいたしました。ここでじゃあ、伝説の姫を呼んでしまいましょうか!」「呼ぶよ! レディース&ジェントルマン! 杏子!」という和田の紹介で、杏子、オンステージ。
「TRICERATOPS、最高! TRICERATOPS、かっこいい! でも、そういうかっこいい男ほど、いじめたくなっちゃう。いじめてもいいですか?」。うわあ、そういうフリで来たかあ。それを受けて始まったのは、そう、“イジメテミタイ”。元はスガ シカオの曲、そのあと杏子もカヴァー、それから福耳でも確かやってましたが、スガ シカオが書いただけあってどファンクなこの曲も、トライセラがやるとハードロック&ブギー成分が入る。超かっこいい。杏子さん、和田との掛け合いのところで彼の頭に手を置いたり、フロアに背中を向けて歌ったり、ギターソロで和田にからんだり、もう一挙一投足が、ヤバいです。華ありすぎて。で、歌もすげえ。私、前にJAPAN JAMブログで「とんでもねえ声が出るとかパワーでもってくとか、そういうタイプのヴォーカリストではない」とか書いたんですが、すみません、撤回します。ヤバいくらいの爆発力、声。

杏子「みんなも、こどもの日にこの暗い闇の中にようこそ!」和田「そうだね、そういえば。じゃあ次は、こどもの日に大人の歌を」という紹介で、ジョン・レノンのカヴァー、“I’m losing you”へ。ハットをかぶった杏子が1コーラス目を、和田が2コーラス目を歌う。これもかっこええ。というか、渋い。歌も演奏もブルースの世界に突入してて。
MCをはさんで、ブルースの次はジャズのスタンダード・ナンバー、“LULLABY OF BIRDLAND”。杏子のヴォーカルがほんともう「ただの本物のジャズ」でびっくり。ほんと歌えるなあ、この人。今さら感心しててどうする。この曲では和田は歌わず演奏に徹する。


「ここらへんで、ちょっと伝説の領域に踏み込んでもいいですか? でも、もう伝説いっちゃうの、もったいない気もしますね」と、和田。はい、私もまさにそう思っていたタイミングだったんですが、そのあとまもなく始まってしまいました。“目を閉じておいでよ”。杏子は杏子パート(あたりまえだ)、KONTAパートは和田、と思ったらサビ前のブリッジは吉田佳史が歌う。というか、トライセラもいいけど、この曲はもう、杏子。かっこよすぎ。本物。あたりまえだって、だから。ってこれ、私がバービーがんがん聴いてたリアルタイマーだから興奮してるのではない、と思います。曲が終わった時にフロアを包んだ大拍手と、「ああ、終わってもうたあ……」という喪失感、すごいものがあったので。
それをふっとばす勢いで、間髪入れず始まったラスト・チューンは、トライセラの“Silly Scandals”。杏子&和田のツイン・ヴォーカルだとこの曲、こんなかっこいいことになるのか! という、最高のプレイ。サビ終わりの「YEAH! YEAH! YEAH!」のコールをステージとフロアで何度もリピートの末、終了。大歓声の中手をつないで一礼、4人はステージを去りました。最高でした、頭から最後まで。(兵庫慎司)


◆TRICERATOPS
ゲスト・アーティスト:杏子

1. あのね Baby
2. Neo Neo Mods
3. ロケットに乗って
4. GOTHIC RING
5. Believe The Light

with 杏子
6. イジメテミタイ
7. I’m losing you
8. LULLABY OF BIRDLAND
9. 目を閉じておいでよ
10. Silly Scandals