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ふわっとしたSEに導かれてステージに姿を現すと、《無数の雨が 二人を包む》――と、仲手川の繊細な歌声が響き渡る。灼熱のひたちなかの天候とは正反対の一曲“ame 〜rain song〜”で登場した4人組、SPANK PAGEだ。でも、この日のステージでは、そのひんやりとした違和感が彼らの何よりの魅力となっていた。エレクトロニカにも通じる電子音の響きに、幽玄なギター・フレーズ、徐々に感情の水位を増していくようなメロディ。まるで祈るかのように歌われる仲手川の歌声。彼らの描くロマンティックで幻想的な世界観が、WING TENTを包んでいく。ハイライトになったのは、「自分の胸にある誇りや強み、ここまで生きてきた信念を思い描いて、聴いてもらえればいいと思います」と、訥々と語って披露した“らしさのありか”。そして激情を轟音に乗せて解き放った“不器用な情景”。最後の“呼吸”では、仲手川と山下の二人がギターからキーボードへ楽器を替え、美しいハイトーンのハーモニーと壮大なサウンドスケープを描き、大きな拍手を受けながら去っていった。8月19日にはいよいよデビュー・アルバムをリリースする彼ら。見逃すべきでない才能だと思う。(柴那典)